二つの世界を彷徨う銀の姫

碧猫 

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五の世界 接近

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 シェフィルに動いて良い許可を貰うまで三日間もかかってしまった。何も連絡していないからなんて言われるか。

 家に帰ってすぐに一の世界へ行かなくては。

       ******

 一の世界へ来て急いで学園へ向かった。ちゃんと時間は考えてある。こっちでは今は昼だ。

「レディーが全力疾走するな」
「申し訳ございません」
「全力疾走の事か?それとも約束の事か?」
「両方です」

 何も伝えずに来なかったんだ。謝るだけで許してもらえるとはあまり思っていないが、今は頭を下げて謝る事しかできない。

「顔を上げろ」
「ですが」
「来なかった事については怒っていない」

 近い近い近い近い近い。

 吐息がかかりそう、ではないか。だが、顔がかなり近い。

 というか腰に手が

「体調悪かったならちゃんと言え」
「申し訳、えっ」

 こっちの世界では誰にも言っていない。なのになんで知っているんだ。

 向こうの世界でも知っているのはシェフィルだけだというのに。

 中には別の世界の同じ人が体験した事を自分が体験したと感じるとか記憶があるという人はいるらしい。だが、あの時周りには人はいなかった。

 そもそも、

 当然シェフィルが実はジシェンだったなんてオチもないだろう。

「あの、なぜ知っているのですか?」
「そんなのどうでも良いだろ。それより、今度からは体調悪かったら言え」
「はい」

 怒りと悔しさが混じったような表情をしている。

 約束を守れなかった事より何も伝えられない事が悪い気がしてきた。だが、私はもう一つの世界を知らせるような内容を話す事ができない。

 体調については二の世界に来る前は悪くなかったから言わなかっただけなのだが。

「今日はもう授業終わったから帰って休め」
「はい」

 休めと言われても三日間何もせずに休んでいたからもう大丈夫なのだが、家に帰ってやりたい事がある。

 休むかどうかは置いておいて家に帰るのは賛成だ。

「……家まで送る」
「ありがとうございます」

 この学園貴族達が通う学園なのに、徒歩圏内は徒歩で移動しろってなんなんだろうか。

 私とジシェンは徒歩圏内だから歩いて帰らなければならない。

「最近暑いな」
「そうですね」
「夜は冷えるから風邪ひくなよ」
「気をつけま……す」

 どういう事だ。今この時期の一の世界は夜も冷える事はない。逆に二の世界は肌寒いくらいの気温だ。

 気にしすぎ、なのか。

「……十八になったら婚約解消するつもりなのか?」
「まだ分かりません」
「十八になったら結婚したい」

 婚約はしているかもしれないが、結婚は流石に早すぎないか?

 貴族や王族はそのくらいが当たり前か。

「今は返事ができません」
「……そうだよな。忘れてくれ」

 そんな事言われて忘れられない。

 シェフィルもそうだが、ジシェンもかなり謎が多そうだな。
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