二つの世界を彷徨う銀の姫

碧猫 

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二の世界 もう一つの世界

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 時が進んで授業が終わって夕方になった。

 そろそろもう一つの世界へ行かなくてはならない。

 もう一つの世界へ行くには古典的だけど鏡を使う。

 鏡で特殊な光を反射させてその光の中へ入るともう一つの世界の私の家に行く事ができる。


 もう一つの世界はニという事にする。二の世界といえばこっちだと思って欲しい。

 一の世界が夕方だと二の世界は早朝。

 こっちでも学生には学生だが、こっちでは騎士志望の人が多く通う学園に通っている。

 私は騎士志望ではないのだが、成績的に他にいけなかった。

「オプシェ、迎えにきたよ」

 一の世界を出る時に時計は見たが今は六時ちょい過ぎ。
 外で私を呼ぶ彼はシェフィル。彼は騎士志望というか推薦で入っており、朝の訓練があるはずだ。

 騎士志望の朝の訓練は時間指定はないが特定のメニューをこなさなければならない。推薦組はそれプラス元騎士の指導者と模擬戦。
 もし、その模擬戦で勝つ事があればその日の朝訓練免除なのだが、まさか勝ったのか?

 でなければこの時間に来れない。

「今行く」
「どうせ朝食べてないんでしょ。待ってるからちゃんと食べてから来て」

 お昼食べてるから食べる気がしないけど、軽く食べておこうか。

 ここで食べなければ運動するのに六時間何も食べれなくなるかもしれないから。


「お待たせ」
「髪、またちゃんと結べてない。結んであげる」
「うん」

 シェフィルは世話好きなのだろうか。毎回上手く結べてない私の髪を結んでくれる。

「できた。今日も可愛いよオプシェ」
「シェフィルの方が可愛いだろう」
「うー、そう言われないように頑張って騎士推薦までとったのに。いつになったら男として見てくれるの」
「……筋肉つけば?」
「これでもついてるって。君一人くらい持ち上がるから」

 彼は私の婚約者だ。

 婚約者が二人いる事に関してはこういう理由だ。

 まず経緯を話そう。

 私は生まれてから七年間の間の記憶がない。
 私は記憶にある限り一人だったのだが、机の上に置き手紙があった。しかも、一とニの両方の世界に。

 そしてそれぞれに婚約者の事が書かれていた。一がジシェン。二がシェフィル。

 だが、当然両方断ろうとしたのだが断る事ができずこうなってしまっている。

 だが、婚約は十八まで。そのあとはどうするか話し合って決めるという約束は取り付けている。

 今は十六だ。婚約期間はあと二年という事になる。

 伝承を読んでいると銀の姫は両方の世界で結婚しているという記述が良くあるが私は生まれた世界で暮らしたい。だから、一人に決めるつもりだ。

 そもそも、両方とも結婚相手が一人という法などないのだが。

「信じてないでしょ」
「信じてる。それより、朝の訓練は?」
「終わったよ。行ってすぐに指導者の元騎士さんに勝って終わった」

 彼は平然と言っているが、今までそれができた人を聞いた事がない。

「オプシェとこうやって歩いているのって楽しい」
「そんな事言ってないで早く行かないと遅刻する」
「いくら騎士養成学園といっても開始一時間前にこいはないでしょ」
「ちゃんと授業はあるだろう。だから早く行く」
「分かってるよぉ」

 早く行かないと遅刻するから、少し急いで歩いた。

 結果として遅刻はしなくて良かったがかなりギリギリだった。
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