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番外編
過ぎ去りた日のこと~4
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~ジョルジュ視点です~
あのエレーヌがジュリアを捕まえて、何かを話し込んでいる様子を見た時、ジョルジュは、一瞬、心臓が止るかと思った。
エレーヌとの関係が続いていた頃、ジョルジュは、それが愛なのだと信じていたが、それが気の迷いだったと気がついたのはいつ頃だったか。確か、成人して、もう十分大人と呼べる年齢になった頃だったことは覚えている。
そして、ジュリアと出会ってから、ジョルジュは、ようやく愛とは何なのかと、知ることが出来たような気がしていた。
ジュリアにあって、エレーヌにないもの。
─ それは誠実さだ。
誠実な愛情に裏打ちされた関係以上に価値のあるものを、ジョルジュは知らない。闇のガルバーニ家という暗闇を背負った家系であれば、なおらさだ。
策謀、裏切り、暗殺・・・惨憺たる現実と、ガルバーニ家の者は真っ正面から向き合わなくてはならない。そして、自らの手を汚すことだってあるのだ。
ジョルジュにとって、たった一つだけ信じられるもの。
─ それはジュリアだった。
「ねえ、ジョルジュ」
ジュリアの肩を抱き、別の訪問客のほうへと足を運んでいる途中で、ジュリアが自分の名前を呼ぶ。
「何?ジュリア」
ジョルジュが穏やかな視線をジュリアに向ける。それとなく、彼女の顔色をみても、特段、彼女の顔に、苛立ちの色は浮かんでいない。
あのエレーヌが彼女に毒を吹き込まない訳がない。ジュリアがエレーヌのことを知っている訳がないから、あれは、明らかにエレーヌがジュリアに何かを仕掛けてきたのだろうと、ジョルジュは思った。
─ エレーヌ、ジュリアに一体、何を話した?
まさか、エレーヌが来ているとは知らなかった。彼女を招待していないはずだ。うっかり、油断していたが、エレーヌがジュリアを捕まえて、カーテンの影で話し込んでいる様子を見たときは、かなり驚いた。
おおかた、どこかの男をたらし込んで、招待客の中に紛れたのだろう。
「・・・それで、決闘した後、怪我はなかったの?」
そんなジュリアの声は、まるでジョルジュをいたわるようだった。
─ 決闘
ジョルジュが決闘したことは、今まで一度しかない。エレーヌの夫が、自分と彼女との関係に苛立ち、夜会で自分にしつこくネチネチと絡んできたのだ。自分にしては珍しいことに、ドメーヌ伯爵からの決闘を受けて立ってしまった。
あの頃の自分はまだ若かった。
苦々しい思いと同時に、ジュリアの顔には、心配する様子がありありと浮かんでいるのが見える。
ふ、とジョルジュは苦笑いを浮かべた。
「ああ、軽い怪我はしたけど、特段、大したことはなかったよ」
「そうなの?」
心配そうなジュリアの顔には、怒りや苛立ちといった表情は浮かんでいない。
ジョルジュは、それにほっとしながら、二人は、まるで何でもないことのように会話を続けた。
「ねぇ、ジョルジュ、こっちに来て」
ジュリアは、そう言って、ジョルジュを連れてそっとバルコニーに出た。まるで外の空気を吸いに行くような、気軽な仕草だった。
二人きりになりたいのだろう。彼女に、エレーヌとの関係を説明しなければならないだろうか。出来れば、ジョルジュは、そんなつまらない話はしたくない。
エレーヌとジュリアでは、比較にならないほど、ジョルジュはジュリアを愛している。そして、エレーヌとは、あくまでも若気の至りでしかない。愛などというものからは、ほど遠かった彼女との関係。
