10 / 10
本来の自分
しおりを挟む
「パパに頼んでもみ消してもらったわ。でも今後どうすんねん?」
岩田は浮かない表情で哲治に報告した。
「悪いな、結局お前を巻き込んでしまった」
「ウチはええねん。如月はこれから大変やで? 今度は一中か?」
「しばらく四中に逆らう中学はいないだろう。じっくり考えよう」
「そや、警察に補導されたアホが如月のことチクったらしいわ」
「剣道部の顧問も大騒ぎしとった。どうなるかわからんよ」
「そうか。お前にこれ以上迷惑をかけるのは不本意だ」
ある日の夜。
「哲ちゃん、大阪を去るのね? これから面白くなるのにねえ」
官助と名乗る老人が夢の中で残念そうに笑った。
「面白くない。俺は本来平和を愛する男だ。大阪は向いてない」
さらに後日。
「なんも言わんと転校なんてかっこつけんなや如月!」
自宅に駆けつけた岩田が息を弾ませて叫んだ。
「ほら和歌ちんも如月に挨拶しとき、言いたいことあるんやろ?」
「如月君、哲治君。ウチ、アンタのこと好きやったわ、ほなな」
宮島は目に大粒の涙をたたえながら、大声で叫んだ。
関東へ向けて走り出す車中から哲治は宮島の背中を見た。
涙をぬぐっているのか、彼女のポニーテールが揺れていた。
(完)
岩田は浮かない表情で哲治に報告した。
「悪いな、結局お前を巻き込んでしまった」
「ウチはええねん。如月はこれから大変やで? 今度は一中か?」
「しばらく四中に逆らう中学はいないだろう。じっくり考えよう」
「そや、警察に補導されたアホが如月のことチクったらしいわ」
「剣道部の顧問も大騒ぎしとった。どうなるかわからんよ」
「そうか。お前にこれ以上迷惑をかけるのは不本意だ」
ある日の夜。
「哲ちゃん、大阪を去るのね? これから面白くなるのにねえ」
官助と名乗る老人が夢の中で残念そうに笑った。
「面白くない。俺は本来平和を愛する男だ。大阪は向いてない」
さらに後日。
「なんも言わんと転校なんてかっこつけんなや如月!」
自宅に駆けつけた岩田が息を弾ませて叫んだ。
「ほら和歌ちんも如月に挨拶しとき、言いたいことあるんやろ?」
「如月君、哲治君。ウチ、アンタのこと好きやったわ、ほなな」
宮島は目に大粒の涙をたたえながら、大声で叫んだ。
関東へ向けて走り出す車中から哲治は宮島の背中を見た。
涙をぬぐっているのか、彼女のポニーテールが揺れていた。
(完)
0
お気に入りに追加
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
My Angel -マイ・エンジェル-
甲斐てつろう
青春
逃げて、向き合って、そして始まる。
いくら頑張っても認めてもらえず全てを投げ出して現実逃避の旅に出る事を選んだ丈二。
道中で同じく現実に嫌気がさした麗奈と共に行く事になるが彼女は親に無断で家出をした未成年だった。
世間では誘拐事件と言われてしまい現実逃避の旅は過酷となって行く。
旅の果てに彼らの導く答えとは。
感謝の気持ちをいつかまた
おむらいす
青春
特にこれといった才能もない高校ニ年の牧岡杏奈。問題児だらけの学年で、教師が何度も変わってきた。だが、ある時入ってきた大城光は今までと違った。小説が好きという点で仲が良くなった二人。小説を通して深まる仲とは。
就職面接の感ドコロ!?
フルーツパフェ
大衆娯楽
今や十年前とは真逆の、売り手市場の就職活動。
学生達は賃金と休暇を貪欲に追い求め、いつ送られてくるかわからない採用辞退メールに怯えながら、それでも優秀な人材を発掘しようとしていた。
その業務ストレスのせいだろうか。
ある面接官は、女子学生達のリクルートスーツに興奮する性癖を備え、仕事のストレスから面接の現場を愉しむことに決めたのだった。
早春の向日葵
千年砂漠
青春
中学三年生の高野美咲は父の不倫とそれを苦に自殺を計った母に悩み精神的に荒れて、通っていた中学校で友人との喧嘩による騒ぎを起こし、受験まで後三カ月に迫った一月に隣町に住む伯母の家に引き取られ転校した。
その中学で美咲は篠原太陽という、同じクラスの少し不思議な男子と出会う。彼は誰かがいる所では美咲に話しかけて来なかったが何かと助けてくれ、美咲は好意以上の思いを抱いた。が、彼には好きな子がいると彼自身の口から聞き、思いを告げられないでいた。
自分ではどうしようもない家庭の不和に傷ついた多感な少女に起こるファンタジー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる