時の間のスクワール

北条丈太郎

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拓郎の声に反応した真美はぱちりと眼を開いた。
「こらスクワール。じっとしていろ。今から薬を打ってやる」
真美の腕をひねり上げた教官の手には注射器があった。
「何をする気だ! 姉さんを放せ! 許さんぞ貴様ら!」
「はいはい。威勢ばかりの拓郎君にはそろそろ死んでもらおう」
冷たく言い放った茂の手には拳銃があり、銃口が拓郎を狙っていた。
(……これで俺も終わりか。短い人生だったな)
轟音とともに弾丸が発射された瞬間。拓郎は強い頭痛を覚えた。
(見える。弾丸が見える。止まって見えるぞ。軽く避けられるな)
(なんだ? 茂も教官もぴくりとも動かねえぞ。俺だけが動いてる?)
(まるで止まった時の中を自由に動ける感覚だ。これが「加速」……)
(悪いな教官。金的ががら空きなんで存分に蹴らせてもらう!)
(茂。お前とは友達になれなかったな。目を潰しておくぜ)
1時間後。駆けつけた救急車に真美と真帆を託し、拓郎も同乗した。
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