607 / 618
第593話 ビデオメッセージ
しおりを挟む歩いていると、目の前に誰かいた
誰・・・?いや、セーだ、一瞬誰かわからなかった
避けて通って、進む
「あの・・」
あれ?なんで進んでるんだっけ?
袖をつままれて立ち止まる
「ゆーしゃから、言われてて」
ゆーしゃ?なんだろう
「見てほしい」
何かはわからなかったが、ついていくことにした
何を探していたか忘れたし休憩にいいだろう
部屋に行くと、皆いた
奈美も、ヨーコも、父さんも、ルールも、皆
母さんに手を引かれて床に座らされた
「セーさんが大事な話があるって・・あんた大丈夫・・・じゃないわよね?」
「大丈夫」
何か言おうとした母さんだけど最後に来たのが私で、これで全員集まったのかセーが話し始めた
「これ、俺達とゆーしゃとの約束」
集まった私達の前に来たセー、スマートフォンを私達に見せてくる
画面を操作してそれは始まった
「もうこれうつってるのかな?カメラの向き逆にするのどうするんだろ?スマートフォーン替えるとわかりにくいなぁ」
洋介の声、洋介の声だ
動画はそれだけ
それだけ再生するとさっさと出ていったセーを追いかける
足がもつれて、それでも腕をとれた
「どういう、こと?」
「約束したから」
そのままどこかに行こうとするセーを皆が集まる部屋に引きずって戻った
私は前の方で聞いたからこの動画自体が意味のないものだとわかったけど、後ろにいた人達はポカンとしている
聞こえてない人もいただろう
「どういう、約束?」
「ゆ、ゆーしゃは「もしも一週間僕の姿がなかったらみんなにこのスマートフォーンの動画を見せていって1日1動画」って僕らに言った」
「・・・・・」
「・・・・・」
スマホを取り上げようとしたが、今の私の力では壊しかねない
今の私ならセーを抑えられる、けど手が足りない
「奈美!ヨーコ!」
「持ってないです!この女、魔法で収納していますわ!!?」
「元杉神官の遺言がさっきのってどういうことですか!?」
奈美もさっきの意味不明な動画だけで終わらせようとしたセーに混乱しているようだ
「とにかく、一日一回は見せてもらえるのね?」
「うん、これゆーしゃとの約束」
幸せそうに豊満な胸の上で両手を重ねて頬を染めるセー
ヤバい、殴って奪ってしまいたい
いや、だめだだめだ
「わかったわ、スマホの管理しっかりしてね」
「うん」
「皆!一日一回洋介が動画のこしてくれてるみたい!今日のはさっきの意味ないやつだけ!解散!」
なんか、すっと、視界がひらけた気がする
喉ガラガラだしお腹すいた
奈美がせめてパソコンに繋いでもう少し大きな画面で見れるようにと説得しているようだけどセーに通じているかはわからない
「奈美、ヨーコ、行くわよ」
「ど、何処へです?」
「まって、スマホの中みたいからっ!」
とにかくひっつかんで食堂に行き、文句を言う奈美とヨーコにありったけ食べさせ、強引にそのまま風呂に入る
セーのところに行こうとしてるけど無理やりだ
気分じゃないという奈美を「じゃあひん剥くわよ」と言って無理やり脱がせて風呂に入って・・無言で体を洗って、そのまま出て、フルーツ牛乳を飲ませる
私もだけど、奈美も、ヨーコも酷い顔をしている
とにかく食べて、風呂に入って、一度寝よう
ダリアやロムはこちらの世界にはいないようだしこの二人だけ
セーは全く動じていないどころか幸せそうな雰囲気すら感じる
寝間着にして布団に連れ込んで、二人とも両脇に抱えた
「わ、私もっ!?」
「そうよっ」
肩の上に奈美の頭が載って、私より奈美のほうが大きいのに、まぁいいや
肩にいつもより重みがある
「ごめん、いつのまにかおかしくなってたみたい」
「仕方ありませんわ」
「ううん、私こそ酷いこと言ってごめん・・ずっと謝りたかった」
「何言われたかおぼえてないけどいいよ、私が向こうで倒れてからどれだけ経った?いや、一週間だったか」
一気に思考が回ってくる
二人のシャンプーの匂い、洋介よりも大きな奈美
話したいから逃がす気はないけど、奈美も逃げる気はないようだ
人間、飯食って熱い風呂に入って寝れば嫌なことがあってもスッキリするものだ
私もちょっとおかしくなっていたみたいだけど2人も酷いものだった
髪はボサボサ、目はうつろ、肌もカサカサだ
「うん」
「私ね、今でも洋介が死んだなんて信じられてないし実感もない」
でも死の証拠を見せられ、洋介との繋がりもなくなってて・・・死を実感していた
「っでも・・・」
「洋介とね、話してたの」
「何をです?」
そもそも洋介の死、もしかして、いや、死んでないんじゃないか?