そんなものに、今のジョルジュは一切の未練すらない。
ジョルジュはジュリアとバルコニーに出ると、ジュリアが早速口を開いた。
「・・・見せて」
「何を?」
「決闘で受けた傷よ」
ジョルジュは、上着を脱ぐと、シャツをまくり、右腕を見せた。確かに剣で切りつけられた傷が残っている。
ジュリアは震える手で、慎重にその傷跡にそっと指を這わせた。
「痛みはまだ残ってる?」
「いや、全然」
エレーヌのことより、怪我のほうが心配だったらしい。それが嬉しくて、ジョルジュの口元には甘い微笑みが浮かぶ。大人しくじっとして、結婚したての自分の妻のしたいようにさせた。
ジュリアは、傷口にそっと指を這わせ、注意深く検分している。指先にそっと触れて、一つ一つ確認しているようだ。
「指の痺れは?」
「全くない」
ジュリアの綺麗な海のような瞳がジョルジュをいたわるように見上げる。その表情に、ジョルジュは大きく胸がときめくのを感じた。
「疼痛とかの痛みは残ってる? 冷たい冬とかに痛む?」
「全然ないよ」
「・・・よかった」
ほっとした様子がありありと分かる。ジョルジュは、袖を元に戻し、上着を着なおした。
バルコニーの外で、誰からも見えない位置にいることにつけ込んで、ジョルジュは、ジュリアの腰を引き寄せた。
「心配してくれたの?」
嬉しそうに笑うジョルジュの視線と口調は蕩けるように甘い。
「後遺症で切り傷が痛む騎士は沢山いるから」
「私の妻は優しいのだね」
胸の中で自分の妻を抱きしめる。ジュリアは、彼の厚い胸にそっと頬をよせる。
「・・・どうして決闘になったのか、理由は聞かないの?」
ジュリアはふと笑う。
「男同士が決闘する原因といったら一つしかないでしょう?」
「気にしないの?」
「・・・騎士団の中でも、そういう話は別に珍しいことじゃなくて」
騎士団の中でももめ事というのはよくあることだ。一人の女を巡って、年頃の男たちが決闘することもよくあることだ。そんな事情など、騎士団の中でジュリアは嫌と言うほど見てきているのだ。
「若い騎士ほど、そういうもめ事を起こしがちで。若気の至りってやつかな」
自分の胸の中で甘えるように頬をこすりつけるジュリアを、ジョルジュは愛おしそうに抱きしめた。彼女の甘い匂いや、柔らかな体を好きなだけ堪能する。
こういう時、結婚して、本当によかったと、ジョルジュは思う。自分よりずっと年下の妻が可愛くて仕方がないのだ。
そもそも、その可愛い妻は、戦になれていて、どんな時も冷静沈着だ。
どこかの貴族令嬢たちのように、美しく微笑んでいるだけの存在ではない。
そういう意味では、ジュリアは達観している。ガルバーニ家は陰謀や闇の仕事で暗躍することが多いから、領主夫人はある意味、肝が据わっていなければならないのだ。
そういう意味でも、ジュリアは自分の妻としては、とてもふさわしい。
それでね、と、ジュリアはジョルジュの顔を見つめていった。
「決闘に、ミッドソードを使うなんて狂気の沙汰だわ」
「そう? でも勝ったよ?」
少し誇らしげに笑うジョルジュに、ジュリアはため息交じりに言う。
「相手がぼんくらだったから、たまたま無事だっただけ。もう二度としないで」
そう、ドメーヌ伯爵はジョルジュやエレーヌより、二回りも年上だった。ジュリアは、確実に戦った相手を推測しているのだろう。
「そうなの?」
「相手が騎士だったら、もっと酷い怪我を負ってるはずよ。まったく、もう、ミッドソードで決闘だなんて・・・」
呆れ顔のジュリアに、ジョルジュはにっこりと笑いかけた。
「私の奥方のためなら、何度でも決闘するよ。でも、彼女とのことは聞かないんだね?」
