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第583話 遠い勇者の永い旅路の果てに
しおりを挟む神を裏切ったせいか、人に襲われることも増えた
とは言ってもこちらに味方してくれる神様もいるし人々に手助けしてもらえることもある
世界の全てが敵になる覚悟はしていたので少しだけ拍子抜けだ
魔王にやられた傷は完全には治してもらえなかったけど、それは仕方ない
僕を治すことができる存在は神殿でも国でも最上位の人間に限られるし、僕を治すことによって他の神々に恨まれることもあるだろう
■■■はご機嫌に僕の中で仲間たちとおしゃべりしている
特に僕にプロポーズしてきた仲間とは盛り上がっている
<そこで言ったの!彼ってば「僕には■■■という婚約者がいる、裏切るような真似はできない!」ってね!>
<キャー!王様相手に痺れるぅー!!>
う、うん、皆死んで暗くなってるよりかは良いけどさ・・
皆生きてるときよりも明るいんじゃないかな?
<だって一度死んだらもう後がねぇし、なぁ>
<だな、ほらあれだ!あぁしとけばよかったこうしとけばよかったーって凄く思ったわけだよ>
<そうなったらもうあれよね、生きてる時みたいに対面を気にすることもしなくていいっていうか>
そういうものなのかな?
じゃあ■■■もなにか変わった?
<そうね、後悔してることがいっぱいあるわ・・・>
例えば?
<もっと■■■■といちゃつきたかったわ!>
は?
<公園でビール片手に散歩したり、湖で一緒に釣りなんかしたかったわ>
・・・うん、僕もしたかったよ
<じゃあしよう!今から!!>
湖何処にあるかわからないけどしよっか
<うーん!好き!■■■■!大好き!>
<私も好き!ちゅっ!>
<てめっ私の旦那だぞ!!?>
<へへっ>
<「へへっ」・・じゃねーんだよ待てやゴルァぁああああああ・・・・・・>
僕の体の中を走り回る二人、さて、今のうちに釣具を探そうか、湖が何処にあるかわからないけど
当代きっての英雄たちは皆死んだが、魂はここにあるし会話もできる
だから仲間の家族と話したりしながらゆっくり世界で死者蘇生について学ぶ
僕の身体は魔王を倒せるほどに頑丈だし、僕を倒せるような存在はなかなかいない
不意打ちにしても、毒にしても僕の仲間が幽霊の体で見に行ってくれるからすぐにわかる
しかも英霊となった仲間の友人たちも新たな仲間として手伝ってくれている
世界を救った勇者なのだから、たった一人や二人の復活ぐらい許してくれよという意見も多い・・それぐらいの褒美はこれまでにもあったそうだ
大昔の話だし、それが嘘かもしれなかったり神様にもなにかの条件があるのかもしれない
詳しく調べたいけど古い話のものは文献すら残っているか怪しい、本自体が希少で高価なものなのだから仕方ない・・・!!印刷技術!知識層!もうちょっとどうにかしてくれっ!!あと料理もっ!!!!!
<うるさいわよ■■■■>
ごめんなさい、早く皆と料理が食べたいよ
<酒とチーズが良いわ、こっちにはチーズ無いしね>
<どんな食べ物ですかね?>
<えっと山羊や牛の乳を固めたもので・・・>
まぁ、寿命が60年どころか500年や限りが無いものもいる
だったらそういう存在に話を聞けば良い
魔術師の人によると人には人の理があるように、高位の存在には高位の理があり話せなくなることもある
神にまでなってしまえば不思議と答えられないものもあるようだけどまだ神になっていないものやそういう魔導書を探せば良い
そういう世界の理なんだとか・・そうだよね、簡単に死者蘇生が成立するなら世の中は死なない人であふれるし、新たな生命体がいらない世界になる・・・かも?
いくら待っても僕の気配が強くてか魚は釣れなかったが■■■が見つけた巨大な魚を槍で狩った
良い値で売れたが味は微妙、ソースが欲しい
やはりたまに襲われるが全員撃退して、のんびりと過ごす
――――そんな旅を200年ほどして、死者蘇生の条件がわかってきた
『死んですぐ、肉体が腐らず、魂も健在であること、何より強い魂であること』が死者の蘇生の条件に最も当てはまる
思ったよりも時間がかかった、魔導書の解読や精霊言語なんて全然わからん
そもそも人界に方法があるかもわからなかった
肉体だけ破壊される場合や、魂だけ破壊されたり穢されたり、片方が駄目なだけでもこの条件は不可能になる
■■■や仲間たちは魂は今でも健在である
■■■は霊神の加護を得られるだけあって適性も素質もあったし、何の術か恩寵か魂は保護されていた
仲間たちはと言うと神々の加護を授かって戦っただけあって魂がとても強いし、全員背負って持って帰っている間に僕の加護、器の大きくなる加護で僕の中にいて健全だ
しかし死んですぐという条件には満たないし、元の肉体を全員が持ち合わせていない
ならどうすれば良いのか?
『アンデッド化』
『アンデッド以外の別の存在になる』
『超高位存在に頼る』
『肉体を錬金術によって作ってその体で生きる』
この四種類が見受けられた
アンデッドは高位アンデッドであれば理性が保てるし、人類に敵対しなくても良いそうだ
しかしそうなれるのはごくごく一部であるし、今よりも神や神官たちから狙われることになる
あまりに危険な選択肢だ
別の存在になるのもとても危険である
竜の血を浴びて竜の力を得る、人魚の肉を食って不老不死になる、悪魔の血を飲んでその悪魔が滅びるまで生き続ける、迷宮をさまよってモンスターになる、魔王の核を使って別の存在になる
これらの方法もアンデッド化と同じく危険を伴うし制約も多い
竜の血を浴びたものは年に一度は理性なく竜になって暴れたのだとか不老不死のものは病になって永劫の苦しみを味わうことになったとか、悪魔の血を飲んだものは悪魔に魂を乗っ取られたのだとかの酷い文献が残っている
これらのやり方であればアンデッド化と違って神に狙われることはない・・かも知れない
人に迷惑をかける場合には勿論討伐対象になる・・アンデッド化のように確実に狙われるわけではないし、うまく行けば『彷徨う賢者』や『彷徨う英霊』のように誰にも迷惑をかけずに不老不死となれる
神や精霊、古代巨人種といった存在は・・・まぁ駄目だった、神様たちにもルールがあるしね
抜け道や方法を探してくれるそうだけど何百年かかるか、何千年かかるかもわからない
最後の一番マシな方法が人造人間、人の体と器を作り出してそこに■■■と仲間をいれることだ
しかし『人』とは人に簡単に創り出せるようなものではない
どんなに精巧に作ったとしても『人造人間』は『人』たり得ない
元の魂が入った肉体とは違いがあるし、入ったとしてもその『人造人間の器』に身体が適合するためには・・・100に一つの可能性もない、うまく行ってギリギリ魂のこびりついた廃人となる
魔導技術が発展すれば問題はなくなっていくかもしれないがそれだって何年かかるかはわからない
「もう、無理なのかな?」
<ごめんね、本当にごめん!■■■■、愛してるわ、だから無理しないでもいいのよ
?私達のためだからって、これ以上は・・・!>
―――――皺の目立つ手
指も小指と薬指はないし傷だらけだ
もう目もボヤけてうまく見えんが、相変わらず■■■は美しいのだろう
「こふっ、なーに、最後の手段と行こうじゃないかゴホッ、ゲフッ!!」
―――200年、よく生きた
今だって襲いかかってくるものはいる
ほっといてくれとも思ったが、彼らには彼らの守るものがある
僕らが生きて人類が破滅する可能性があるなら仕方ないのかもしれない
魔王にやられた足は常に体を痛めるし、あれだけ強かった身体は見る影もなく痩せこけてしまった
仲間たちも伴侶の死や我が子の死をきっかけに昇華したり神の御許に帰ったものもいる
昇華して神々に仕えれば僕たちの助けになるかもしれないと考えて、先に逝ってしまった仲間たちは今頃どうしているだろうか?敵対だけはしたくないものだが
残ったものは生き返らなくてもいいから何でも僕たちの役に立てればと僕の力の一部になったり、負担をかけないようにと寝ていたり、外に出て斥候をしてくれたりとずっと助けてくれている
――――本当に、本当に最高の仲間達だ
もう後少し、旅路の終わりが見えてきた
荒野に佇む運命の神の廃教会
どんな結果になるかはわからないが、これが最後の希望だろう
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