271 / 618
第267話 遥と黒葉の悪女疑い
しおりを挟む「なぁ、あの母上候補、どう思った?」
「黒葉様な・・・・・聞いた話とは全然違っていたし、よくわからん」
今までのお父様の婚約者、我々にとってのお母様候補の情報といえば胸のでかい女と踊り子のような女だ
お父様がそもそも魔王を倒そうとしたのはお父様の実の父と母を生き返らせるためだ
だからこちらに無理をして残る必要はない
魔王を倒し、魔王の核か魔王の結晶体が手に入ればアオキチキューに帰ることも出来る
お父様は魔王討伐の際に何も言わずにいなくなったのは魔王の核を使ったからかもしれない
大きな核なら数回は転移出来るだろうしこれまでの魔王の中で最強の存在だったんだ、さぞ大きかったのだろう
一度故郷に帰って・・それから向こうで騙されでもしたんじゃないか?
これまで酒も女も全く興味のなかったお父様だがとんでもない魔力と多くの加護を授かっているし性格も魅力的な人だ
言い寄られるもの当然だろう
けど身持ちの固いお父様ならいきなりそんなことをするのも考えにくい
だから同郷の女に騙されたのか・・それとも強制での結婚辺りが妥当だろう
こちらで好きな女の話をしても「いない」って言っていたし、ザウスキアでもレアナー教国でも、どこの国でもあれだけ貴族共に結婚を勧められていても断っていた
なのにこんなにも短期間で婚約者が2人もできているのはおかしい
結婚や婚姻をすればそれだけ加護の力が分け与えられる
魔王討伐のためにはお父様には力の成長が必要だった
成長し続けるお父様の力は人間の枠を大きく超えてしまった
一時期は身体が透け、精霊に近くなって身体を起こすことも出来ないほどに危険だった
だから名をつけてもらって、その力を分け与えてもらった
途中、養子よりも結婚したいという子供もいた
養子よりも結婚のほうが力を分け与える量が増える
だけどそれをやると世界各国の貴族が我も我もとしつこくしてくるのは明らかであった
何もなしでも「加護を授かった勇者」は国王よりも上かそれに準じるほどの権力を持つのは常識だ
貴族共による結婚や養子を取らせようという行為はあの手この手ととんでもないものであった
お父様は幽霊やアンデッドは怖がらないが夜の独り寝を怖がる事がある
深夜に安全な城内で目を覚ますと天井から人が這い出てきて追い回されたことがあるらしい
うん、誰でも怖いと思う
力が成長して器は少しずつ大きくなり、身体が耐えられなくなる前に領地に戻ってくるお父様
その度に名とともに力を分け与えてもらえた
ヨーコルノリア女王陛下も元々は形式上の結婚だったのにいつの間にか膨大な魔力を持っているのがわかった
貴族共はそれを知って人を送り込んできて「しっかり力を分け与えた養子にして我が領地に返せ」なんていう命令をしてくる
断れば食料が運送が止められるなど、ふざけていた
ここの領民の殆どは元難民だし家族や国が無くなった人だからと「返せ」何ていう馬鹿貴族の要求はお父様がきっぱりと断っていたし食料はお父様が働いて別から買っていた
貴族の言い分も少しは理解できる
人が集まり、その代表となるものが居る
集団を導き、護るためにはどんな方法も取らなければならない
貴族もこの世界に生き、領民を、自分を、国を護らねばならない
頼むだけで領地や自分の安全が手に入るのならやるだろう
難民たちで出来たこの領地だって新たに来る難民には頭を悩ませることはあるし排斥しないといけないこともある
難民を装った賊も来るし、倫理観もなくなった「奪うことが当たり前となった者」も居る
いくら助けようとしても助けるに値しないものもいる、だからどうしても犠牲となるものも出てくるのだ、全てを助けることなど出来なかった
全てを助けようとすれば、どこかで切り捨てざるを得ない者が出てしまう
出来る限りのものは救えたと思う
難民の中でも「殺してでも奪う」選択肢をしたもの中でも仕方ないと後悔しているものだけではない
殺して奪うことに快楽を得るようなものは切り捨てる必要があるのだ
酷い世の中だ、こんな時代だからどうしようもないものも居るがそういったものは強制労働を受け入れないといけない
意味のない口減らしだけはしないと決めている、ただ皆の食べる食い物が少し不味くなるだけだ
難民の選定は嫌なものでもやるしか無い、必要だからやるのだ
1人の人間ではなく、この領地の代表の一員となったからこそ集団の代表として全体を考えなければならなくなった
難民に混じってやけに身なりの良いやつが居ると思ったら他領や他国の貴族の子だって居る
名付けは必ずお父様が行わないといけないのでそのまま名前をつけてもらおうとしたのだろう、あわよくばと結婚を狙っているやつもいた
「あれが母上と認められますか?」
「わからん、いい噂もあまりないが・・・とにかく様子を見ようではないか?」
「私ははんたーい、どうせ愛の無い政略結婚でしょう?引きはがしちゃおうよ!パパのためになるって!」
「しかしそれはなぁ」
お父様は魔力の多さからアオキチキューのニホンで貴族にでも勧められたか強制されたといった可能性もある
貴族といった集団を取りまとめる代表は自国や領地、領民のために利となる行動を取る生き物だ
きっと向こうの貴族か親族あたりが・・・・なんて想像は容易につく
お父様は向こうの世界では一般市民って言っていた
この世界で生まれる『勇者』も召喚されて加護を授かれば地位は高くなる
だが元の地位はわからない
奴隷であったり、平民であったり、農民であったり、商人であったり
召喚されれば元の出身領地には家族がいる事が多い
故に結婚の相手を親や領主、王が勝手に決めることもある
それが貴族の、集団の代表の在り方だからだ
黒葉と春日井がもしも元々お父様と好き合っていたのだとしたとしたらこちらの世界の人間に干渉される前に邪魔されないように結婚までしていたはずだ
養子よりも結婚の効果は大きい
まだ結婚していないという・・・向こうの貴族は何を考えていたんだろうか?相性でも見極めようとしたのか?
