栞の魚と人魚姫

月兎もえ

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決断

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人魚姫は王子に会ってからというもの、すっかりふさぎこんでしまった。あんなに大切にしていた花壇のお手入れもおざなりにし、大好きな白い王子にも挨拶の一つも交わさず、自室にこもっていた。
お姉さんたちが心配して、訳を聞いても話そうとしなかったので、お姉さんたちは私に聞いてきた。
訳を話すと、「何ですって!」と言い、人魚姫の部屋へ急いだ。

「人魚姫!聞いたわよ!人間に近づいたんですって!危ないじゃないの!」
「そうよ。見つからなかったからいいようなものを。」
黄色の尾を持つ人魚と、青い尾を持つ人魚が言った。
「私は見つかってほしかったわ。」人魚姫は悲しそうに言った。
「なになに!どういう意味??」
好奇心旺盛な緑の人魚は目を輝かせた。ちょっと!と紫の人魚が目配せして制止させた。それを見た人魚姫は微笑んだ。
「いいのよ、お姉ちゃん。」そして、またすぐに悲しそうな顔をした。
「私、あの助けた王子様を好きになってしまったの。できることなら仲良くなりたい。私はこんなに好きなのに、私のことを知りもしないなんて悲しいわ。」
「人魚姫・・」青い尾を持つ人魚と紫の尾を持つ人魚は、優しく肩を抱き、頭を撫でてくれた。
「好きになったって、それって『恋』ってやつよね!いいなぁ!私まだ恋ってしたことないの!ねぇねぇ!どんな気持ちなの?!」緑の尾を持つ人魚はうっとりとしながら頰に手を当てた。黄色い尾を持つ人魚に「こらっ」と軽く腕を打たれていた。
「だったら魔女に人間にしてもらえばいいのよ。」赤い尾を持つ人魚は言った。お姉さんたちはそれを聞くと凍りついた。反対に人魚姫の目は輝いた。
「魔女?あの黒くて暗い森にいるっていう魔女?私を人間にしてくれるの??」
「だめ!だめ!だめ!絶対だめよ!いい?魔女は危険だってこと、あなたもおばあちゃんから聞かされて、魔女の所に行くことを禁止されてるでしょ?とにかく絶対だめよ!」黄色の尾を持つ人魚は怒ったように言った。「あんたも余計なこといわないの!」と赤い尾を持つ人魚を叱った。
「でも、噂でしょ?実際に見た人魚なんて聞いたことないわ。」人魚姫の目は一層輝いた。
青い尾を持つ人魚は人魚姫の手を取った。
「確かにそれは噂だけれど、あの辺には毒を持った生き物たちがいるのは確かよ。それだけで危険なのよ。お願いだから、私たちをあまり心配させないで。」
「お姉ちゃん・・」人魚姫は青い尾を持つ人魚姫を抱きしめた。

お姉さんたちが人魚姫の部屋から出ると、人魚姫は悲しそうに笑った。
「みちるも魔女の所に行かない方が良いって言うんでしょ?」
当然だ。人魚が薬さえ飲まなければ、悲劇は回避できるのだから。
「はい。私もお姉様たちと同じ思いです。」
「そう・・」人魚姫は俯き、すぐにパッと顔を上げた。
「わかったわ!皆んながそう言うなら行かないわ。」
私はその言葉を聞きホッとした。また、一緒に行こうと言われたり、絶対行く、と聞かなかったりするかと思ったからだ。
「ありがとうございます!それではお茶にしましょう!美味しいお菓子を食べて元気を出してください!」私は少しでも人魚姫が元気になってもらえるように、急いで調理場へ向かった。
私は後から、この時ほど自分の単純さと浅はかさを悔やんだことはない。

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