洋介は「僕は死なないから」と発言していた
そこに嘘は全く感じなかった
でも『異世界の常識』『昇華』『神の使徒』『治癒能力抜群のレアナー教』・・なにか方法があるのかもしれない
「僕は死なないからって言っててさ」
「でも元杉は」
「うん、写真も見た、覚えてるしそれを少しは信じるけど、洋介の言葉も信じてるんだ、信じることにした」
「でも、あんなに酷くされてて!私はあのとき!あ、あの磔にされてる元杉神官から繋がりを感じたんですよ!?」
まだ隈の出来ている奈美にそう言われて、目をしっかり合わせる
奈美も動揺している
「それでもね・・洋介は私にこう言ったんだ「僕はどんな事があっても絶対に戻ってくるから心配せずに待っていてほしいんだ」ってね」
その時は心配させないための言葉だと思った
「でも、死んじゃってるじゃないですか!!?」
「そうですわ!」
2人の言うことももっともだ、だって私もそう思った
「そうね、そう言われて私も確か「死んでも?」って聞いたわ・・そしたら「死んでも」って返してきたのよあの子」
「えぇ・・・」
「それで、1年は何かを探さないように言ってて・・確か口を割らせようとしたんだけど失敗したわ」
「元杉神官、大事なことは隠しますもんね」
「しかし・・」
「うん、もしかしたら使徒とか神の従属神?とか言う立場で帰ってくるって意味かもしれないし、他にもセーのあの幸せそうな態度、洋介は勇者だったわけだしなにかの方法で生き返ってくるかもしれないわ」
「なっ・・え、えぇ?・・・・・・」
奈美は困惑している
それが当然だ
地球では死者は蘇らない、生き返らない
死んですぐ心肺蘇生で生き返った事例はあるが少なくとも年単位では絶対に有り得ない、火葬されているならなおさらだ
栄介お義父さんと詩乃お義母さんが生き返ってきたときなんて世界中が騒ぎになった
洋介は自分では出来ないと言っていたけど、なにかの方法があるのかもしれない
本人も数え切れないほどの神様たちの加護を授かっている、魔王討伐でそれぞれからなにかのご褒美をもらってるかもしれない
「確かに、そういう逸話はありますが」
「あるのっ!!?」
「人が死んで、神に従属して、人界に戻ってくるということならよくありますが・・・」
「あるのっ!?」
「あの暴力女・・シーダリアとルーリリアを知りませんか?」
「なんですかそれ?」
その日はベッドに入って、私たちは眠ることもなく話し続けた
きっと・・泣いていたヨーコも、殺意にあふれていた奈美も、ちょっと時間の感覚が無くなってた私も、きっともう大丈夫だ
0
お気に入りに追加
114
あなたにおすすめの小説
十年間片思いしていた幼馴染に告白したら、完膚なきまでに振られた俺が、昔イジメから助けた美少女にアプローチを受けてる。
味のないお茶
恋愛
中学三年の終わり、俺。桜井霧都(さくらいきりと)は十年間片思いしていた幼馴染。南野凛音(みなみのりんね)に告白した。
十分以上に勝算がある。と思っていたが、
「アンタを男として見たことなんか一度も無いから無理!!」
と完膚なきまでに振られた俺。
失意のまま、十年目にして初めて一人で登校すると、小学生の頃にいじめから助けた女の子。北島永久(きたじまとわ)が目の前に居た。
彼女は俺を見て涙を流しながら、今までずっと俺のことを想い続けていたと言ってきた。
そして、
「北島永久は桜井霧都くんを心から愛しています。私をあなたの彼女にしてください」
と、告白をされ、抱きしめられる。
突然の出来事に困惑する俺。
そんな俺を追撃するように、
「な、な、な、な……何してんのよアンタ……」
「………………凛音、なんでここに」
その現場を見ていたのは、朝が苦手なはずの、置いてきた幼なじみだった。
スマートシステムで異世界革命
小川悟
ファンタジー
/// 毎日19時に投稿する予定です。 ///
★☆★ システム開発の天才!異世界転移して魔法陣構築で生産チート! ★☆★
新道亘《シンドウアタル》は、自分でも気が付かないうちにボッチ人生を歩み始めていた。
それならボッチ卒業の為に、現実世界のしがらみを全て捨て、新たな人生を歩もうとしたら、異世界女神と事故で現実世界のすべてを捨て、やり直すことになってしまった。
異世界に行くために、新たなスキルを神々と作ったら、とんでもなく生産チートなスキルが出来上がる。
スマフォのような便利なスキルで異世界に生産革命を起こします!