ジュリアは、幸せそうな微笑みを浮かべた。
「私のために、ザビラまで落としてくれたんでしょう?」
「ああ、そうだったね」
ジョルジュの声はあくまでも優しく、甘い。
「あの要塞は難攻不落で有名だったのよ。あれを落とす苦労は並大抵のことではないわ」
ザビラを落としてまで愛してくれた人を疑うなんて、とジュリアが笑う。ジュリアがジョルジュの愛を心の底から信じてくれている様子が嬉しくなって、ジョルジュは、さらにジュリアを抱きしめて、細い首筋に顔を埋めた。
「・・・それに」
ジュリアが、くすぐったくてクスクス笑いながら、口を開いた。
「それに?」
その先も聞きたいが、ジュリアのほっそりした首元の感触をもっと堪能したくて、ジョルジュの声はくぐもった。この若い妻が愛おしくてしょうがない。このまま、こっそり二人で姿を消してしまおうか。
「わざわざ、結婚式の夜会で、昔の話を持ち出してくる相手の意図は明らかでしょう?」
ジュリアは一瞬、間をおいて、再び、口を開いた。
「相手を不愉快にさせて、その後、何をしようと思ったのか」
ジュリアは見透かしたように笑う。
なるほど、とジョルジュは思う。ジュリアは、エレーヌの意図など、すでにお見通しか。
相手の挑発にまんまと乗せられるほど、ジュリアは愚かではないのだ。
顔を上げて、しっかりとジュリアの顔を見つめるジョルジュに、ジュリアは言う。
「私が今までどれほどの戦を経験してると思うの?敵の意図を見抜けない訳ないでしょう」
それは、夜会や舞踏会でも同じ事なのだとジュリアは言う。人が誰かにものを言う時、戦と同じように、必ず何らかの意図があると言う。
ジュリアは聡明だ。そして、人を見る目もある。
「全く、君って人は・・・まいったな・・・」
降参だ。ジュリアは常々聡明だと思ってはいたが、貴族の駆け引きなどは疎いのではと思っていた自分が間違っていた。
彼女はずっと聡明で、そして、ずっと強い人だ。
「わっ、ジョルジュ」
ジョルジュは嬉しくなって、彼女をすっと抱き上げ、顔のあちこちに口付けを落とした。彼女がちょっと驚いて、小さな声をあげるが、そんなことにお構いなく、ジョルジュは自分がしたいようにした。
今の自分はジュリアを愛して、愛し尽くしたいのだ。
「・・・このまま二人で消えてしまおうか? 寝室で、思いっきり君を堪能したいな」
そんな時のジョルジュは、とても官能的で、素敵だ。
ジュリアは、彼に見とれながらも、真っ赤な顔で俯いた。
「赤くなった君も素敵だ。もう食べてしまいたいな」
二人は、ふふと笑いながら、人気のないバルコニーで、恋人同士のような戯れを楽しんでいた。
◇
その頃、帰りの馬車の中では、エレーヌ・ドメーヌ伯爵夫人と侍女が会話をしていた。
「公爵様とは随分久しぶりでございましたね」
「ええ。彼は・・・随分、大人になられたわ」
「それに、以前より、いっそう落ち着かれて、素敵になられましたね?」
「ええ、クライブが暗殺された時には、公爵家がどうなるかと思ったけど」
憂い顔のエレーヌに、年老いた侍女はほっとしたような顔で言う。
「公爵様の奥様に、あのお話をなされたのですか?」
新妻に夫の昔話をするなんて。あからさまなエレーヌに侍女は呆れた顔を向けた。
「ええ。・・・したわ」
その声には、ほんの少し苛つきがこもっていた。一番、重要な部分、ジョルジュと自分がかつてはそういう関係だったと、仄めかすことは出来た。ジョルジュの妻は、それを知っていたはずなのに、全く、苛ついた様子も、悔しそうな顔も見せなかった。
・・・虚勢を張っているのだろうか、とエレーヌは少し思ったが、そういう様子もなかった。
