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第117話 神聖決闘

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決闘には決まり事がある

素手、武器あり、防具あり、寸止め、どちらかの死亡など生死を含んだ決まりごと

そして賭けるものの存在だ


「俺は貴様に嫁取りの決闘を申し込む」

「わかった」


舌打ちをしそうになった

1対1の決闘なら黒葉を巻き込むことはない


嫁取りの決闘、男女の恋愛のもつれなどで起きる決闘の1つだ

昔、加護を持った者同士が同じ女性をかけて争った

最終的には国家間の戦争にまで発展したことで加護を与えた神同士が怒り「他人に迷惑をかけるな」という意思のもとに決められた当事者のみで行われる決闘だ


嫁取りの決闘は嫁の意思が重視される決闘である


嫁取りの決闘を申し込んだ側が勝ったとしても対象となる嫁や婿には夫婦にならなければいけないという強制力はない

決闘に際して嫁取りの嫁とされる存在は攻撃ができる

だがが決闘を申し込んできたものからの攻撃は無効化される

決闘は取り合う2人を中心として、決闘中には余人は入れなくなる

この戦闘に参加できるのは申し込まれた婚姻の関係者だけだ


僕の場合はるねーちゃんと黒葉が当てはまるだろう


このオークの目的は分からないが黒葉を巻き込んだまま決闘することに意味があるのか?

いま、この瞬間にでも黒葉を握りつぶされれば取り返しがつかない

決闘さえ始まれば黒葉は戦闘に参加できるが申し込んできたオークの攻撃によってダメージを受けなくなる




決闘の申し出を受けたことによりルールも周りにいたオークも人も近づけなくなった


「いくぞっ」

「黒葉を離せっ!!」

「そんな決まりは無い!これで俺が魔王になる!!我が神チーテックよ!オークを護るがため、この槍を振るう!」


オークは黒葉を握ったまま体にまだくっついているエマンス神官と思われるかわを脱げ捨て、更に大きくなった

オークとは思えないほど立派な鎧、加護を感じる槍、その身から普通のオークなど比較にならない力を感じる

ハイオーク、もしくはオーク・チャンピオンといった上位種の威圧感だ


「グフフフ!これで邪魔は入らぬ!!!」


僕も自らに可能な限り限界まで強化魔法をかけ、魔法で出せる鎧に兜、小手、魔道具を身につける

武器は片手に愛用の詠唱のいらない杖を、片手に聖剣を握る

完全武装とはいかないが今できる最高の装備である


「まぁまて勇者よ、貴様に良い取引がある」


剣を構えたまま聞いてみる


「俺はお前が持つものがほしい、代わりにこの娘を無事に返して決闘も敗北を認めてやってもいい」

「どういうこと?」

「まずこの娘を俺は傷つけられないわけではない、道具を使えばいくらでも傷つけることができる」


オークは黒葉の持つ手を揺らして言ってくる

癇に障るオークだ、剣を握る手に力が入ってしまう

これまで見た中で最も知性が高いオークだし、戦神の一柱チーテックの加護はきっと本物だろう

神殿でエマンス神官と会ったときは魔物だとは全く気が付かなかった


「欲しいものはなに?」

「お前が持っている魔王の結晶体をよこせ」

「持ってないけど?」

「グフフフ、お前が持っていることは知っている、この娘ともう1人は異なる世界から来たそうだな!」

「持ってはいないけど、一緒に来たのはそうだね」

「ということは持ってるんだろう!?魔王の結晶体、それか魔王の核を!!」


こいつは何を言ってるんだろう?グフグフと嬉しそうに言ってるオークだが僕には心当たりすら無い


歴代勇者の中で地球に帰還した数名は魔王の結晶体を使った事もあったはず

ということは僕がそれを持って地球と行き来してると考えたのかな?だけど


「もってない」

「ならば、なぜこの世界に来れている?」

「僕は勇者だけどレアナー様の加護を得た神官でもある、魔力には自信がある」

「・・・・・仕方ない、それならそれで邪教徒から奪いしこいつを使おう!!」


趣味の悪い首飾りを鎧の上に取り出し、オークが猛然と襲いかかってきた


「これは強き加護を持つものの血液を結晶にする!わかるか!お前を魔王の結晶体の代わりにする!!楽に死んでくれるなよ!!!」




迫る槍を切り逸し、半身で鎧を削られながら杖を片手に【清浄化】をぶち込む

瘴気の領域で生きる魔物は【清浄化】を嫌うが人間には効果がない

【清浄化】の光はオークの体に直撃した

光に紛れて脇の下から踏み込み、腕を斬り落とそうと聖剣を振り下ろす


ギィンッ!!


槍で薙ぎ払われたので聖剣と杖で受ける

直撃は免れたが僕の肩を少し切られた

からだから落ちる血が石のように固まって落ちていく


「甘いな、俺は大いなる戦神、チーテック様の加護を持つ、瘴気がなくても問題なぞない!」


素早く踏み込まれ頭上から槍が叩き落される

聖剣と杖の両手で受け流し、聖剣で首をつこうとして黒葉を盾にされる


「元杉、神官・・・?」

「今助けるから」

「できるものならやってみるがいい!」


一瞬の油断で僕は蹴り飛ばされてしまった

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