412 / 618
第405話 里の者
しおりを挟む英雄たちの半数はそのまま勇者の魔王討伐についていくことになった
命の恩だ
絶望しかない状況であれだけ毎日ボロボロにされて、そこから助けられて感謝しかない
ここのクソ貴族は頭が全員魔族に成り変わっていた
あの拷問クソ野郎も、まだ生きてやがる
お礼しないといけない
「これ持っていくといいよ」
「「「ありがとうございます!」」」
渡されたのは貴族の館にあった金品だ
全て無くなると領民が困るが、ヨウスケの自由にして良い分は好きにしても良いと渡してきた
そもそも捕まった俺らがマヌケで、勇者から金をもらう言われはない
ただ俺のように金が必要なため闘技大会に出たものもいた
借金ということで借り受けて急ぎ帰っていく
俺も、姉たちに付き添われて里に帰った
だが・・・・もう里はもう里ではなかった
里には誰も残っていなかった
他所の里のものに聞くとこの周囲で瘴気による病が蔓延していることから領主の兵士が全員連れて行ったそうだ
その後どうなったのか痕跡を追うと・・・何人も売り払うか殺されていた
指示した領主は魔族、来たのは正規軍、軍のものはダークエルフを売り払って臨時収入を得て、逆らう村のものは殺された
瘴気の病が流行したのだ、アンデッドになるにしても殺してバラバラにするなりまとめて聖水をかけるなりして対処したほうが良かったのだろう
姉が守ろうとした里はもう無い
作られた墓標に俺も祈りを捧げた
「我らも祈ろう」
「リリアの仇は必ずとりましょう」
「・・・・・ありがとう」
嫌な世の中だ
魔王は邪神から加護を受けて世界を破壊しようとする
勇者はそれに対抗して選ばれるか召喚される
魔王の瘴気によって人も変異し死ぬものもいれば魔族になるものも居る
ダークエルフも瘴気に耐性はある方で魔族呼ばわりしてくるものも居る
ヨウスケはレアナー様の加護を授かっているが直接戦う能力はほぼ無い
その辺の兵士ぐらいだろうか?いや若手狩人よりも弱い、下手したら村人よりも弱い
あのクソ野郎は逃げたらしい
ヨウスケも追いかけられなかった
俺たちが居たから深追いは出来なかった
ヨウスケの弱さに、そしてクソ野郎の生存に俄然やる気が出てきた
領主が魔族だったこともあり、生き残った村のものは奴隷として売られた
彼らを助けるのには金も、権力も居る
ヨウスケは奴隷反対、亜人平等、貴族上等なレアナー教の勇者
しかも大神自らが守護神とまで成った真の加護持ち
奴隷解放には賛成のはずだ
・・・・・姉のやったこともある
せめてあの醜く残った腕と首の噛み跡が治るまでは手助けをしてやろう
ヨウスケは嫁入り前だろうに、私や姉に恨み言は全く言わない
私の全身を治してもらうのにヨウスケには全身くまなく切り刻まれた
まともだったのは頭を上げさせるために掴む髪ぐらいだった
骨の近くまで溶かされた尻などもう治しようがないと思ったが・・・
加護や恩寵を授かった者は人智を超える頑健さを得る
飯を食わずとも1月問題ないものもいれば俺のように壊れない拳を持つものも居る
まぁ握るための腱も、腕の筋肉も抜き取られれば拳が無事でも意味はなかったが
里に帰るのに貰った金は全部ヨウスケに返した
もう金は必要ない
俺の力を貸す代わりに里の生き残りを助けるように尽力すると確約してもらった
レアナー様との約束だ
教国も動いてくれる
助けられた里の仲間には皆こちらに合流してもらう
里はもう外敵からも身を守れない、踏み荒らされた聖域も閉じて里として成り立たない
これだけの恩、返そうにも返しきれない
命と魂の恩は命を懸けて返さないといけない、生き残った里のものの考えも同じで皆勇者のもとで必死に戦ってくれた
戦闘に向いていないものには新たにできた国際連合軍との連絡役や情報収集に一役買ってもらう
苦しい戦いだ
だけど家族を皆殺しにされたのに、その仇敵が生きて良い筈がない
仲間の死に、臓腑が焼けるように怒りが湧き上がって寝られない日もある
里のものは皆、救われはしたが復讐が目標となって笑顔を見ることはなくなってしまった
ヨウスケ自体も力をつけていったし、彼女、いや、彼がいれば俺たちはどんな怪我も恐れることはない
いつか仇さえ殺せば、その時こそ前に進めるのかもしれないな
だけど、ヨウスケは俺達を悲しそうに見ていた
0
お気に入りに追加
114
あなたにおすすめの小説
転移少女の侵略譚!〜弱小国家の皇帝になったのでほのぼの内政しようと思っていたら隣国達が(悪い意味で)放っておいてくれないので全部滅ぼす〜
くずは
ファンタジー
暗い部屋でパソコンを立ち上げる少女が1人。
彼女の名前は山内桜(やまうち さくら)。
食べる事と旅行が好きな普通の高校一年生、16歳。
そんな彼女に今ハマっているゲームがあった。そのゲームの名は「シヴィライゼーション」。様々な種族や魔法のある異世界で石器時代から文明を作り、発展させていくゲームだ。
ある日、彼女はいつものようにゲームを始めようとして……その世界に吸い込まれてしまった。
平和主義者の彼女は楽しく内政しようとするが、魔族や侵略国家などが世界中で戦争を起こす非常に治安の悪い世界だった。桜は仲間達と楽しく旅をしながらそんな邪魔な敵を倒していったらいつのまにか世界最大国家になってしまっていた!!