「よく、ガルバーニ公爵様がお怒りになりませんでしたね?」
その瞬間、エレーヌは、ぴくりと反応した。
「それは違うわね」
ジョルジュがジュリアの腰を抱いて、自分から離れた時、一瞬だが、彼は自分に冷たい視線を向けたことを、エレーヌはよく承知していた。
─ まるで他人であるかのような冷たく蔑んだ視線。
ジョルジュにとっては、もう自分など過去のものであった以外の何者でもないと言いたげな顔。
彼は感情を顔に出さない人だから、よくわからないだろうが、それでも、エレーヌは他の人よりもずっと彼の顔を読むことには長けている。
社交界で培ったエレーヌの感性とでも言うべきものだろうか。
エレーヌは、二人の関係は、もうずっと前に終焉を告げていたことを知った。
「彼は、あの方は、本気でお怒りになっていたわ・・・」
端から見れば、彼の顔色は全く変化がないと見えるだろうが、自分が彼の妻と一緒に座っている所を見た時、彼がかなり不愉快に思っていることは明らかだった。
完敗だ。戦う前から、負けてしまった。
もし、ジョルジュが自分のことを少しでも好いているような素振りがあれば、昔の関係を復活させられたかもしれなかった。
それが、単純に自分に都合のよい幻想であったことをエレーヌは痛感した。
ジョルジュがずっと自分のことを好いていると、心のどこかで思っていた自分は滑稽だった。
そして、立ち去る時に、彼がジュリアに向けた表情。
どこまでも熱くて、どこまでも甘い。蕩けるような熱のこもった視線を、エレーヌは一度だって向けられたことはなかった。
そう、たった一度だって、あんな風に、ジョルジュに見つめられたことはなかったのだ。
そして、あんな話を聞かされた後だったと言うのに、ジョルジュを見つめるジュリアの瞳の中には微塵の疑いも、非難の色も浮かんでいない。
夫を信じ切った無邪気な微笑み。それは、花が開くように美しく、強かった。
まるで、エレーヌの存在など、全く、気にしていない素振りだった。
ジョルジュの妻である美しく、凜とした女性は、エレーヌなど、ついぞ鼻にも引っかけなかったのだ。
そもそも、お前とは戦う価値などないのだ。と言われた気がして、エレーヌは自分の自惚れをぽっきりと折られたような気がした。
エレーヌとジョルジュの昔話より、彼が怪我をしていなかったかどうか、だけを心配する顔。
─ あの二人は本当に愛し合っているのだ。
エレーヌの胸には、苦い思いが浮かぶ。
完敗だ。
「・・・・もう公爵家との関わりはないわね」
「さようでございますか? 奥様のようにお美しい人を袖に出来る男などおられませんわ」
年老いた侍女には、今でも自分は美しく見えるのだろう。
「ええ、あの方の顔を、お前は見てないからわからないのよ」
敗北感を強く胸に刻みながら、エレーヌは窓の外をちらりと見た。ガルバーニ公爵邸の屋敷から、刻一刻と離れていく。
(さようなら。ジョルジュ。奥様とお幸せに)
エレーヌは、軽くため息をつき、カーテンを引いた。公爵邸の姿はエレーヌの目から消えた。
きっと、もう二度と、ジョルジュと関わりあいになることはないだろうと思いながら。二人の間は、とっくの昔に終わったことなのだ、と、エレーヌは、苦い思いを噛みしめていた。
◇
皆様にお知らせ
「偽りの花嫁は貴公子の腕の中に落ちる」の続編の構想中です。いつから開始はまだ未定ですが、構想が固まり次第、連載、再開します。
その間は、「野良竜を拾ったら思いがけない展開になりました(涙」 をお楽しみください。連載などについては、ツィッター、もしくは、著者プロフィールをお気に入り、登録しますと、著者の活動など、リアルタイムで受け取ることが出来ます。
皆様、本年もどうぞよろしく申し上げます。
あのエレーヌがジュリアを捕まえて、何かを話し込んでいる様子を見た時、ジョルジュは、一瞬、心臓が止るかと思った。
エレーヌとの関係が続いていた頃、ジョルジュは、それが愛なのだと信じていたが、それが気の迷いだったと気がついたのはいつ頃だったか。確か、成人して、もう十分大人と呼べる年齢になった頃だったことは覚えている。
そして、ジュリアと出会ってから、ジョルジュは、ようやく愛とは何なのかと、知ることが出来たような気がしていた。
ジュリアにあって、エレーヌにないもの。
─ それは誠実さだ。
誠実な愛情に裏打ちされた関係以上に価値のあるものを、ジョルジュは知らない。闇のガルバーニ家という暗闇を背負った家系であれば、なおらさだ。
策謀、裏切り、暗殺・・・惨憺たる現実と、ガルバーニ家の者は真っ正面から向き合わなくてはならない。そして、自らの手を汚すことだってあるのだ。
ジョルジュにとって、たった一つだけ信じられるもの。
─ それはジュリアだった。
「ねえ、ジョルジュ」
ジュリアの肩を抱き、別の訪問客のほうへと足を運んでいる途中で、ジュリアが自分の名前を呼ぶ。
「何?ジュリア」
ジョルジュが穏やかな視線をジュリアに向ける。それとなく、彼女の顔色をみても、特段、彼女の顔に、苛立ちの色は浮かんでいない。
あのエレーヌが彼女に毒を吹き込まない訳がない。ジュリアがエレーヌのことを知っている訳がないから、あれは、明らかにエレーヌがジュリアに何かを仕掛けてきたのだろうと、ジョルジュは思った。
─ エレーヌ、ジュリアに一体、何を話した?
まさか、エレーヌが来ているとは知らなかった。彼女を招待していないはずだ。うっかり、油断していたが、エレーヌがジュリアを捕まえて、カーテンの影で話し込んでいる様子を見たときは、かなり驚いた。
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「・・・それで、決闘した後、怪我はなかったの?」
そんなジュリアの声は、まるでジョルジュをいたわるようだった。
─ 決闘
ジョルジュが決闘したことは、今まで一度しかない。エレーヌの夫が、自分と彼女との関係に苛立ち、夜会で自分にしつこくネチネチと絡んできたのだ。自分にしては珍しいことに、ドメーヌ伯爵からの決闘を受けて立ってしまった。
あの頃の自分はまだ若かった。
苦々しい思いと同時に、ジュリアの顔には、心配する様子がありありと浮かんでいるのが見える。
ふ、とジョルジュは苦笑いを浮かべた。
「ああ、軽い怪我はしたけど、特段、大したことはなかったよ」
「そうなの?」
心配そうなジュリアの顔には、怒りや苛立ちといった表情は浮かんでいない。
ジョルジュは、それにほっとしながら、二人は、まるで何でもないことのように会話を続けた。
「ねぇ、ジョルジュ、こっちに来て」
ジュリアは、そう言って、ジョルジュを連れてそっとバルコニーに出た。まるで外の空気を吸いに行くような、気軽な仕草だった。
二人きりになりたいのだろう。彼女に、エレーヌとの関係を説明しなければならないだろうか。出来れば、ジョルジュは、そんなつまらない話はしたくない。
エレーヌとジュリアでは、比較にならないほど、ジョルジュはジュリアを愛している。そして、エレーヌとは、あくまでも若気の至りでしかない。愛などというものからは、ほど遠かった彼女との関係。
そんなものに、今のジョルジュは一切の未練すらない。
ジョルジュはジュリアとバルコニーに出ると、ジュリアが早速口を開いた。
「・・・見せて」
「何を?」
