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第526話 思わぬ遭遇

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ザウスキアの王都が落とせずに膠着状態となってしまっている

流石に大国、本気の護りともなれば戦力を集中しないと落とせない

俺たちだけ攻め込んだところでどうなる?

突破出来たとしても後ろに続く功績狙いの貴族の長男・長女共が後詰めをまともにやれるとは思えない


・・・・・あまりにも使えない


国際連合軍は魔王討伐後に一度解散し、再編成された

もともと国際連合軍は洋介さんの発案で生まれたが、当時は貴族位を継ぐことの出来ないような力の弱い貴族が中心であった

自国の戦力を割きたくなかったがゆえに『使い捨てても良い』とされる次男や三男、妾腹の子、不貞の子と言った人間が多数・・いわば口減らしであった

しかし彼らも黙って死んでいくのではない

命を懸けて――――国籍も、爵位も、連れてきた兵士の数もばらばらでも、戦ううちにどんどん頭角を現してくるようになった

従士や騎士爵程度の人間が、伯爵や侯爵の仲間に命令することもあった

敵対国の貴族で憎み合っていたはずが、いつの間にか泥の中で共に戦い合っていた

死んでいく仲間も多かったが、生き残っていったのは叩き上げの勇士となった

そうして、最後まで生き残った連合軍の人間は最終決戦で魔王軍の主軍及び幹部を複数撃破し、その間に洋介さんが息もできないほど濃い瘴気の中の魔王を討ち滅ぼした


第一期の国際連合軍は損耗も激しかったのは確かだが世界に誇れるだけの実績を残して結果的にうまくいった・・・・・が、やはり貴族も、兵士も、発足当時から比べるととにかく損耗していた


彼らを送り出した国元の貴族の当主たちは魔王軍と瘴気の圧を減らせてさぞや喜ばしかっただろう

使えないはずの「いらない人材」で最高の結果を出せたのだから・・・


しかし予言が終わらず、魔王の幹部を追う中、魔王軍の圧が無くなって一度国際連合軍は再編された


『使い捨てても良い人材』は、強い力をつけて領地に一度帰ってきた、栄誉とともに

さぞ跡継ぎは困ったことだろう

使い捨てにされても良いはずの、いらないはずの人間が力をつけて跡継ぎの座を脅かす

名誉を授かった彼らを領民は褒め称える


そうして結果的に『第二次国際連合軍』ではプライドの高い、跡継ぎ達が多く参加した

自分よりも力の弱い人間がやれたのだ、自分たちも出来る

しかもこのままでは後継者として自分の立場が危うい

そんな思いが透けて見える

幾多の戦場を駆け抜けてきた勇士ばかりの国際連合軍に対して、新たな参加者たちは新参者であるにも関わらず「我に従え」と大きく声を上げるものが多くいた


第一期の国際連合軍は勇者の仲間と国際連合に残った主力が指揮しているが、兵力が激減していた・・とは言え調子に乗った無礼な貴族共は問答無用でボコボコにした上で指揮にいれた

しかし、甘やかされて育った貴族は真正の阿呆も多く、兵を引き上げたり敵対してきた

彼らの国の神も激怒したが、連合軍がいるのは祖神の力の届かない遠い異国の地だ


愚行であっても止めるものなぞ居ない


瓦解するかに思われた国際連合軍だが、予言も、他の国への牽制も、戦後の関係もある

大きな敵を前に一応は足並みをそろえたザウスキア戦だが・・・国土の広さからも国元からさらに援軍が参加し、各個の軍を率いて別の土地で戦っているせいか、統制もとれずに使えない


任せた土地が既に略奪済み、旨味も無いし敵もいないから功績も立てられない・・・だから勝手に持ち場を離れる

食料がないと後方からの物資を横取り、各軍への予定された食料が行き届かない

勝手に略奪し、荒らすだけ荒らして現地に残すべき食料も残さず引き上げる


・・・・・敵なんじゃないかと錯覚してしまいそうだ


もちろん抗議するが、現地の彼らに機嫌を損なわれると軍ごと引き返すなどという愚行をまたやらかしかねない

彼らに言うことを聞かせられる上役が祖国から来るまでは対応しなければならない



このままではいけないのはわかっているが全体的にはうまくザウスキアに対して優勢に進められている

ひとまずは妹を勇者領地かレアナー神聖教国に送り届けることにする

妹の未来予知は神の加護のもとに行われるもので信憑性は高いが行動次第でその未来を避けることも出来る

魔族側にとってもこの能力は有用だろう


であればこそ魔族も狙ってくるかもしれない


最前線で後ろから刺されかねない状況に身を置かせるよりも一度安全地帯に連れていくことにする・・・魔族にとってもこの能力は有用であるがゆえにザウスキアにいること自体が危険だ

狙われないのならそれでも良い、どちらにしても魔族の一手潰せることになる

勇者領地までの最短距離で帰っても襲われることはない・・流石に退路が肝心だし信頼できる仲間を配置している

幾つかの利点もあるし遠回りに移動して軍の所在も確認していく、妹もそうするべきだと予言した

戦いが起こるかどうかもわからないが、何かしら有用なのだろう


―――・・・予定されていた軍の居留地に誰もいない


先程までここに人が居たかのような形跡がある

火にかけられたままの焦げた肉

欠けた剣と砥石

調合中であっただろう、ポーションの素材が机の上にそのままになっている


まるで、人だけいなくなったかのような、気味の悪さ


「臭う」

「シーダリア、方向は?」

「近い、いや、これは近すぎる・・・・・?」


警戒したアホ犬が突然、こちらに拳を振り上げた

また邪魔すんなとでも言って殴りかかってきたのか?

手のひらを前に出して受け止め・・・・


ザシュリ

「ちぃっ?!!大人しく死んでろ!カスがっ!!!」


信じられないことにシーダリアの拳を受け止めようとした手よりも前に何かが割って入って、何かが斬られた

たしかに何か斬られた音がした

俺の身体が氷り、顔にぬるりと血が付着した


「ボーっとしてんじゃねーよ!殴んぞ!!!」

「邪魔だ、アダバンタス!」


狂犬共がいきなり襲いかかってきたのかと思ったが・・・・痛みもない、この血は俺の血ではない

後ろから魔族に襲われた

俺を伝った氷が何者かの刃を遮り、逆に俺の身体の影にいた敵に攻撃したエゼル達


「油断しましたね?よくありませんよ?」

「ここはもう異界、いや、魔界だ、気を散らすな・・・たわけが」


意味がわからず、動けない俺の後ろに向かって剣を振り下ろす次女、そして長女が氷を飛ばしていく


「おぅらぁっ!!!!」

「っ!」


俺の大きな身体の周りを3姉妹と敵が戦っている

限界まで魔力を込めて、攻撃に備えるが脚を数度斬られた

振り払ってしまいたいが下手に動くことは出来ない、エゼル達を潰しかねない


「ぐっ!」


脚の筋を断たれ、膝が落ちてしまう

前に倒れ、そのまま前に一度跳び、距離をとろうとしたのだがおかしな気配がした


――すぐ近く、前方の何もない場所を殴りつける

カァァァァァン!!!


「わっわー・・良い勘してるよ」

「無事か!ガルーシャ!」


外したようだが敵の障壁を破壊することはできた

姿を表したのは女と老人、禍々しい神の加護を感じる


不味いな、異界を作り出すのなら軍の最も強みである数も関係がない


俺の警戒した上での知覚を抜けて、巨人の強化した硬い皮膚と防具を貫通して斬られた

そして、エゼルたちを相手に未だに後ろで戦闘音が聞こえる

強い魔族であっても、いつもなら3人揃えば一瞬で片がつく

ミルミミスでさえ大きく傷つけることが出来たし、生半可な魔族なんて一瞬で倒せる

なのに後ろで戦いが続いているということは、それだけの敵ということなのだ


眼の前の女も魔族、その後ろには歳を重ねた魔道士らしきものもいるが詳細は不明


ここまでの強者がまだ知らずにいたとはな・・・隠れて何もしてこなかった魔族であるがゆえに、弱い魔族の企みかとも考えていたが想定が狂った


「< ウ ォ オ オ オ オ オ オ !!!!>」


敵が目の前にいるのならこの場で叩き潰してしまえばいい
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