聖なる獣・英雄譚

碧猫 

文字の大きさ
上 下
1 / 19
1章 聖星族の少女との出会い

1話 始まり

しおりを挟む
 ある少女に力を貸す聖獣ヴィー。

 彼はかつては一国の騎士であった。

 現在では星の都と呼ばれているが、昔のそこは王国であった。

 これはその騎士が英雄という称号を手にし、少女に力を貸す聖獣となるまでの話である。

      ******

 聖星の王国星の間。

 そこにある明かりは星の明かりだけ。
 ここは聖星の国に語り継がれる御巫の能力である未来視を王族が使うための空間。

「急に呼び出してしまい申し訳ありません」
「王族のそれはいつもの事でしょう」
「それだけ貴方様を頼りにしているという事です」

 亜麻色髪の美しい女性が彼の訪れを待っていた。この美しい女性はこの国の姫。

 姫は今日もいつものように全てを慈しむような優しい目で彼を真っ直ぐと見つめていた。

 ーー慈悲深き姫君、か。いつ見てもこの覚悟の篭った彼女の目は美しい。
 この国にはもったいない姫だ。だが、なぜ今までこの状況で何もしてこなかった。

 現在この世界は危機的状況都となっている。行方不明者多発、負傷者多発、建物等の破損多発。その原因は不明。

 この状況で各国対策をしているが、この国は今まで何もしてこなかった。

「とうとう準備が整いました。ヴィーケヴァル、貴方にこの事態の終息を命じます」
「終息?可能なのですか?」
「ええ。とうとう原因を掴みました。この少女が原因です」

 姫から渡された写真には幼い少女が写っている。見たところまだ二、三歳であろう。

「この女児がどう関係しているんですか?」
「彼女の写真はこれしかありませんが現在は十歳くらいです。エンジェルルナレージェ・ミュニャ・エクシェフィー」
「エクシェフィー⁉︎この少女があの御巫の」

 クラヴィレズ・ドーヒュ・エクシェフィー
 ゴビュランズド・グリー・エクシェフィー

 その二名は御巫として名を知らぬ者はいない。噂ではその二人の間に子がいると言われてはいるがその真意を知る者は僅かであろう。

「彼女は御巫の一人娘です」
「そんな少女がなぜ原因なのですか?」
「御巫の子でありながら御巫としての素質がない事に怨み世界を崩壊させようとしているのです」
「……そうですか」
「再度言い渡します。ヴィーケヴァル、貴方様にこの事態の終息を命じます」

 疑問が残るとしても、この事態の終息は彼も望む事。それに王族の命だ。断る事などできない。

「承知しました。必ずやこの事態を終息いたします」
「ええ、期待しております。星月の煌めきが貴方様に訪れる事を祈ります。星の輝きと共に」
「星の輝きと共に」

 姫に命じられて、少女を探しに行こうとするが場所を聞きそびれた事に気づいた。

「姫、場所は?」
「忘れておりました。場所はこの国の端にある聖星の森です。この国が祀る聖星族の聖地です」

 聖星国の由来ともなった聖星族。特別な力を持つ種族と言い伝えられている。

 ーー聖星族がそんな相手を聖地にいれるとは思えんのだが。とりあえず行けば何かわかるであろう。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

王妃そっちのけの王様は二人目の側室を娶る

家紋武範
恋愛
王妃は自分の人生を憂いていた。国王が王子の時代、彼が六歳、自分は五歳で婚約したものの、顔合わせする度に喧嘩。 しかし王妃はひそかに彼を愛していたのだ。 仲が最悪のまま二人は結婚し、結婚生活が始まるが当然国王は王妃の部屋に来ることはない。 そればかりか国王は側室を持ち、さらに二人目の側室を王宮に迎え入れたのだった。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

彼女にも愛する人がいた

まるまる⭐️
恋愛
既に冷たくなった王妃を見つけたのは、彼女に食事を運んで来た侍女だった。 「宮廷医の見立てでは、王妃様の死因は餓死。然も彼が言うには、王妃様は亡くなってから既に2、3日は経過しているだろうとの事でした」 そう宰相から報告を受けた俺は、自分の耳を疑った。 餓死だと? この王宮で?  彼女は俺の従兄妹で隣国ジルハイムの王女だ。 俺の背中を嫌な汗が流れた。 では、亡くなってから今日まで、彼女がいない事に誰も気付きもしなかったと言うのか…? そんな馬鹿な…。信じられなかった。 だがそんな俺を他所に宰相は更に告げる。 「亡くなった王妃様は陛下の子を懐妊されておりました」と…。 彼女がこの国へ嫁いで来て2年。漸く子が出来た事をこんな形で知るなんて…。 俺はその報告に愕然とした。

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

女性として見れない私は、もう不要な様です〜俺の事は忘れて幸せになって欲しい。と言われたのでそうする事にした結果〜

流雲青人
恋愛
子爵令嬢のプレセアは目の前に広がる光景に静かに涙を零した。 偶然にも居合わせてしまったのだ。 学園の裏庭で、婚約者がプレセアの友人へと告白している場面に。 そして後日、婚約者に呼び出され告げられた。 「君を女性として見ることが出来ない」 幼馴染であり、共に過ごして来た時間はとても長い。 その中でどうやら彼はプレセアを友人以上として見れなくなってしまったらしい。 「俺の事は忘れて幸せになって欲しい。君は幸せになるべき人だから」 大切な二人だからこそ、清く身を引いて、大好きな人と友人の恋を応援したい。 そう思っている筈なのに、恋心がその気持ちを邪魔してきて...。 ※ ゆるふわ設定です。 完結しました。

〖完結〗その子は私の子ではありません。どうぞ、平民の愛人とお幸せに。

藍川みいな
恋愛
愛する人と結婚した…はずだった…… 結婚式を終えて帰る途中、見知らぬ男達に襲われた。 ジュラン様を庇い、顔に傷痕が残ってしまった私を、彼は醜いと言い放った。それだけではなく、彼の子を身篭った愛人を連れて来て、彼女が産む子を私達の子として育てると言い出した。 愛していた彼の本性を知った私は、復讐する決意をする。決してあなたの思い通りになんてさせない。 *設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 *全16話で完結になります。 *番外編、追加しました。

私、悪役令嬢に戻ります!

豆狸
恋愛
ざまぁだけのお話。

私が出て行った後、旦那様から後悔の手紙がもたらされました

新野乃花(大舟)
恋愛
ルナとルーク伯爵は婚約関係にあったが、その関係は伯爵の妹であるリリアによって壊される。伯爵はルナの事よりもリリアの事ばかりを優先するためだ。そんな日々が繰り返される中で、ルナは伯爵の元から姿を消す。最初こそ何とも思っていなかった伯爵であったが、その後あるきっかけをもとに、ルナの元に後悔の手紙を送ることとなるのだった…。

処理中です...