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8. 「何をしているんだ!」「あの、男としての尊厳の確認を」※

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 俺は立派な部屋に案内された。
 ここが俺の部屋らしい。ありがたい。

 とりあえず、バルさんだと思ったけど、あのバル殿下はバルさんじゃないな。
 自分でも何を言ってるかわからないが、バルさんに見えるけど、全然肉屋の時と違う。遠山の金さんもそうだよな。お裁きの時と町での陽気な感じは違うもんな、と思うけど、多分違う人なんだな。
 じゃああんなに似てるバルさんって何なんだ。やばいな。俺は王家の秘密に食い込んでしまったのか──なんてな。

「さて……」

 俺には色々考えることがありすぎて、どうしたらいいかわからない。

「まず、何を考えたらいいんだ……??」

 頭がパンクしそうだ。
 そういえば、身体がという話があったな、とふと思い出す。
 いやでも、なんかこんな状態でいっぱいいっぱいで、自家発電する余裕もない。男としての尊厳がどうとか、どうでもいいかな。
いや、ちゃんと確認しないと、心配といえば心配だ。

 ベッドに腰かけて、俺は自分のモノを取り出した。
 まあ、勃たないよね。
 何か想像……エッチな、何かエッチなお姉さん……
 俺は自分の想像力のなさを舐めていた。普段は動画見ながらとかだから。

 そういえば、スマホあるじゃん。
 何かダウンロードされてなかったかな。
 スーツのポケットからスマホを取り出す。
 かろうじて充電は6%あったけど、使ったら一瞬で死んでしまう。
 モバイルバッテリーがリュックの中にあったはず。
 モバイルバッテリーを繋いでみると、結構充電できそうでホッとする。でも、用途がこれってどうなの。
 イヤホンも出して、ハッとする。
 俺のスマホ、充電しながらイヤホンつけられないタイプだった。
 仕方ない。
 とりあえず、何か残ってないか探すと、オフラインで見られそうな動画が残っていた。
 よっぽど好きなタイプだったはずなのに、全然ときめかない。ヤバイ。やっぱり男性として機能しないのかな。
 俺は勃たないものを無理矢理勃たせようとしたが、全然勃たない。もう泣きそう。
 俺が女の子のアンアン言ってる声と、自分のモノに集中してたら、いきなり「何をしているんだ!」と声がかかった。
 ビックリしたけど、涙目でそっちを見たら、バル殿下が恐ろしい顔をしてこちらを見ていた。目をひんむいて、眉間にはどこの彫刻家が彫ったのかというくらい深いシワがある。

「あ、う……男としての尊厳の確認を……」

 俺は、股間を晒したまま、そう答えていた。
 早くしまわなきゃって思うのに、全然動けない。
 バル殿下は、はあとため息をついて、「それで確認できたのか?」と聞いてくる。え、この状態でそれ聞いちゃうの。プライベート踏み込んでくるなよ。てか、こういう時は部屋から出てってくれよ。お前は俺のお母さんかよ。
 もう嫌だ。

「見たらわかるだろ!! 勃ってないだろ!!」

 バル殿下は、俺の股間にチラッと視線をむけると、「そうだな」と言った。男としての尊厳どころか人間としての尊厳もぼろぼろだ。

『アアン……イクッ……イッちゃうぅ……』

 空気を読まずに動画の女の子がイッてしまった。
 もう嫌だ。
 俺は動画を消して、モノをしまう。

「何か用でしたか?」

 スン、と表情を消した俺に、バル殿下は「いや……」と口をにごす。俺は気持ちを切り替えることにした。

「あーそうだ! バル殿下は、独りでする時どうやってするんですかー?!」

 変なテンションで聞いてやった。わはは。
 俺の尊厳を踏みにじった復讐だ。

「あ、いや、それは……」

 さすがにバル殿下が口ごもる。

「何か見て? 想像して??」

 俺がバル殿下の顔を覗き込むと、バル殿下は視線をそらした。

「それは……」

「それは??」

 畳みかけると、バル殿下のしかめ面がめちゃめちゃ険しくなって、舌打ちが聞こえた。

「……お前の尊厳の確認を手伝ってやる」

 バル殿下は、俺の肩を押してベッドに倒した。

「は?」

 俺は間抜けな顔をしてベッドに埋もれた。

「いやいや!! ストップストップ!!」

 バル殿下を押し返して、俺はジタバタした。

「そういうの、いいですから!」

 俺が怒ってにらみつけると、バル殿下はグッと唇を引き結び、渋い顔をして「冗談だ」と小さい声で言って部屋を出ていった。

「何なんだよ……」

 俺はバル殿下が出ていった扉をポカンと見つめていた。



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