序章(全5話)異世界転移までの神々とのお話しです
第1章(全12話+1話)転生した場所での検証と訓練
第2章(全13話+1話)滞在先の街と出会い
第3章(全44話+4話)遺産活用と結婚
第4章(全17話)ダンジョン探索
第5章(執筆中)公的ギルド?
※第3章以降は少し内容が過激になってきます。
上記はあくまで予定です。
カクヨムでも投稿しています。
雨音は鳴りやまない
ナナシマイ
ファンタジー
木下周(きのした あまね)は音楽が大好きな二十五歳のOL。翌日に控えたライブを楽しみに眠ったはずが、気がついたら幻想的に光る泉の傍、子供の姿でうたっていた。
そこは、神のいる世界。
美しさがなによりも重要で、神のための芸術が魔法になる世界だった。
周はレインとして生活しながら、日本へ帰る方法、それを知っているであろう神に会うための魔法を探すことを決意する。
しかし、そんな彼女の前に幾度となく立ちはだかるのは、価値観の違いだ。常識も、習慣も、生きるのに必要な力すら違った。
大好きな音楽だけを頼りに、レインは少しずつその壁を乗り越え、世界のことを知ってゆく。
帰るためなら少しくらい頑張れると、得意の笑顔を張り付けながら。
やがて辿り着いた、神へと続く道。
そこで彼女が目にしたものとは。
……わたしは知っている。平凡な人間にできることなど、なにもないと。それでも――。
◇
これは、異世界からやってきた少女レインと、彼女がもたらしたマクニオス〈神のいる場所〉最盛期、その幕開けの時代を描いた物語。
異世界ハズレモノ英雄譚〜無能ステータスと言われた俺が、ざまぁ見せつけながらのし上がっていくってよ!〜
mitsuzoエンターテインメンツ
ファンタジー
【週三日(月・水・金)投稿 基本12:00〜14:00】
異世界にクラスメートと共に召喚された瑛二。
『ハズレモノ』という聞いたこともない称号を得るが、その低スペックなステータスを見て、皆からハズレ称号とバカにされ、それどころか邪魔者扱いされ殺されそうに⋯⋯。
しかし、実は『超チートな称号』であることがわかった瑛二は、そこから自分をバカにした者や殺そうとした者に対して、圧倒的な力を隠しつつ、ざまぁを展開していく。
そして、そのざまぁは図らずも人類の命運を握るまでのものへと発展していくことに⋯⋯。
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。
~唯一王の成り上がり~ 外れスキル「精霊王」の俺、パーティーを首になった瞬間スキルが開花、Sランク冒険者へと成り上がり、英雄となる
静内燕
ファンタジー
【カクヨムコン最終選考進出】
【複数サイトでランキング入り】
追放された主人公フライがその能力を覚醒させ、成り上がりっていく物語
主人公フライ。
仲間たちがスキルを開花させ、パーティーがSランクまで昇華していく中、彼が与えられたスキルは「精霊王」という伝説上の生き物にしか対象にできない使用用途が限られた外れスキルだった。
フライはダンジョンの案内役や、料理、周囲の加護、荷物持ちなど、あらゆる雑用を喜んでこなしていた。
外れスキルの自分でも、仲間達の役に立てるからと。
しかしその奮闘ぶりは、恵まれたスキルを持つ仲間たちからは認められず、毎日のように不当な扱いを受ける日々。
そしてとうとうダンジョンの中でパーティーからの追放を宣告されてしまう。
「お前みたいなゴミの変わりはいくらでもいる」
最後のクエストのダンジョンの主は、今までと比較にならないほど強く、歯が立たない敵だった。
仲間たちは我先に逃亡、残ったのはフライ一人だけ。
そこでダンジョンの主は告げる、あなたのスキルを待っていた。と──。
そして不遇だったスキルがようやく開花し、最強の冒険者へとのし上がっていく。
一方、裏方で支えていたフライがいなくなったパーティーたちが没落していく物語。
イラスト 卯月凪沙様より
異世界転生ファミリー
くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?!
辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。
アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。
アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。
長男のナイトはクールで賢い美少年。
ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。
何の不思議もない家族と思われたが……
彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。
異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!
あるちゃいる
ファンタジー
山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。
気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。
不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。
どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。
その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。
『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。
が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。
そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。
そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。
⚠️超絶不定期更新⚠️
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる