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第321話 関羽とタヌカ

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矛、ハルバードがいきなり弾け飛んでいって母上を傷つけてしまった

母上が盾を出していたおかげで逸れたが当たっていれば致命傷だったかもしれない

怒りで目が眩みそうだが起こってしまったことは仕方がない冷静にタヌカを追い詰める


素手の方がこの人質の中では小回りがきいて良い

タヌカといえば100年以上前に魔王を相手に戦った勇者だ

その系譜ということは加護を受けた者の子孫であるのだろう

何処から出したのか袋から武器を出して切りつけられるが問題はない


「ふんっ!!」

「ぐっぎぃいいい、きかん!効かんなぁ!!!」


逃げ腰で斬られたところではじけば良い!

太腿と肺、陥没させるつもりで打ち込んだ

肉を潰し、骨も幾つか割ったはずだがそのまま走っている


レアナー教の強者はこれだから怖い


腹を打ち抜く気で殴ってもすぐに治る

常人であれば、いや、戦場にいる兵であってもここまで傷つかないということはない


それにしてもあのハルバードを飛ばしたあれは魔法か?

いや・・・詠唱はしていなかった、何かしらの魔導具か武具であろう

一応相手も投げ道具に見えない攻撃は黒い人型を避けて攻撃している

なにか理由があるのか?


「どぉしたどぉしたぁぁ!そんなもんかぁっ!!!」


気炎は落ちないタヌカだが何発も肉を打ち潰したのは効いているようだ

動きが治るまでの間鈍る、今の間に全身を殴り砕く

よく動くが逃してしまうと厄介になりかねない

逃さないように掴むのだが黒い布地がちぎれてしまう

ダンジョンの壁を蹴り砕くほどの威力を持ってして一撃必倒を狙う

やつの眉間に石が跳ねて傷がつく

肩を完全に潰すつもりだったのだがなかなか当たらん

短剣で切り払ってくるが手首を叩き落とす


「ぐぁっ!!?」


手応えあり、折った!

すぐに胸ぐらをしっかりつかんだが身体をのけぞるよう縦に回転して下がるタヌカ

布は千切れ、縦回転と同時に光る何かが身体を引っ掻いた


「見えた、糸だなそれは」

「はぁっはぁっ!!さす、流石だな!!!」


壁を壊した粉塵によって僅かに見えた

先程の某のハルバードが弾け飛んだのはこれが原因か

頭から血を流すタヌカだがグギパキと折れた手首から嫌な音がする

右手は剣、左手は飛び礫と糸、そしてアンデッドのように傷つかぬ身体


酷く折った骨がもう元通り、なるほど、厄介な相手だ


物理攻撃が無効ならロムが居ればとも思うが炎は使えぬ、ミーキュにやらせたいところだが父上が何処に居るかわからんし人質が多い現状では無理だ


・・・・・頭を潰すのはやりすぎかもしれん


レアナー教国と我等が領地との関係もある

だが、このままでは大恩ある父上が虜囚となったままとなる

覚悟を決め――


「ちぇりあ!!」

「ぬぅ!?この外道がっ!!!ぐっ!?」


周りの黒い人型を避けて戦っていたのにその人型をこちらに投げてきた

頭から落ちるのは不味い

飛んでくる人型を受け止めると同時に刀を振るわれた

片腕に人型、片腕で刀を受けた

体重をかけて押し斬ろうとしてきているようだが甘い、こここそが勝敗を決する時!!


「ぐぁっ!!!??」


背骨を折るつもりで蹴りを入れた

この関羽の貫目を知らぬからこそタヌカは攻め時を見誤ったのだろう

タヌカのあまりに軽い体重、仕留められたか?

ミーキュたちと距離を取れたのも良い


「降参するか?某もレアナー教国とこれ以上事を荒立てたくはない」

「・・・・・」


崩れかけた壁に凭れ掛かるタヌカ

足を伸ばし、完全に背を預けている

内蔵を割った感触はあった、意識はないのかもしれない


「これ以上やるというのなら命の保証はない」

「・・・・へっ」


頭から滴り落ちる血液、血に濡れてもその目はまだ死んではいなかった


キュルッ


左手が振られ人型が数体飛んできた

最後のあがきか、見事!!

黒い塊の1人を受け止め、その場におろ

ドドスッ!ガッ!


「っ!!?」

「悪いな」
「俺達は」
「1人じゃない」


腕と背に棒状のなにかを刺され、頭を金棒で殴られた

歪む視界の中1人蹴り飛ばす


「大丈夫サトゥ?」
「・・・・・」
「寝てろ、後は俺たちに任せろ」

「悪いな関羽、こいつは一騎打ちで勝ちたかったみたいだけどこっちは仕事なんだわ」


同じような顔、同じような体つきで目の前に4人いる、兄弟か?

腕と背の一部に感覚がない、毒か


「構わん、関羽・ヴァン・元杉だ」

「スズキ・タヌカだ」
「俺はハナコ・タヌカ」
「オオサカ・タヌカだ、俺たちは兄弟でレアナー教国で働いててな、あんたと戦えるなんて光栄だよ」


ちらりとミーキュを見ると向こうにも1人いる

不味い、まだ小奴らの兄弟や仲間が隠れている可能性もある

だが


「ミーキュ!!!!」

「なにっ!?」


部屋の壁際、それも角に4人いる現状、ミーキュの魔法でどうにか出来るはずだ

波のように壁が揺らいで壁が迫ってくる

タヌカ達は某の蹴りで倒れたタヌカの1人を仕留められないようにその場に居るしか無い

母上方には申し訳ないがこの者らが向こうに行くほうが危険と判断した

壁ごと蠢き、分断された小部屋が出来上がった


「さっさと貴殿らを倒して向こうに合流せねばな」


毒の具合はわからぬがこの関羽、負ける気はない
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