「決闘で受けた傷よ」
ジョルジュは、上着を脱ぐと、シャツをまくり、右腕を見せた。確かに剣で切りつけられた傷が残っている。
ジュリアは震える手で、慎重にその傷跡にそっと指を這わせた。
「痛みはまだ残ってる?」
「いや、全然」
エレーヌのことより、怪我のほうが心配だったらしい。それが嬉しくて、ジョルジュの口元には甘い微笑みが浮かぶ。大人しくじっとして、結婚したての自分の妻のしたいようにさせた。
ジュリアは、傷口にそっと指を這わせ、注意深く検分している。指先にそっと触れて、一つ一つ確認しているようだ。
「指の痺れは?」
「全くない」
ジュリアの綺麗な海のような瞳がジョルジュをいたわるように見上げる。その表情に、ジョルジュは大きく胸がときめくのを感じた。
「疼痛とかの痛みは残ってる? 冷たい冬とかに痛む?」
「全然ないよ」
「・・・よかった」
ほっとした様子がありありと分かる。ジョルジュは、袖を元に戻し、上着を着なおした。
バルコニーの外で、誰からも見えない位置にいることにつけ込んで、ジョルジュは、ジュリアの腰を引き寄せた。
「心配してくれたの?」
嬉しそうに笑うジョルジュの視線と口調は蕩けるように甘い。
「後遺症で切り傷が痛む騎士は沢山いるから」
「私の妻は優しいのだね」
胸の中で自分の妻を抱きしめる。ジュリアは、彼の厚い胸にそっと頬をよせる。
「・・・どうして決闘になったのか、理由は聞かないの?」
ジュリアはふと笑う。
「男同士が決闘する原因といったら一つしかないでしょう?」
「気にしないの?」
「・・・騎士団の中でも、そういう話は別に珍しいことじゃなくて」
騎士団の中でももめ事というのはよくあることだ。一人の女を巡って、年頃の男たちが決闘することもよくあることだ。そんな事情など、騎士団の中でジュリアは嫌と言うほど見てきているのだ。
「若い騎士ほど、そういうもめ事を起こしがちで。若気の至りってやつかな」
自分の胸の中で甘えるように頬をこすりつけるジュリアを、ジョルジュは愛おしそうに抱きしめた。彼女の甘い匂いや、柔らかな体を好きなだけ堪能する。
こういう時、結婚して、本当によかったと、ジョルジュは思う。自分よりずっと年下の妻が可愛くて仕方がないのだ。
そもそも、その可愛い妻は、戦になれていて、どんな時も冷静沈着だ。
どこかの貴族令嬢たちのように、美しく微笑んでいるだけの存在ではない。
そういう意味では、ジュリアは達観している。ガルバーニ家は陰謀や闇の仕事で暗躍することが多いから、領主夫人はある意味、肝が据わっていなければならないのだ。
そういう意味でも、ジュリアは自分の妻としては、とてもふさわしい。
それでね、と、ジュリアはジョルジュの顔を見つめていった。
「決闘に、ミッドソードを使うなんて狂気の沙汰だわ」
「そう? でも勝ったよ?」
少し誇らしげに笑うジョルジュに、ジュリアはため息交じりに言う。
「相手がぼんくらだったから、たまたま無事だっただけ。もう二度としないで」
そう、ドメーヌ伯爵はジョルジュやエレーヌより、二回りも年上だった。ジュリアは、確実に戦った相手を推測しているのだろう。
「そうなの?」
「相手が騎士だったら、もっと酷い怪我を負ってるはずよ。まったく、もう、ミッドソードで決闘だなんて・・・」
呆れ顔のジュリアに、ジョルジュはにっこりと笑いかけた。
「私の奥方のためなら、何度でも決闘するよ。でも、彼女とのことは聞かないんだね?」
ジュリアは、幸せそうな微笑みを浮かべた。
「私のために、ザビラまで落としてくれたんでしょう?」
「ああ、そうだったね」
ジョルジュの声はあくまでも優しく、甘い。
「あの要塞は難攻不落で有名だったのよ。あれを落とす苦労は並大抵のことではないわ」
ザビラを落としてまで愛してくれた人を疑うなんて、とジュリアが笑う。ジュリアがジョルジュの愛を心の底から信じてくれている様子が嬉しくなって、ジョルジュは、さらにジュリアを抱きしめて、細い首筋に顔を埋めた。
「・・・それに」
ジュリアが、くすぐったくてクスクス笑いながら、口を開いた。
「それに?」
その先も聞きたいが、ジュリアのほっそりした首元の感触をもっと堪能したくて、ジョルジュの声はくぐもった。この若い妻が愛おしくてしょうがない。このまま、こっそり二人で姿を消してしまおうか。
「わざわざ、結婚式の夜会で、昔の話を持ち出してくる相手の意図は明らかでしょう?」
ジュリアは一瞬、間をおいて、再び、口を開いた。
「相手を不愉快にさせて、その後、何をしようと思ったのか」
ジュリアは見透かしたように笑う。
なるほど、とジョルジュは思う。ジュリアは、エレーヌの意図など、すでにお見通しか。
相手の挑発にまんまと乗せられるほど、ジュリアは愚かではないのだ。
顔を上げて、しっかりとジュリアの顔を見つめるジョルジュに、ジュリアは言う。
「私が今までどれほどの戦を経験してると思うの?敵の意図を見抜けない訳ないでしょう」
それは、夜会や舞踏会でも同じ事なのだとジュリアは言う。人が誰かにものを言う時、戦と同じように、必ず何らかの意図があると言う。
ジュリアは聡明だ。そして、人を見る目もある。
「全く、君って人は・・・まいったな・・・」
降参だ。ジュリアは常々聡明だと思ってはいたが、貴族の駆け引きなどは疎いのではと思っていた自分が間違っていた。
彼女はずっと聡明で、そして、ずっと強い人だ。
「わっ、ジョルジュ」
ジョルジュは嬉しくなって、彼女をすっと抱き上げ、顔のあちこちに口付けを落とした。彼女がちょっと驚いて、小さな声をあげるが、そんなことにお構いなく、ジョルジュは自分がしたいようにした。
今の自分はジュリアを愛して、愛し尽くしたいのだ。
「・・・このまま二人で消えてしまおうか? 寝室で、思いっきり君を堪能したいな」
そんな時のジョルジュは、とても官能的で、素敵だ。
ジュリアは、彼に見とれながらも、真っ赤な顔で俯いた。
「赤くなった君も素敵だ。もう食べてしまいたいな」
二人は、ふふと笑いながら、人気のないバルコニーで、恋人同士のような戯れを楽しんでいた。
◇
その頃、帰りの馬車の中では、エレーヌ・ドメーヌ伯爵夫人と侍女が会話をしていた。
「公爵様とは随分久しぶりでございましたね」
「ええ。彼は・・・随分、大人になられたわ」
「それに、以前より、いっそう落ち着かれて、素敵になられましたね?」
「ええ、クライブが暗殺された時には、公爵家がどうなるかと思ったけど」
憂い顔のエレーヌに、年老いた侍女はほっとしたような顔で言う。
「公爵様の奥様に、あのお話をなされたのですか?」
新妻に夫の昔話をするなんて。あからさまなエレーヌに侍女は呆れた顔を向けた。
「ええ。・・・したわ」
その声には、ほんの少し苛つきがこもっていた。一番、重要な部分、ジョルジュと自分がかつてはそういう関係だったと、仄めかすことは出来た。ジョルジュの妻は、それを知っていたはずなのに、全く、苛ついた様子も、悔しそうな顔も見せなかった。
・・・虚勢を張っているのだろうか、とエレーヌは少し思ったが、そういう様子もなかった。
「よく、ガルバーニ公爵様がお怒りになりませんでしたね?」
その瞬間、エレーヌは、ぴくりと反応した。
「それは違うわね」
ジョルジュがジュリアの腰を抱いて、自分から離れた時、一瞬だが、彼は自分に冷たい視線を向けたことを、エレーヌはよく承知していた。
─ まるで他人であるかのような冷たく蔑んだ視線。
ジョルジュにとっては、もう自分など過去のものであった以外の何者でもないと言いたげな顔。
彼は感情を顔に出さない人だから、よくわからないだろうが、それでも、エレーヌは他の人よりもずっと彼の顔を読むことには長けている。
社交界で培ったエレーヌの感性とでも言うべきものだろうか。
エレーヌは、二人の関係は、もうずっと前に終焉を告げていたことを知った。
「彼は、あの方は、本気でお怒りになっていたわ・・・」
端から見れば、彼の顔色は全く変化がないと見えるだろうが、自分が彼の妻と一緒に座っている所を見た時、彼がかなり不愉快に思っていることは明らかだった。
完敗だ。戦う前から、負けてしまった。
もし、ジョルジュが自分のことを少しでも好いているような素振りがあれば、昔の関係を復活させられたかもしれなかった。
それが、単純に自分に都合のよい幻想であったことをエレーヌは痛感した。
ジョルジュがずっと自分のことを好いていると、心のどこかで思っていた自分は滑稽だった。
そして、立ち去る時に、彼がジュリアに向けた表情。
どこまでも熱くて、どこまでも甘い。蕩けるような熱のこもった視線を、エレーヌは一度だって向けられたことはなかった。
そう、たった一度だって、あんな風に、ジョルジュに見つめられたことはなかったのだ。
そして、あんな話を聞かされた後だったと言うのに、ジョルジュを見つめるジュリアの瞳の中には微塵の疑いも、非難の色も浮かんでいない。
夫を信じ切った無邪気な微笑み。それは、花が開くように美しく、強かった。
まるで、エレーヌの存在など、全く、気にしていない素振りだった。
ジョルジュの妻である美しく、凜とした女性は、エレーヌなど、ついぞ鼻にも引っかけなかったのだ。
そもそも、お前とは戦う価値などないのだ。と言われた気がして、エレーヌは自分の自惚れをぽっきりと折られたような気がした。
エレーヌとジョルジュの昔話より、彼が怪我をしていなかったかどうか、だけを心配する顔。
─ あの二人は本当に愛し合っているのだ。
エレーヌの胸には、苦い思いが浮かぶ。
完敗だ。
「・・・・もう公爵家との関わりはないわね」
「さようでございますか? 奥様のようにお美しい人を袖に出来る男などおられませんわ」
年老いた侍女には、今でも自分は美しく見えるのだろう。
「ええ、あの方の顔を、お前は見てないからわからないのよ」
敗北感を強く胸に刻みながら、エレーヌは窓の外をちらりと見た。ガルバーニ公爵邸の屋敷から、刻一刻と離れていく。
(さようなら。ジョルジュ。奥様とお幸せに)
エレーヌは、軽くため息をつき、カーテンを引いた。公爵邸の姿はエレーヌの目から消えた。
きっと、もう二度と、ジョルジュと関わりあいになることはないだろうと思いながら。二人の間は、とっくの昔に終わったことなのだ、と、エレーヌは、苦い思いを噛みしめていた。
◇
皆様にお知らせ
「偽りの花嫁は貴公子の腕の中に落ちる」の続編の構想中です。いつから開始はまだ未定ですが、構想が固まり次第、連載、再開します。
その間は、「野良竜を拾ったら思いがけない展開になりました(涙」 をお楽しみください。連載などについては、ツィッター、もしくは、著者プロフィールをお気に入り、登録しますと、著者の活動など、リアルタイムで受け取ることが出来ます。
皆様、本年もどうぞよろしく申し上げます。
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