春日井遥と黒葉奈美への評価はわかれている
こちらでもたまに話していた「ハルネーチャン」は春日井遥だ
だからこそ「春日井遥は信用できる」というものもいたが逆に婚期を逃したような年増女が婚約で止まっているということは無理やり離婚でもさせられた後にあてがわれたのではないかという意見もある
魔力の乏しいアオキチキューの人間であるにも関わらず婚姻して大神官という高位神官の地位を与えた婚約者、黒葉奈美の方がお父様に信用されているのではないか?という意見もある
僅か半年もせずに治癒魔法を使いこなすのは難しいはずだが大神官である
信頼がされているはずだ、レアナー様にも、お父様にも
見極めないといけない
領地の代表として、お父様の子供として
我らがお父様に見合った婚約者なのかどうかを
0
お気に入りに追加
112
あなたにおすすめの小説
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
もふもふ大好き家族が聖女召喚に巻き込まれる~時空神様からの気まぐれギフト・スキル『ルーム』で家族と愛犬守ります~
鐘ケ江 しのぶ
ファンタジー
第15回ファンタジー大賞、奨励賞頂きました。
投票していただいた皆さん、ありがとうございます。
励みになりましたので、感想欄は受け付けのままにします。基本的には返信しませんので、ご了承ください。
「あんたいいかげんにせんねっ」
異世界にある大国ディレナスの王子が聖女召喚を行った。呼ばれたのは聖女の称号をもつ華憐と、派手な母親と、華憐の弟と妹。テンプレートのように巻き込まれたのは、聖女華憐に散々迷惑をかけられてきた、水澤一家。
ディレナスの大臣の1人が申し訳ないからと、世話をしてくれるが、絶対にあの華憐が何かやらかすに決まっている。一番の被害者である水澤家長女優衣には、新種のスキルが異世界転移特典のようにあった。『ルーム』だ。
一緒に巻き込まれた両親と弟にもそれぞれスキルがあるが、優衣のスキルだけ異質に思えた。だが、当人はこれでどうにかして、家族と溺愛している愛犬花を守れないかと思う。
まずは、聖女となった華憐から逃げることだ。
聖女召喚に巻き込まれた4人家族+愛犬の、のんびりで、もふもふな生活のつもりが……………
ゆるっと設定、方言がちらほら出ますので、読みにくい解釈しにくい箇所があるかと思いますが、ご了承頂けたら幸いです。
田舎貴族の魔道具開発
宮古 そら
ファンタジー
【カクヨム、小説家になろうにも投稿中】
田舎男爵家の三男に生まれたマティアスがあらゆる魔道具を作り出す物語。
生まれつき魔力の少ないマティアスは魔道具を通して生活を便利にしたかった。
趣味で魔道具を作っていたら、平民から貴族、魔法界の権威から闇組織の人間まであらゆる人に注目される存在に!?
継母の心得
トール
恋愛
【本編第一部完結済、2023/10〜第二部スタート ☆書籍化 2024/11/22ノベル5巻、コミックス1巻同時刊行予定☆】
※継母というテーマですが、ドロドロではありません。ほっこり可愛いを中心に展開されるお話ですので、ドロドロ重い、が苦手の方にもお読みいただけます。
山崎 美咲(35)は、癌治療で子供の作れない身体となった。生涯独身だと諦めていたが、やはり子供は欲しかったとじわじわ後悔が募っていく。
治療の甲斐なくこの世を去った美咲が目を覚ますと、なんと生前読んでいたマンガの世界に転生していた。
不遇な幼少期を過ごした主人公が、ライバルである皇太子とヒロインを巡り争い、最後は見事ヒロインを射止めるというテンプレもののマンガ。その不遇な幼少期で主人公を虐待する悪辣な継母がまさかの私!?