ーーー毎日投稿しています!
絶対完結はさせるので安心してご覧頂けますーーー
評価、感想、ブックマークなどをして頂けると元気100倍になるので気に入ったらして頂けると幸いです。
転生してチートを手に入れました!!生まれた時から精霊王に囲まれてます…やだ
如月花恋
ファンタジー
…目の前がめっちゃ明るくなったと思ったら今度は…真っ白?
「え~…大丈夫?」
…大丈夫じゃないです
というかあなた誰?
「神。ごめんね~?合コンしてたら死んじゃってた~」
…合…コン
私の死因…神様の合コン…
…かない
「てことで…好きな所に転生していいよ!!」
好きな所…転生
じゃ異世界で
「異世界ってそんな子供みたいな…」
子供だし
小2
「まっいっか。分かった。知り合いのところ送るね」
よろです
魔法使えるところがいいな
「更に注文!?」
…神様のせいで死んだのに…
「あぁ!!分かりました!!」
やたね
「君…結構策士だな」
そう?
作戦とかは楽しいけど…
「う~ん…だったらあそこでも大丈夫かな。ちょうど人が足りないって言ってたし」
…あそこ?
「…うん。君ならやれるよ。頑張って」
…んな他人事みたいな…
「あ。爵位は結構高めだからね」
しゃくい…?
「じゃ!!」
え?
ちょ…しゃくいの説明ぃぃぃぃ!!
十年間片思いしていた幼馴染に告白したら、完膚なきまでに振られた俺が、昔イジメから助けた美少女にアプローチを受けてる。
味のないお茶
恋愛
中学三年の終わり、俺。桜井霧都(さくらいきりと)は十年間片思いしていた幼馴染。南野凛音(みなみのりんね)に告白した。
十分以上に勝算がある。と思っていたが、
「アンタを男として見たことなんか一度も無いから無理!!」
と完膚なきまでに振られた俺。
失意のまま、十年目にして初めて一人で登校すると、小学生の頃にいじめから助けた女の子。北島永久(きたじまとわ)が目の前に居た。
彼女は俺を見て涙を流しながら、今までずっと俺のことを想い続けていたと言ってきた。
そして、
「北島永久は桜井霧都くんを心から愛しています。私をあなたの彼女にしてください」
と、告白をされ、抱きしめられる。
突然の出来事に困惑する俺。
そんな俺を追撃するように、
「な、な、な、な……何してんのよアンタ……」
「………………凛音、なんでここに」
その現場を見ていたのは、朝が苦手なはずの、置いてきた幼なじみだった。
スマートシステムで異世界革命
小川悟
ファンタジー
/// 毎日19時に投稿する予定です。 ///
★☆★ システム開発の天才!異世界転移して魔法陣構築で生産チート! ★☆★
新道亘《シンドウアタル》は、自分でも気が付かないうちにボッチ人生を歩み始めていた。
それならボッチ卒業の為に、現実世界のしがらみを全て捨て、新たな人生を歩もうとしたら、異世界女神と事故で現実世界のすべてを捨て、やり直すことになってしまった。
異世界に行くために、新たなスキルを神々と作ったら、とんでもなく生産チートなスキルが出来上がる。
スマフォのような便利なスキルで異世界に生産革命を起こします!
序章(全5話)異世界転移までの神々とのお話しです
第1章(全12話+1話)転生した場所での検証と訓練
第2章(全13話+1話)滞在先の街と出会い
第3章(全44話+4話)遺産活用と結婚
第4章(全17話)ダンジョン探索
第5章(執筆中)公的ギルド?
※第3章以降は少し内容が過激になってきます。
上記はあくまで予定です。
カクヨムでも投稿しています。
捨て子の僕が公爵家の跡取り⁉~喋る聖剣とモフモフに助けられて波乱の人生を生きてます~
伽羅
ファンタジー
物心がついた頃から孤児院で育った僕は高熱を出して寝込んだ後で自分が転生者だと思い出した。そして10歳の時に孤児院で火事に遭遇する。もう駄目だ! と思った時に助けてくれたのは、不思議な聖剣だった。その聖剣が言うにはどうやら僕は公爵家の跡取りらしい。孤児院を逃げ出した僕は聖剣とモフモフに助けられながら生家を目指す。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる