時の間のスクワール

鳳茂

指定された喫茶店に拓郎が到着したのは夜だった。
窓から店内を覗くと、生徒会の男がスーツを着て座っている。
「遅いじゃないか上月君。時間厳守は仕事の基本だよ」
「すみません。姉が寝込んでいたもので」
「まあいい。これからここに年配の女性が二人来る。お茶をしよう」
「お茶？　それが仕事なんですか？」
「そうだ。前金を渡そう。これくらいでいいかな？」
（……こんなに？　怪しいなこいつ）
「怪しいだろう？　君の思うとおり、これはいかがわしい仕事だよ」
「お茶は形だけだ。そこから僕らはそれぞれご婦人方の相手をする」
「相手か。想像はつきますよ。生徒会長がそんなことしていいのかな？」
「立場なんて飾りさ。多くの手下を抱えて金を稼ぐための方便だ」
「ついでに言うと僕の鳳という名字も偽名だよ。会長っぽいだろ？」
「本当の名前は茂だよ。名字なんかない。拓郎君、覚えてるかい？」
（茂だと？　まさかこいつ……）
「そうだよ。君の姉さん、スクワールに殺されかけた茂だよ」
「何だと？　貴様、いったい何を言っている！」
「とぼけなくていいよ。僕らは「施設」で仲良しだっただろ？」