イディーラ学園の秘密部

碧猫 

文字の大きさ
上 下
3 / 51

秘密の部活

しおりを挟む
「それが何かって事は知らない?」
「うん」
「魔法だよ。まだ自分で使う事はできないって話だけど、使い方知りたい?」
「うん」

 私が話したのは、一年くらい前から不思議な事が起こるって事。

 それを自覚したのは枯れたお花が悲しそうって見ていたら、翌日元気に咲いていた。その出来事が最初。それからも、何度か似たような事があったんだ。

「君って今は学生寮?」
「うん」
「じゃあ、僕らと同じ寮に引っ越し。荷物は持ってくるように頼んでおくから、今日一緒に帰るよ」
「えっ?」
「魔法って色んな事を引き起こせるんだけど、星音のそれってかなり特殊なんだ」

 そもそも魔法ってなんなの?
 分からない事ばかりなんだけど。

「もし寮で一人でいて悪い人が、とかならないとは言い切れないから。だめ?」
「ううん。良いんだけど、説明を」
「それは実際にやっていくうちに覚えるし、やりながらの方が良いかなって」
「うん」
「ついでに部活加入もよろしく。これに名前書いて」

 部活って内容の説明をしてもらって、それで入りたいって思う場所に入るものじゃなかったの?

 活動内容を何も知らないのに名前書くのには抵抗が

「先に活動内容を」
「君は特殊なケースだけど、君みたいに偶然ここへ辿り着いた人の悩みを聞くこととか。あとは理事長からの頼みを聞く事だね。基本暇だから遊んでるけど」

 あの噂、もしかしたら偶然来た人たちが言っていた事から始まったのかも。でも、どうしてあんな怖そうな内容になったんだろう。

 ん?理事長?

 お父様が直接関わっていたの⁉︎

「ついでに下校時間に帰らなくても怒られない」
「下校時間?あっ⁉︎」

 忘れてたけど、とっくに下校時間過ぎてる。

「名前書いたよ」

 まだよく分かってないけど、どうせ入りたい部活ないから。

 名前を書いて入部の紙を蝶華くんに渡した。

「これは入部条件とかじゃないんだけど、君って成績良い方?」
「……」

 理事長の娘だからって成績良いって限らないんだよ。だからって入学試験はちゃんとギリギリでも合格できていたから。

「苦手なんだね」
「何で分かるの⁉︎」
「全部顔に出るから。ちなみにこの前のテストの合計点は?」
「黙秘」
「将来結婚する相手に隠し事するの?」
「……家庭科と音楽と美術入れて三十点」

 お父様言ってたの。結婚する相手にはできるだけ隠し事は避けなさいって。隠したいような事でも受け入れてくれる人と結婚しなさいって。許嫁がいるのに。

 だから、そんな言い方されたら答えないなんてできない。

「テストって今日返されたよね?見せて」
「……はい」

 私は蝶華くんに嫌々テストを渡した。

「家庭科0点……美術は高いね。社会全般と外国語が特に苦手って感じかな」
「うん」
「僕で良ければ教えるよ。勉強はできる方だからね」

 それは知ってるよ。初等部入学から今までずっと学年一位を取り続けているんだから。しかも、ほぼ全部満点。

 学園トップテンは廊下に張り出されるから、毎回見ていたの。

「教えてください」
「良いよ。クラス一緒だから休み時間に時々でも良いから一緒にいてくれるなら」
「えっ」
「君と話してると楽しいから」

 同じクラスって事もびっくりだけど、そんなふうに思われてるって事もびっくり。

「そろそろ帰ろっか。多分、他のみんな帰ってるし」

 私と蝶華くんがいる場所から他のみんなの姿は壁はあって見れない。

 なのにどうして分かるんだろう。

「うん」
「寮って二人で一部屋なんだけど、僕と一緒でも良いかな?」
「う、うん」

 これ、知られたら周りにどう思われるんだろう。蝶華くんって人気高いから私じゃ不釣り合いって思う人が多そう。

「これからよろしくね」
「うん。よろしく」
「君に好きになって貰えるように頑張るよ」
「許嫁だからって無理にそういうのしなくて良いよ」
「許嫁関係なく言ってたんだけど。叔父さんに中等部入るまでは自由にさせとけって言われてて何もできなかっただけだし」
「えっ?」
「初等部の時にテスト返されると悲しい顔して、空姫さんといると楽しそうな顔してる君を見るのが好きだったんだ」

 自分では顔に出ないタイプって思ってた。でも、そこまで顔に出ていたなんて。テストの事聞かれた時もそうだったみたいだし。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

コボンとニャンコ

魔界の風リーテ
児童書・童話
吸血コウモリのコボンは、リンゴの森で暮らしていた。 その日常は、木枯らしの秋に倒壊し、冬が厳粛に咲き誇る。 放浪の最中、箱入りニャンコと出会ったのだ。 「お前は、バン。オレが…気まぐれに決めた」 三日月の霞が晴れるとき、黒き羽衣に火が灯る。 そばにはいつも、夜空と暦十二神。 『コボンの愛称以外のなにかを探して……』 眠りの先には、イルカのエクアルが待っていた。 残酷で美しい自然を描いた、物悲しくも心温まる物語。 ※縦書き推奨  アルファポリス、ノベルデイズにて掲載 【文章が長く、読みにくいので、修正します】(2/23) 【話を分割。文字数、表現などを整えました】(2/24) 【規定数を超えたので、長編に変更。20話前後で完結予定】(2/25) 【描写を追加、変更。整えました】(2/26) 筆者の体調を破壊()3/

