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お目覚め

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「おい、婆さんや。もうちっとゆっくり歩いてくれんか?」
ある森の公園を散歩していた爺さんが妻の婆さんに頼みました。
「おやまあ爺さん。心臓は大丈夫ですか? 今日は散歩を中止しますか?」
そういう言い方をすれば爺さんが張り切って歩くと知っている婆さんはにんまり笑いながら振り返って爺さんに言いました。
「何を言う婆さん、ここ昭和の森公園はワシの庭も同然なんじゃ。歩くわい」
そう言いながらよたよた歩く爺さんを尻目に、婆さんは森へ向かいました。
「……おや? 鳥たちが騒がしいねえ? 森の中で何かあったかねえ?」
鳥たちがしきりに鳴いている森の中央へ婆さんが行くと、何かが動きました。
「あらあ? 誰かが花畑を荒らしたのかね?」
花畑の中で動く何かを婆さんが見ていると、爺さんが追いつきました。
「フガフガ、婆さんは足が速いんじゃ、おう? 何かいるのかね?」
爺さんがよく見ると、花の中に妙な箱が埋もれていました。
「ば、婆さん。こ、これは棺おけか? そ、そんな馬鹿な」
爺さんと婆さんが花畑の中に見つけたのは花柄の古い棺おけでした。
「ば、婆さん。こ、この棺おけのふたが動いたぞ? なんまんだぶ……」
爺さんが念仏を唱えると、棺おけのふたが大きく動きました。
「ルビイキック!」
棺おけのふたが高く跳ね上がり、中から小さな少女が飛び出しました。
「……ここはどこじゃ? 見慣れん場所じゃのう」
爺さんと婆さんは腰を抜かし、きらびやかな服の少女を見つめました。
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