魔法熟女三姉妹の物語

北条丈太郎

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大ベテランの魔女現る

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「……悪くないよ。これくらい薄味のほうが体にいいってもんだ。上出来だよ」
マンデーが作った料理を口にしたメリーが言うとマンデーはぴくりと眉を動かした。
「……でもねえ、美味い料理には美味い酒がないとねえ、ちょっと物足りないね」
メリーがマンデーを見つめながら言うとマンデーはうつむいてしまった。
「……姉さん、それよりもさっきの魔法少女と魔女の話のほうが大事よ。マンデーにもっと詳しい話を聞きましょう。これからの私たちにとっても重要な話になるわ」
マリーはそう言ったがメリーは耳を貸さず、キッチンの隅々を見て酒を探していた。
「アタイもよくわかんねえから賢いマリーに任せるよ。そんでなあ、飯はいいけどこんな部屋にこもりっきりじゃあ体がなまっちまう。アタイは部屋から出て運動してくるよ」
シーナが部屋を飛び出したとき、マンデーが言った。
「……おばばのところに行く。おばばのほうが話上手だから来て」
マンデーはメリーを見て、ゆっくりと部屋を出て行った。
「……なんだい? ついて来いってことかい? ヒマだから行ってみようかマリー」
メリーたちはマンデーの小さな背中を追って地下街のうす暗い路地を歩いた。路地の左右には怪しげな店が立ち並び、暗い目をした店番たちがメリーたちをちらりと見ていた。やがてマンデーは占い用の品々を並べた小さな店の前で立ち止まり、メリーたちを呼んだ。
「……この店の奥におばばがいる。おばばは物知りだから何でも聞いて」
メリーたちは狭い店内に入り、店の奥で水晶玉を見つめる老婆を見た。
「ふうん、こりゃ大ベテランの魔女だね。マリーもわかるだろ?」
メリーがマリーに言うと、老婆は目を見開いてマリーとマリーを見た。
「ほうほう、魔女の娘たちがそろって私に何の用だい? お客さんじゃなさそうだね」
つぶやいた老婆はぎょろりと水晶玉を見つめ、マンデーに言った。
「おばば、この人たちがいろいろ聞きたいそうよ」
マンデーが言うとメリーは興味がなさそうな顔をしてマリーの肘をつついた。
「おばば、私たちは魔法少女についてよく知らないの。詳しく教えてもらえれば嬉しい」
「ほうほう、今どきの魔女は無知だね。教えてやるからこっちに来な」
言われたとおりにマリーが近寄ると、老婆は口を開いてマリーの首筋にかみついた。
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