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第403話 姉との離別
しおりを挟む俺は姉と部屋で2人にされた
なにかの魔道具で障壁が姉の前に張られ、少女は血を流しながらクソ野郎のもとに向かっていってドアを閉めた
不味い
姉が少女の首に噛みつけたのは姉が結界の神の加護を授かっているからだ
今も部屋に俺と姉の間に張られているが・・・役に立つとは思えない
改めて見る姉は、変わってしまっていた
口元の血、白目をむいて、頬が痩せて肌は死者のそれだ
こんなになっても、私に噛みつくことはなかった
こんなになっても、俺は姉に生きてもらいたい
レアナーの神は愛や結婚、略奪婚を主とし子供を護る
しかし邪教徒と賊には一切のためらいもなく襲いかかる、それはアンデッド相手にもそうだ・・
姉が数秒かけて魔法で区切られた壁をくぐり抜けて近づいてきた
おぼつかない足取りで、まっすぐこちらに
俺はまだ口と目しか治っていない
身体は動かせない
すぅっと血に濡れた手が向かってくる
「こも うだ を うだっ で ぁ げ る」
冷たい手で頭を撫でられ、声にならない声で告げられ、いつもと変わらぬ子守唄を歌ってくれる
本当に本当に小さな声で、いつものように
まだ私と2人の時は意識を保てている、小さな声でならまだ声は出せるようだ
ドアの外では戦闘音が聞こえる、だけど、今はこのほんの小さな子守唄を聞いていたい
最後の、子守唄だ
だめだ、死んでほしくない
おねーちゃんが居なくなってしまうなんて耐えられない
「・・・・・・・・・・・ごめ ね もう うだ ぃな や」
喉がつっかえるように歌が止まった
「おねーちゃん・・まだ、どうにか出来ないかな?」
「ねぇ リア、やぐぞく してほじい の」
「約束したらおねーちゃんと暮らせる?」
少し困ったように固まったおねーちゃん
俺だって無理だってわかってる、だけど言わずには、願わずにはいられない
「い でも いっ しょ よ」
「おねーちゃん、大好き、愛してる、お願い、逝かないで」
「ごめ んね わだ も だい すぎ よ」
いつものようにおでこを合わして、でも約束はしてくれなかった
キィイイ
「シャアアアアアアアアアア!!!!!」
「凄いな、ここまで耐えられるなんて」
「だめぇっ!!」
ドアが開き、レアナー教の女の子に向かっていったおねーちゃん
だけど、おねーちゃんは一歩動くと動かなくなった
「まだ意識があるんですね」
<すごいですぅ・・よーすけ、早く人のまま逝かせてあげてください>
「おねがいしますレアナー様!姉を、おねーちゃんを助けてください!!」
<それは、もう無理ですぅ、今ならまだ彼女を救えますぅ、よーすけ、早くやるですぅ>
神が言うのなら無理なのだろう、だけど、もう少しだけ、もうほんの少しだけ一緒にいたい
「俺の全部を上げるから、奴隷になっても良い、だから、だからおねーちゃんを」
レアナー様の向こうで詠唱していた少女が杖を姉に向けた
光が姉を包み、姉の身体は崩れ落ち
<ありがとうございます、レアナー様>
いつもの、優しそうな姉の姿がそこにはあった
<時間はないですぅ、お別れをするですぅ>
<はい・・・シーダリア>
「おねーちゃん・・」
<ここを出たら貴女は幸せに生きなさい、私はいつでも貴女と一緒よ・・>
「おねーちゃんが居ないと生きていけない」
<貴女は大丈夫よ、だって私の自慢の妹だからね・・・ちゃんと生きるのよ?お願い約束して、時間がないの>
「・・・・だって、だってさぁ・・・・・・・ごめん、約束する」
<うん、良い子、あぁ私の可愛いダリア>
「おねーちゃん!俺、頑張るから!頑張って生きるから!!」
光の粒となって消えていく姉はレアナー様の手のひらに集まっていった
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