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第593話 ビデオメッセージ

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歩いていると、目の前に誰かいた


誰・・・?いや、セーだ、一瞬誰かわからなかった

避けて通って、進む


「あの・・」


あれ?なんで進んでるんだっけ?

袖をつままれて立ち止まる


「ゆーしゃから、言われてて」


ゆーしゃ?なんだろう


「見てほしい」


何かはわからなかったが、ついていくことにした


何を探していたか忘れたし休憩にいいだろう


部屋に行くと、皆いた

奈美も、ヨーコも、父さんも、ルールも、皆

母さんに手を引かれて床に座らされた


「セーさんが大事な話があるって・・あんた大丈夫・・・じゃないわよね?」

「大丈夫」


何か言おうとした母さんだけど最後に来たのが私で、これで全員集まったのかセーが話し始めた


「これ、俺達とゆーしゃとの約束」


集まった私達の前に来たセー、スマートフォンを私達に見せてくる

画面を操作してそれは始まった


「もうこれうつってるのかな?カメラの向き逆にするのどうするんだろ?スマートフォーン替えるとわかりにくいなぁ」


洋介の声、洋介の声だ

動画はそれだけ


それだけ再生するとさっさと出ていったセーを追いかける

足がもつれて、それでも腕をとれた


「どういう、こと?」

「約束したから」


そのままどこかに行こうとするセーを皆が集まる部屋に引きずって戻った

私は前の方で聞いたからこの動画自体が意味のないものだとわかったけど、後ろにいた人達はポカンとしている

聞こえてない人もいただろう


「どういう、約束?」

「ゆ、ゆーしゃは「もしも一週間僕の姿がなかったらみんなにこのスマートフォーンの動画を見せていって1日1動画」って僕らに言った」

「・・・・・」

「・・・・・」


スマホを取り上げようとしたが、今の私の力では壊しかねない

今の私ならセーを抑えられる、けど手が足りない


「奈美!ヨーコ!」

「持ってないです!この女、魔法で収納していますわ!!?」

「元杉神官の遺言がさっきのってどういうことですか!?」


奈美もさっきの意味不明な動画だけで終わらせようとしたセーに混乱しているようだ


「とにかく、一日一回は見せてもらえるのね?」

「うん、これゆーしゃとの約束」


幸せそうに豊満な胸の上で両手を重ねて頬を染めるセー

ヤバい、殴って奪ってしまいたい

いや、だめだだめだ


「わかったわ、スマホの管理しっかりしてね」

「うん」

「皆!一日一回洋介が動画のこしてくれてるみたい!今日のはさっきの意味ないやつだけ!解散!」


なんか、すっと、視界がひらけた気がする

 喉ガラガラだしお腹すいた

奈美がせめてパソコンに繋いでもう少し大きな画面で見れるようにと説得しているようだけどセーに通じているかはわからない


「奈美、ヨーコ、行くわよ」

「ど、何処へです?」

「まって、スマホの中みたいからっ!」


とにかくひっつかんで食堂に行き、文句を言う奈美とヨーコにありったけ食べさせ、強引にそのまま風呂に入る

セーのところに行こうとしてるけど無理やりだ

気分じゃないという奈美を「じゃあひん剥くわよ」と言って無理やり脱がせて風呂に入って・・無言で体を洗って、そのまま出て、フルーツ牛乳を飲ませる

私もだけど、奈美も、ヨーコも酷い顔をしている

とにかく食べて、風呂に入って、一度寝よう


ダリアやロムはこちらの世界にはいないようだしこの二人だけ


セーは全く動じていないどころか幸せそうな雰囲気すら感じる


寝間着にして布団に連れ込んで、二人とも両脇に抱えた


「わ、私もっ!?」

「そうよっ」


肩の上に奈美の頭が載って、私より奈美のほうが大きいのに、まぁいいや

肩にいつもより重みがある


「ごめん、いつのまにかおかしくなってたみたい」

「仕方ありませんわ」

「ううん、私こそ酷いこと言ってごめん・・ずっと謝りたかった」

「何言われたかおぼえてないけどいいよ、私が向こうで倒れてからどれだけ経った?いや、一週間だったか」


一気に思考が回ってくる

二人のシャンプーの匂い、洋介よりも大きな奈美

話したいから逃がす気はないけど、奈美も逃げる気はないようだ

人間、飯食って熱い風呂に入って寝れば嫌なことがあってもスッキリするものだ

私もちょっとおかしくなっていたみたいだけど2人も酷いものだった

髪はボサボサ、目はうつろ、肌もカサカサだ


「うん」

「私ね、今でも洋介が死んだなんて信じられてないし実感もない」


でも死の証拠を見せられ、洋介との繋がりもなくなってて・・・死を実感していた


「っでも・・・」

「洋介とね、話してたの」

「何をです?」


そもそも洋介の死、もしかして、いや、死んでないんじゃないか?

洋介は「僕は死なないから」と発言していた

そこに嘘は全く感じなかった

でも『異世界の常識』『昇華』『神の使徒』『治癒能力抜群のレアナー教』・・なにか方法があるのかもしれない


「僕は死なないからって言っててさ」

「でも元杉は」

「うん、写真も見た、覚えてるしそれを少しは信じるけど、洋介の言葉も信じてるんだ、信じることにした」

「でも、あんなに酷くされてて!私はあのとき!あ、あの磔にされてる元杉神官から繋がりを感じたんですよ!?」


まだ隈の出来ている奈美にそう言われて、目をしっかり合わせる

奈美も動揺している


「それでもね・・洋介は私にこう言ったんだ「僕はどんな事があっても絶対に戻ってくるから心配せずに待っていてほしいんだ」ってね」


その時は心配させないための言葉だと思った


「でも、死んじゃってるじゃないですか!!?」

「そうですわ!」


2人の言うことももっともだ、だって私もそう思った


「そうね、そう言われて私も確か「死んでも?」って聞いたわ・・そしたら「死んでも」って返してきたのよあの子」

「えぇ・・・」

「それで、1年は何かを探さないように言ってて・・確か口を割らせようとしたんだけど失敗したわ」

「元杉神官、大事なことは隠しますもんね」

「しかし・・」

「うん、もしかしたら使徒とか神の従属神?とか言う立場で帰ってくるって意味かもしれないし、他にもセーのあの幸せそうな態度、洋介は勇者だったわけだしなにかの方法で生き返ってくるかもしれないわ」

「なっ・・え、えぇ?・・・・・・」


奈美は困惑している

それが当然だ

地球では死者は蘇らない、生き返らない

死んですぐ心肺蘇生で生き返った事例はあるが少なくとも年単位では絶対に有り得ない、火葬されているならなおさらだ

栄介お義父さんと詩乃お義母さんが生き返ってきたときなんて世界中が騒ぎになった

洋介は自分では出来ないと言っていたけど、なにかの方法があるのかもしれない

本人も数え切れないほどの神様たちの加護を授かっている、魔王討伐でそれぞれからなにかのご褒美をもらってるかもしれない


「確かに、そういう逸話はありますが」

「あるのっ!!?」

「人が死んで、神に従属して、人界に戻ってくるということならよくありますが・・・」

「あるのっ!?」

「あの暴力女・・シーダリアとルーリリアを知りませんか?」

「なんですかそれ?」


その日はベッドに入って、私たちは眠ることもなく話し続けた

きっと・・泣いていたヨーコも、殺意にあふれていた奈美も、ちょっと時間の感覚が無くなってた私も、きっともう大丈夫だ
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