16 / 25
16. 「目をつぶっちゃダメだ」※
しおりを挟むバルさんが、いた。
しかも庭園の中に入り込んでいた。
黒尽くめのめちゃめちゃ怪しげな格好で。
黒装束で、顔も見えなかったけど、声も、頭に乗った手の重みもバルさんだった。
まあ、堂々と入ってきててもバル殿下本人と会いさえしなければ怪しまれないと思うけど、そういうわけにもいかないんだろうな。
バルさんは、ドルが髪に飾った花を持って行った。その時に触れた耳元に俺はそっと触れた。
そういえば、額に触れたのはバルさんの唇だった?
もしかして俺はバルさんに額にキスされたのか?
多分こちらの世界ではそんなのはただの挨拶なんだろう。日本生まれの日本育ちの俺は初めての体験だったけど。
俺はバルさんが撫でてくれた自分の頭に触れる。
額、耳元、頬……そして、俺は気づいた。
あんなに怖かったのに、俺の下半身は今、昂ぶっていた。
信じられない。
被虐趣味でもあるのか、俺。
ベッドの中で俺はモゾモゾと身をよじった。
こんな時に、男としての尊厳を確認するなんて、馬鹿らしいと思いつつ、俺は服の中に手を入れた。
「ふっ……うっ……」
そっと俺は半勃ちになったモノをしごき始めた。
触り始めたらもう止まらなかった。
俺は、一心不乱に手を上下していた。
「うっ……くぅ……」
スマホの動画もいらなかった。バルさんの手を想像していた。どんな風に触るんだろう。
いや、頭の片隅では「何でそんなこと考えてるんだろう? 俺はバルさんのことをどうしたいわけ?」と思ってはいたけれど、せき止めることができなかった。
終わりが近づいてきて、俺は「ティッシュとかないじゃん」と我に返ったのだが、その瞬間ふとバルさんの手が頬を撫でた感覚を思い出して、俺は果てた。
「あっ……」
俺は、何を考えていたんだ。イッてしまった気だるさから、ぐったりしつつも、俺は自分の愚かさを思い知った。
俺はきっとバルさんのことが好きなのだ。
馬鹿みたいに下着を濡らしたまま、俺は布団にもぐった。
服も汚してしまい、着替えないとダメだなと思いながら、ベッドから出るのを後回しにしていたら、ふわふわの掛ふとんの外から声がかかった。
「怪我などしていないか?」
バル殿下だった。だから何で皆部屋に勝手に入ってくるんだよ。お母さんか。心の中で悲鳴を上げながら、俺は、バル殿下の鼻が詰まっていてにおいとか気づきませんようにと祈りながら、顔だけ出した。
「大丈夫……心配しなくていいから、ちょっと一人にして欲しい……」
俺が望みを言うと、バル殿下の眉がきゅっと寄った。そして、俺の前髪を撫でる。
「潜り過ぎなのではないか? 汗をかいている」
俺の額の汗を拭ってくれようとしたバル殿下の手を、俺はつい払ってしまった。
「ご……ごめんなさい。そんなつもりじゃなくて……」
多分無意識だった。バルさんに触れられた部分にバル殿下が触れるのを避けてしまった。
本当に、今は下着も濡れて大変なことになっているから、そのままどこかに行ってほしい。
「怖かっただろう。サキドゥールがすまなかった」
バル殿下は、俺が触れられたくないと思ったのを、刺されそうになったせいだと思ったようで、今度は痛ましいとでも言うように眉をひそめた。同じように動く眉だけでも、何となくバル殿下のお気持ちがわかってしまう。
バル殿下はいい人だな、と思って、俺はドルに対してもそう思っていたことを思い出した。
俺は、きゅっと目をつぶった。
途端に、「目をつぶっちゃダメだ」と言ったバルさんのことを思い出す。
慌てて目を開けると、思ったよりもバル殿下の顔が近くにあって驚く。まつ毛が触れ合うかと思うほどの距離で、俺は驚く。
「……具合が悪くなったのかと」
バル殿下はのぞき込むように近づけていた顔を離した。バル殿下の顔がほんのりピンクに染まっていて、俺はバル殿下の方が調子が悪いのではないかと心配になる。
「バル殿下が具合悪いのでは……」
バル殿下は顔を腕でゴシゴシとこすると、「俺は大丈夫だ」と言ってよろよろとベッドからも離れた。
「食事を持ってきたのだが、ここに置いておく」
