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寝技

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皆が寝静まった夜、十郎の感覚は冴えていた。
(天井裏に何かいるな。ネズミか、さもなくば忍びか。忍びだな)
「十郎。いいざまだね。男ぶりが上がったよ坊や。見た目は一人前だね」
「キノか。久しぶりだな。お前の言うとおり、このざまだよ」
「声でアタシとわかるなんて可愛いねえ。アタシも惚れそうだよ坊や」
ふわりと十郎の枕元に飛び降りたキノは十郎の顔を胸元に引き寄せた。
「痛いの痛いの飛んでけってね。坊やが赤ん坊のころはよくやったさ」
キノが十郎の傷口をこすったが、十郎は特に反応しなかった。
「これで半分盲ってちゃ姫様を守るも何もないじゃないか。どうすんの?」
「これから考えるさ。キノこそ俺を殺すんじゃないのか? 簡単だぞ」
キノは十郎の布団に潜り込み、全身をくすぐり始めた。
「生意気言うじゃないの、この坊やは。いつでも殺せるから殺さないよ」
そのままキノは十郎に寝技を仕掛けたが、逆に絞め技を食らって仰天した。
「……ああ、坊やに技を極められるなんてアタシも落ちたもんだ」
「体が勝手に動いた。お前に教わったとおりにな。殺しはしないよ」
汗だくになったキノはするりと抜け出して姿を消した。
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