二つの世界を彷徨う銀の姫

碧猫 

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二十六の世界 銀の姫の名

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 綺麗な空間だな。景色に気を遣っているのだろうか。

 あの空を歩いていて見た景色以上の景色だ。

 星明かりだけが光源で、宇宙にいるかのような景色だ。

「綺麗だな」
「うん。でも、ここで勉強させられるとなんか時間の流れが遅く感じるんだよね」

 ここで勉強は集中できそうなのだが、時間の流れが遅く感じるという事はあまり集中できる環境ではないのか?

 シェフィが勉強したくなくてそう感じているという事もなくはないだろうが。

「銀の姫君、名を伺ってもよろしいですか?」
「オプシェです」
「先代の姫君らしい名です。オプシェ、貴方は先代にとても愛されていたのですよ。その名を与えたほどに」
「確か、初代銀の姫の名前がオリプシェだったんだよね?」
「ええ、その通りです。異種からの寵愛をその身に受けた初代銀の姫君。そして、オプシェ。貴方も歴代の銀の姫君と比べものにならないほどの寵愛を受けているのです」

 初代銀の姫か。家のどこかに写真があったはずなのだが見つからないんだよな。

 もしかしたら、その銀の姫を調べれば何か知れるかもしれないな。同じ時間に銀の姫が二人いる事はできない事とか。

「先代の銀の姫はどんな人だったんですか?」
「それは話せません。先代に関する事は今代には話す事はできない。それが決まりです」
「先代が掃除と勉強できたかくらいなら良いんじゃない?」
「そうですね。銀の姫君としてではなく彼女個人としてであれば良いでしょう。掃除と勉強は得意な方でしたよ。いつも部屋を綺麗にしておりました。勉強もどちらの世界でも学園首位を卒業までとり続けておりました」

 母様……先代から受け継いだのは銀の姫だけだったとかないよな。

「……プシェの父親の方は?」
「そちらも、その二つは得意でした。学園で彼女といつも並んでおりましたから」

 それは一緒にいたではなくて、どう考えてもテストの順位が一位二位で並んでいたという事だよな。

 ……突然変異か?

「それに旦那様の方は魔法が得意でした。騎士にはなりませんでしたが、その魔法は人々のため使っておりました」

 魔法か。当様はそんなに魔法を使えていたのか。

「プシェって魔法使えないけど、代わりの何かって使えるの?」
「身を守る術という事であれば使う事はできません。銀の姫君は自分の身を守る術がありませんが、シェフィル、貴方が守れば良いのです」
「それは分かってるよ。ただ、一度くらい魔法使える楽しいって思ってもらえたらって思っただけ」

 魔法って使えるとそんなに楽しいのか。一度くらいは、生活以外で使ってみたいな。
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