そう言って、バル殿下はその後にこちらを見ることなく去って行った。
俺に与えられた部屋とはいえ、城の一部だから仕方ないとは思うが、出たり入ったり、本当にいい加減にしてほしい。
俺は、一人になると急いで下着と服を着替えた。そして、この下着と服を後で風呂で洗おうとリュックの中に入れていたコンビニのビニール袋に入れた。
俺はバル殿下がテーブルに置いて行った食事を見た。
見事に二人分あるのだが、バル殿下は一緒に食べるつもりだったのではないのだろうか。
とりあえず、俺は自分の分を食べ始め、食べ終わってしまったがバル殿下は戻って来なかった。
0
お気に入りに追加
38
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集
あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。
こちらの短編集は
絶対支配な攻めが、
快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす
1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。
不定期更新ですが、
1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
書きかけの長編が止まってますが、
短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。
よろしくお願いします!
【BL】国民的アイドルグループ内でBLなんて勘弁してください。
白猫
BL
国民的アイドルグループ【kasis】のメンバーである、片桐悠真(18)は悩んでいた。
最近どうも自分がおかしい。まさに悪い夢のようだ。ノーマルだったはずのこの自分が。
(同じグループにいる王子様系アイドルに恋をしてしまったかもしれないなんて……!)
(勘違いだよな? そうに決まってる!)
気のせいであることを確認しようとすればするほどドツボにハマっていき……。
日本一のイケメン俳優に惚れられてしまったんですが
五右衛門
BL
月井晴彦は過去のトラウマから自信を失い、人と距離を置きながら高校生活を送っていた。ある日、帰り道で少女が複数の男子からナンパされている場面に遭遇する。普段は関わりを避ける晴彦だが、僅かばかりの勇気を出して、手が震えながらも必死に少女を助けた。
しかし、その少女は実は美男子俳優の白銀玲央だった。彼は日本一有名な高校生俳優で、高い演技力と美しすぎる美貌も相まって多くの賞を受賞している天才である。玲央は何かお礼がしたいと言うも、晴彦は動揺してしまい逃げるように立ち去る。しかし数日後、体育館に集まった全校生徒の前で現れたのは、あの時の青年だった──
お客様と商品
あかまロケ
BL
馬鹿で、不細工で、性格最悪…なオレが、衣食住提供と引き換えに体を売る相手は高校時代一度も面識の無かったエリートモテモテイケメン御曹司で。オレは商品で、相手はお客様。そう思って毎日せっせとお客様に尽くす涙ぐましい努力のオレの物語。(*ムーンライトノベルズ・pixivにも投稿してます。)
ギルド職員は高ランク冒険者の執愛に気づかない
Ayari(橋本彩里)
BL
王都東支部の冒険者ギルド職員として働いているノアは、本部ギルドの嫌がらせに腹を立て飲みすぎ、酔った勢いで見知らぬ男性と夜をともにしてしまう。
かなり戸惑ったが、一夜限りだし相手もそう望んでいるだろうと挨拶もせずその場を後にした。
後日、一夜の相手が有名な高ランク冒険者パーティの一人、美貌の魔剣士ブラムウェルだと知る。
群れることを嫌い他者を寄せ付けないと噂されるブラムウェルだがノアには態度が違って……
冷淡冒険者(ノア限定で世話焼き甘えた)とマイペースギルド職員、周囲の思惑や過去が交差する。
表紙は友人絵師kouma.作です♪
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる