上 下
570 / 618

第556話 挨拶とナンパと痴女と仲間たち

しおりを挟む

「ハルネー、紹介するぜ!こっちがエゼル姉貴とフィル姉貴だ」


洋介が連れて帰ってきた人の中に、目を引く人達がいた

一人は大きくてゴリゴリのマッチョだ、服殆ど着てない

帯刀した和服のエルフに狼、トレンチコートのようなものを着た男に腰の曲がった杖のおばあさん、それとダリア、5人と一匹は特に目を強く引く

加護を授かった人は存在感が違うらしいし彼らは確実に強い力を持っていることが見ただけでわかる


「春日井遥、洋介にはるねーちゃんって呼ばれてます」

「フィルフェリアだ、ヨウスケにはフィルと呼ばれている」


えっ喋るの?この狼

毛の長い、どこか近寄りがたい冷たさを感じる狼だと思っていたが獣人の中でも獣に近いタイプなのかな?

姉貴って言ってたし雌・・じゃない、女性で良いんだよね・・・?


「エゼルリーリャ・ノッセ・アラレウム・バイセンです、この出会いに神に感謝を」


和服のエルフさんだ、名前エゼルとバイセンしか覚えられなかった

剣、というよりも刀?いや、鞘から見るに青龍刀を長くしたような形状のものを渡してきた


「お預けします」


剣の柄を私に向かって地面とは水平に差し出してきた


「・・・・・」

「・・・・・」


え?喧嘩売られてる?いや、抜けばいいの?抜いたら殺し合い始まるとか?


「ハルネー、受け取るんだ、敵意はないって儀礼だから」

「わかった、そっちの礼儀には詳しくないからなにかしちゃったらごめんね?じゃあ私もこれ預ける」


ハルバードを収納袋から出して手渡す

以前の長柄の柄の中が空洞のものと違ってこれは芯まで金属が詰まっている

大の大人でも片手で持つのは難しいのに、ひょいと持ったエルフさん


「洋介の仲間なら信頼してますし、武器は持ってても大丈夫なので返します・・大丈夫だよね?ダリア?」

「おう!」


剣は軽いがハルバードは重量武器で、邪魔だ

交換してそれぞれが仕舞った


「こ、婚儀の申込みでしょうか?」

「違います」


何故か動揺したエルフさん・・常識が違いすぎてどこに地雷があるかわからない

洋介もヨーコもルールも、狩りは基本とたまに山を見てウズウズしているしミルミミスとダリアはこっちでいつの間にかシカやクマを狩ってきていた

もしかしたら私も「神に感謝を」って言ったり、受け取った武器は手に取らずに「大丈夫ですよ」とすぐに返したほうが良かったのかもしれない


「<歓迎したい気持ちは本物です、でもそちらの世界の常識を知らないため少し困惑しています、よければ仲良くしてくれると幸いです>」


胸に手を当て片足を引き軽く頭を下げて西洋風に大きく礼をする

わかりやすく大仰なぐらいが良い、少し魔力を込めて話した

日本式に土下座は石畳の上だとちょっと良くは映らないだろう


「<私の神チーテックにこの気持ちに嘘偽りがないことを誓い、この出会いを神に感謝します>」


多分、紳士的な対応はできたと思う

まだダリアのように酒で打ち解けるまでは行かないまでも悪くはないはずだ

エゼルリーなんとかさんは武人っぽい雰囲気があるし、と言うか侍?なんで着流しなの?


こういう時にヨーコがいれば助かるのに・・なんか影の中に女性をいれて頭をゲシゲシ踏みながらどこかに連れて行って居なくなってしまった

洋介から聞いた話ではこの3人も洋介に好意をもっているはずだ

旅の仲間で助けてからずっと一緒にいるエゼルとフィルとダリアってのは間違いなくこの3人だろう

ロムはロムでなんか私のことを敵視しているし・・ただでさえ男女とか言われる私に女の争いというか男の取り合いは難しいな、譲るつもりはないけど


「あとでお酒でも一緒に飲みましょう」

「楽しみにしてるぜ!」

「はい」

「肉も楽しみにしている」

「任せて!」


まだぎこちないかもしれないがこんなところでいいだろう

こちらも洋介が旅でお世話になったというのは洋介から聞いている

それが洋介への好意からなのか、純粋な魔王討伐のためなのか・・・それとも加護狙いのクソ貴族の仲間なのかもわかっていないから様子はしっかり見るべきだ

笑顔を取り繕って見極めないといけない・・少し嫌だな・・・女って怖い、私も女だけど


私の心中を知ってか知らずか、嫌な気持ちはすぐに吹き飛ばされることとなった


トレンチコートのようなものを着た気障ったらしい男に公衆の面前で誘われ、巨大な怪獣を洋介が出し、エゼルリーリャさんが和服っぽいものを脱いだ

白い競泳水着というのだろうか?なんで脱いだ?透けそうなんだけど?

胸は薄いがムキムキと言うほどではない、健康的ではあるがマッチョではない

しなやかな肉体で若干細い、ハルバードを持てるだけの筋力があるようにはとても思えないエルフさん

ケーリーリュさんはエルフでも胸大きかったし、ダリアも大きい方だがエルフと言えば大きいわけじゃなかったのね


なんで抜いだのかは不明だけど剣を持ってなにかした


私が見ても手を動かしたような違和感だけで、抜いたかもわからず、納刀の音と巨大な生物が裂けてやっと何をしたかわかった

重力で潰れていても高さが大きなマンションのようなサイズの巨大なクラーケンを一刀で切り裂いたのだ

フィルフェリアは凍らせることが出来たし、腰の曲がったおばあさんも超高速で飛ぶ、野球のボールみたいなスピードであっちこっちに行って杖を振っている

残像も見えるしちょっと怖い、妖怪みたいだな

何度か行った領地のドワーフさんや獣人の人達も居た・・もしもメディアでインタビューを受ければその珍しさから一夜にしてスターになれるほどのはずなのにナンパ男と言い、残像おばあちゃんと言い、存在感がありすぎて霞んでしまう

ナンパ男は変身して働いてる人もいるけど皆の邪魔をしてる

働いてるのもいるけど壁に張り付いた巨大ナメクジとかもニロンさんだよね?殺虫スプレーかけたい

洋介は彼らについて「まだましな方」と目をそらして言っていたが魔王というのを倒すのには奇抜さも必要なのだろうか?

それとも強くなるにつれて常人には計り知れない奇抜さも身につくのか?

少なくともニロンという人は自分同士で殴り合ったり、巨人に踏まれたりしていて特にやばい人だとわかった


改めて私は普通であると再確認してしてしまう


と言うかクラーケンとかサーペントとか大きなワニとか、こんなの狩ってたなら連れていきなさいよ
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

転生先は水神様の眷属様!?

お花見茶
ファンタジー
高校二年生の夏、私――弥生は子供をかばってトラックにはねられる。気がつくと、目の前には超絶イケメンが!!面食いの私にはたまりません!!その超絶イケメンは私がこれから行く世界の水の神様らしい。 ……眷属?貴方の?そんなのYESに決まってるでしょう!!え?この子達育てるの?私が?私にしか頼めない?もう、そんなに褒めたって何も出てきませんよぉ〜♪もちろんです、きちんと育ててみせましょう!!チョロいとか言うなや。 ……ところでこの子達誰ですか?え、子供!?私の!? °·✽·°·✽·°·✽·°·✽·°·✽·° ◈不定期投稿です ◈感想送ってくれると嬉しいです ◈誤字脱字あったら教えてください

異世界八険伝

AW
ファンタジー
これは単なる異世界転移小説ではない!感涙を求める人へ贈るファンタジーだ! 突然、異世界召喚された僕は、12歳銀髪碧眼の美少女勇者に。13歳のお姫様、14歳の美少女メイド、11歳のエルフっ娘……可愛い仲間たち【挿絵あり】と一緒に世界を救う旅に出る!笑いあり、感動ありの王道冒険物語をどうぞお楽しみあれ!

[完結]異世界転生したら幼女になったが 速攻で村を追い出された件について ~そしていずれ最強になる幼女~

k33
ファンタジー
初めての小説です..! ある日 主人公 マサヤがトラックに引かれ幼女で異世界転生するのだが その先には 転生者は嫌われていると知る そして別の転生者と出会い この世界はゲームの世界と知る そして、そこから 魔法専門学校に入り Aまで目指すが 果たして上がれるのか!? そして 魔王城には立ち寄った者は一人もいないと別の転生者は言うが 果たして マサヤは 魔王城に入り 魔王を倒し無事に日本に帰れるのか!?

冥界の仕事人

ひろろ
ファンタジー
冥界とは、所謂 “あの世” と呼ばれる死後の世界。 現世とは異なる不思議な世界に現れた少女、水島あおい(17)。個性的な人々との出会いや別れ、相棒オストリッチとの冥界珍道中ファンタジー この物語は仏教の世界観をモチーフとしたファンタジーになります。架空の世界となりますので、御了承下さいませ。

家族全員異世界へ転移したが、その世界で父(魔王)母(勇者)だった…らしい~妹は聖女クラスの魔力持ち!?俺はどうなんですかね?遠い目~

厘/りん
ファンタジー
ある休日、家族でお昼ご飯を食べていたらいきなり異世界へ転移した。俺(長男)カケルは日本と全く違う異世界に動揺していたが、父と母の様子がおかしかった。なぜか、やけに落ち着いている。問い詰めると、もともと父は異世界人だった(らしい)。信じられない! ☆第4回次世代ファンタジーカップ  142位でした。ありがとう御座いました。 ★Nolaノベルさん•なろうさんに編集して掲載中。

異世界で生きていく。

モネ
ファンタジー
目が覚めたら異世界。 素敵な女神様と出会い、魔力があったから選ばれた主人公。 魔法と調合スキルを使って成長していく。 小さな可愛い生き物と旅をしながら新しい世界で生きていく。 旅の中で出会う人々、訪れる土地で色々な経験をしていく。 3/8申し訳ありません。 章の編集をしました。

シャルナーク戦記~勇者は政治家になりました~

葵刹那
ファンタジー
かつては覇王フェンリルのもと、オスタリア大陸最強を誇っていたシャルナーク王国。 いつしか衰退し、現在は小国と呼ばれるまでに落ちぶれてしまった。 経理部でごく普通のサラリーマンをしていた石田勇作は、なぜかチート能力持ちの勇者に転生する。 「我がシャルナークを強国にしてほしいのだ」 国王に乞われ内務長官に就任するも・・・隣国は約3倍の国力を持つサミュエル連邦。 仲間たちと共に、ある時は政治家として政策を立案し、またある時は智将として戦場を駆け巡る。 愛する妻ナルディアと共に権謀術数が渦巻く戦乱の世をどう生き抜くのか。目指せ大陸統一!! 後に「紅鉄宰相」と呼ばれるジーク(石田勇作)の異世界英雄譚がここに始まる。 ※4月14日にHOTランキング入りさせて頂きました。ありがとうございます。  少しでもこの作品でお楽しみいただけたら嬉しいです! ※タイトルを変更しました(旧:勇者は政治家になりました)。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

処理中です...