前世の記憶を取り戻したのは、主人公の父親との結婚式前日だった!
突然3才児の母親になった主人公が、良い継母になれるよう子育てに奮闘していたら、いつの間にか父子に溺愛されて……。
オタクの知識を使って、子育て頑張ります!!
子育てに関する道具が揃っていない世界で、玩具や食器、子供用品を作り出していく、オタクが行う異世界育児ファンタジー開幕です!
番外編は10/7〜別ページに移動いたしました。
趣味を極めて自由に生きろ! ただし、神々は愛し子に異世界改革をお望みです
紫南
ファンタジー
魔法が衰退し、魔導具の補助なしに扱うことが出来なくなった世界。
公爵家の第二子として生まれたフィルズは、幼い頃から断片的に前世の記憶を夢で見ていた。
そのため、精神的にも早熟で、正妻とフィルズの母である第二夫人との折り合いの悪さに辟易する毎日。
ストレス解消のため、趣味だったパズル、プラモなどなど、細かい工作がしたいと、密かな不満が募っていく。
そこで、変身セットで身分を隠して活動開始。
自立心が高く、早々に冒険者の身分を手に入れ、コソコソと独自の魔導具を開発して、日々の暮らしに便利さを追加していく。
そんな中、この世界の神々から使命を与えられてーーー?
口は悪いが、見た目は母親似の美少女!?
ハイスペックな少年が世界を変えていく!
異世界改革ファンタジー!
息抜きに始めた作品です。
みなさんも息抜きにどうぞ◎
肩肘張らずに気楽に楽しんでほしい作品です!
【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
転生しても実家を追い出されたので、今度は自分の意志で生きていきます
藤なごみ
ファンタジー
※コミカライズスタートしました!
2024年10月下旬にコミック第一巻刊行予定です
2023年9月21日に第一巻、2024年3月21日に第二巻が発売されました
2024年8月中旬第三巻刊行予定です
ある少年は、母親よりネグレクトを受けていた上に住んでいたアパートを追い出されてしまった。
高校進学も出来ずにいたとあるバイト帰りに、酔っ払いに駅のホームから突き飛ばされてしまい、電車にひかれて死んでしまった。
しかしながら再び目を覚ました少年は、見た事もない異世界で赤子として新たに生をうけていた。
だが、赤子ながらに周囲の話を聞く内に、この世界の自分も幼い内に追い出されてしまう事に気づいてしまった。
そんな中、突然見知らぬ金髪の幼女が連れてこられ、一緒に部屋で育てられる事に。
幼女の事を妹として接しながら、この子も一緒に追い出されてしまうことが分かった。
幼い二人で来たる追い出される日に備えます。
基本はお兄ちゃんと妹ちゃんを中心としたストーリーです
カクヨム様と小説家になろう様にも投稿しています
2023/08/30
題名を以下に変更しました
「転生しても実家を追い出されたので、今度は自分の意志で生きていきたいと思います」→「転生しても実家を追い出されたので、今度は自分の意志で生きていきます」
書籍化が決定しました
2023/09/01
アルファポリス社様より9月中旬に刊行予定となります
2023/09/06
アルファポリス様より、9月19日に出荷されます
呱々唄七つ先生の素晴らしいイラストとなっております
2024/3/21
アルファポリス様より第二巻が発売されました
2024/4/24
コミカライズスタートしました
2024/8/12
アルファポリス様から第三巻が八月中旬に刊行予定です
グラティールの公爵令嬢
てるゆーぬ(旧名:てるゆ)
ファンタジー
ファンタジーランキング1位を達成しました!女主人公のゲーム異世界転生(主人公は恋愛しません)
ゲーム知識でレアアイテムをゲットしてチート無双、ざまぁ要素、島でスローライフなど、やりたい放題の異世界ライフを楽しむ。
苦戦展開ナシ。ほのぼのストーリーでストレスフリー。
錬金術要素アリ。クラフトチートで、ものづくりを楽しみます。
グルメ要素アリ。お酒、魔物肉、サバイバル飯など充実。
上述の通り、主人公は恋愛しません。途中、婚約されるシーンがありますが婚約破棄に持ち込みます。主人公のルチルは生涯にわたって独身を貫くストーリーです。
広大な異世界ワールドを旅する物語です。冒険にも出ますし、海を渡ったりもします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる