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しおりを挟むさて、その後の人族大陸《ミュステン》だが。
防御壁のお陰で街の被害も少なく、海が荒れたことで数ヶ月漁業に影響は出たものの国からの補償金等で賄うことも出来、魔族軍の侵攻があったとは思えないほどに平和な日々を過ごしている。
恐らく、いずれは魔族大陸《ローカストス》に魔王が産まれ、また同じように勇者に世界が委ねられることになるのだろうが、今のところは極めて平穏だ。
画家のお姉さんは無事に絵を描き上げ、ヨゼフとアリシア殿下の結婚式までに届けることが出来た。
丁度祝いのような形で渡すことになった訳だが、依頼の一枚では足りないと思ったのか、一緒に小さな絵を贈っていた。絵柄は、窓際で昼寝をしている俺である。
モデルって結構恥ずかしいな、と思いつつ顔を作っていたのだが、日差しが心地よすぎて気づいた時には寝ていたし、知らぬ間に絵は出来上がっていた。
寝こけていただけなのに再び火花魚《スピサス》を貰ってしまって忍びなかったので、エイミーにも分けにいった。丁度、エイミーとベラの間に子供も産まれたことだし、そのお祝いで。
ベラの雇い主である魔術師長の計らいで、異種族間の子を成す魔方陣を描いて貰ったらしい。父親に似て可愛らしい子供達の背には、小さな烏の羽がついている。どうやら飛ぶことは出来ないらしいが、可愛いと評判のようだ。
『アニキが名付け親になってくだせぇ!』などと言うもんだから、女の子ふたりに名前をつけさせてもらった。四人兄妹の下ふたりだ。
ベリーとメリーと名付けてみた。こういうセンスがないから気に入って貰えるか不安だったが、喜んで貰えたので安心したのは記憶に新しい。
少し経って成長した頃、ベリーとメリーは俺と顔を合わせるたびに『ロルおじちゃん! あそんで!』『あそんでー!』と頼りない足取りでかけよってくるようになった。
元気よく跳ね回る子猫ふたりを見ると、つい、俺も子供が欲しいな~なんて思ったりもする。いや、まあ、猫が恋愛対象なのかって言われると微妙なところなんだけど。そもそも人族ってだけで元魔族の俺からすると恋愛どうこうの相手じゃない気もするし、かといって魔族相手はなんとなく避けてしまうし。
仮に猫又になって、人に化ける術か何かを覚えられたとしても、俺はきっと独り身で生きていくんだろう。
まあ、近所の子供をかわいがったりするだけで充分楽しいからいいんだが。
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