【完】ノラ・ジョイ シリーズ

丹斗大巴
児童書・童話
✴* ✴* 母の教えを励みに健気に頑張る女の子の成長と恋の物語 ✴* ✴* ▶【シリーズ1】ノラ・ジョイのむげんのいずみ ~みなしごノラの母の教えと盗賊のおかしらイサイアスの知られざる正体~ 母を亡くしてみなしごになったノラ。職探しの果てに、なんと盗賊団に入ることに! 非道な盗賊のお頭イサイアスの元、母の教えを励みに働くノラ。あるとき、イサイアスの正体が発覚! 「え~っ、イサイアスって、王子だったの!?」いつからか互いに惹かれあっていた二人の運命は……? 母の教えを信じ続けた少女が最後に幸せをつかむシンデレラ&サクセスストーリー ▶【シリーズ2】ノラ・ジョイの白獣の末裔 お互いの正体が明らかになり、再会したノラとイサイアス。ノラは令嬢として相応しい教育を受けるために学校へ通うことに。その道中でトラブルに巻き込まれて失踪してしまう。慌てて後を追うイサイアスの前に現れたのは、なんと、ノラにうりふたつの辺境の民の少女。はてさて、この少女はノラなのかそれとも別人なのか……!? ✴* ✴* ✴* ✴* ✴* ✴* ✴* ✴* ✴* ✴*

忠犬ハジッコ

SoftCareer
児童書・童話
もうすぐ天寿を全うするはずだった老犬ハジッコでしたが、飼い主である高校生・澄子の魂が、偶然出会った付喪神(つくもがみ)の「夜桜」に抜き去られてしまいます。 「夜桜」と戦い力尽きたハジッコの魂は、犬の転生神によって、抜け殻になってしまった澄子の身体に転生し、奪われた澄子の魂を取り戻すべく、仲間達の力を借りながら奮闘努力する……というお話です。 ※今まで、オトナ向けの小説ばかり書いておりましたが、  今回は中学生位を読者対象と想定してチャレンジしてみました。  お楽しみいただければうれしいです。

迷宮階段

西羽咲 花月
児童書・童話
その学校にはある噂がある 「この学校は三階建てでしょう? だけど、屋上に出るための階段がある。そこに、放課後の四時四十四分に行くの。階段の、下から四段目に立って『誰々を、誰々に交換』って口に出して言うの。そうすれば翌日、相手が本当に交換されてるんだって!」 そんな噂を聞いた主人公は自分の人生を変えるために階段へ向かう そして待ち受けていたのは恐怖だった!

守護霊のお仕事なんて出来ません!

柚月しずく
児童書・童話
事故に遭ってしまった未蘭が目が覚めると……そこは死後の世界だった。 死後の世界には「死亡予定者リスト」が存在するらしい。未蘭はリストに名前がなく「不法侵入者」と責められてしまう。 そんな未蘭を救ってくれたのは、白いスーツを着た少年。柊だった。 助けてもらいホッとしていた未蘭だったが、ある選択を迫られる。 ・守護霊代行の仕事を手伝うか。 ・死亡手続きを進められるか。 究極の選択を迫られた未蘭。 守護霊代行の仕事を引き受けることに。 人には視えない存在「守護霊代行」の任務を、なんとかこなしていたが……。 「視えないはずなのに、どうして私のことがわかるの?」 話しかけてくる男の子が現れて――⁉︎ ちょっと不思議で、信じられないような。だけど心温まるお話。

悪魔さまの言うとおり~わたし、執事になります⁉︎~

橘花やよい
児童書・童話
女子中学生・リリイが、入学することになったのは、お嬢さま学校。でもそこは「悪魔」の学校で、「執事として入学してちょうだい」……って、どういうことなの⁉待ち構えるのは、きれいでいじわるな悪魔たち! 友情と魔法と、胸キュンもありの学園ファンタジー。 第2回きずな児童書大賞参加作です。

魔法アプリ【グリモワール】

阿賀野めいり
児童書・童話
◆異世界の力が交錯する町で、友情と成長が織りなす新たな魔法の物語◆ 小学5年生の咲来智也(さくらともや) は、【超常事件】が発生する町、【新都心:喜志間ニュータウン】で暮らしていた。夢の中で現れる不思議な青年や、年上の友人・春風颯(はるかぜはやて)との交流の中でその日々を過ごしていた。 ある夜、町を突如襲った異変──夜にもかかわらず、オフィス街が昼のように明るく輝く事件が発生する。その翌日、智也のスマートフォンに謎のアプリ【グリモワール】がインストールされていた。消そうとしても消えないアプリ。そして、智也は突然見たこともない大きな蛇に襲われる。そんな智也を救ったのは、春風颯だった。しかも彼の正体は【異世界】の住人で――。 アプリの力によって魔法使いとなった智也は、颯とともに、次々と発生する【超常事件】に挑む。しかし、これらの事件が次第に智也自身の運命を深く絡め取っていくことにまだ気づいていなかった――。 ※カクヨムでも連載しております※

シャルル・ド・ラングとピエールのおはなし

ねこうさぎしゃ
児童書・童話
ノルウェジアン・フォレスト・キャットのシャルル・ド・ラングはちょっと変わった猫です。人間のように二本足で歩き、タキシードを着てシルクハットを被り、猫目石のついたステッキまで持っています。 以前シャルル・ド・ラングが住んでいた世界では、動物たちはみな、二本足で立ち歩くのが普通なのでしたが……。 不思議な力で出会った者を助ける謎の猫、シャルル・ド・ラングのお話です。

処理中です...