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#92 手軽に作れるナポリタン
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「今日は何を作るんですか?」
「今日はパスタを作りますよ。 お客様もいる事ですし、手早く作っていきましょう」
ディアナも特に好き嫌いは無いとは言っていたが、あまり珍しいものを食べさせてもあれかと思ったシュージは、この世界でも馴染み深いパスタを作ることにした。
ただ、この世界ではあまりパスタの種類が多くなく、何気に今から作るものも、まだこちらでは見たことがないものだ。
「とりあえずパスタを茹でておいて、こちらのピーマンと玉ねぎとソーセージを切っていきましょう」
まずは具材を食べやすいサイズ…… ピーマンは細切り、玉ねぎは薄切り、ソーセージは1センチ幅くらいに切り分けていく。
そして、フライパンに油を敷き、そこへ今切ったものを投入して炒める。
ある程度具材に火が通ったら、具材をフライパンの端に寄せて、ケチャップと中濃ソース、あとは刻んだニンニクも少し入れ、ソースが煮立ってきたら具材と絡めていく。
「パスタ茹で上がりました」
「ありがとうございます、ハンスさん」
その頃にはパスタも茹で上がったので、そのパスタをフライパンに入れてしっかり絡めたら、簡単に作れるナポリタンの完成だ。
「おぉ、ミートソースのパスタと似ていますね」
「トマトを使ったソースというのは似てますけど、結構これが違うんですよね」
完成したナポリタンを皿に盛り付けて食堂に運ぶと、そこにはディアナが大人しく座っていた。
その周りにはジルバートと何人かのメンバーも座っている。
「いや~、久しぶりやねディアナ~」
「……元気?」
「ああ、普通に元気してたよ」
「お主は何も変わっとらんの」
「エルフだからね。 5年やそこらじゃ何も変わらないよ」
どうやら、ジルバート以外にも旧知のメンバーがいるようだった。
「お待たせしました」
「ああ、ありがとう。 君はシュージという名前だそうだね?」
「はい、シュージと申します。 あまり今回は手の込んだ料理ではありませんが、どうぞ」
シュージがそう言ってナポリタンを渡すと、ディアナは素直にそれを受け取り、フォークで上品に口に運んでいった。
「んんっ!? お、美味しいっ! とても好みの味だよ」
「これはナポリタンというパスタ料理の一つです」
「このソースは恐らくトマトが原料だと思うが、なんだか不思議な風味や味がするね」
「今回使ったケチャップという調味料は僕のお手製で、ナポリタンに合うような作り方をしましたから」
ケチャップに関しては、ケットシー商会から最近発売はされたものの、まだ一種類しか販売されておらず、そっちはナポリタンに入れるにはちょっと合わないのだ。
ケチャップ一つとっても、甘みが強かったり、塩味が強かったり、スパイスが効いたものなどもあって、料理によって使い分けるのが上手い使い方だったりする。
「最近、食事を摂ることを忘れる日もあったけど、これぐらい美味しいものなら毎日毎食食べたいよ」
「そう言ってもらえると嬉しいですねぇ」
割と手早く作ったナポリタンだったが、ディアナの嗜好にかなり刺さったようで、かなり早いペースで食べてくれた。
「ふぅ、ごちそうさま。 戦闘以外で満足感を得たのは久しぶりだよ」
「是非そのままでいてくれ」
「ジル、ディアナとやるならどこかの無人島にでも行ってくれ。 また壊されたらたまったもんじゃない」
「前も前でまだ出来て一年も経ってない建物壊されたからね~」
「……凄かった」
「以前と比べて人も増えましたからね」
「えぇ…… やっぱりやってくれないの……?」
「何でそこまで俺とやりたいんだ…… ドラゴンでも狩りに行けばいいだろう」
「それは……」
「……また何かしたのかお前?」
「うっ…… そのぉ…… 人里を襲っていたドラゴンとやり合ってたら、豊かな山一つ荒地に変えちゃって…… ギルド本部と色んな国から依頼以外でのAランク以上の魔物との戦闘禁止されちゃった……」
「はぁ…… お前は本当に……」
「だ、だから、人とやるしかないの!」
「我慢できないのか?」
「もう無理! 本当はさっきジルバートを見た時、斬りかかろうか迷ったんだよ!?」
「頭おかしいんじゃないかお前」
どうやらディアナ本人的には、満足のいく戦闘ができないというのはかなり深刻な問題らしく、段々と涙目になってきていた。
「ジンバさん、以前はどんな感じで建物壊れちゃったんですか?」
「最初は剣だけの戦いで、それだけでも訓練場の壁がズタズタになるぐらいの余波があったんじゃが、ディアナが魔法を使い始めてからとんでもないことになったの」
「なるほど。 あ、そういえばジンバさん、前掃除した時に魔力封じの枷みたいなの作ってませんでした?」
「ああ、あれは罪人用に国やら貴族から作ってくれと依頼されてたものじゃな」
「もし全力戦闘をするのが問題なら、ディアナさんにそれ着けてもらって剣オンリーで戦ったりすれば、熱くなって暴走みたいなことにはならないんじゃないですか?」
「確かにの。 罪人用じゃから、魔法を使えない状態なら壊せんじゃろうし」
「それを着ければ戦ってくれるのかい!?」
「む…… 確かに、こいつから魔法を取れば、まだ俺がそこまで怪我はせず無力化はできるか……」
「着ける! なんなら弱体化のデバフとかも付けていいよ!」
「そこまでは良いだろう。 俺の鍛錬にもならん」
「えっ、も、もしかしてジルバートも、本当は私と戦りたかったの……♡?」
「まぁ、俺だってたまには全力で鍛錬をしたい時もある。 ……そもそも、お前が加減さえ知ってれば、こんなに嫌がったりはしない」
「という事は……?」
「魔力封じの枷付きで、どこかの広い荒地であれば相手してやる」
「やったぁぁぁ!!」
色々制約付きではあるものの、ジルバートと戦える事が決まって心底嬉しそうな声をディアナは上げた。
「あ、ならしばらくこのギルドにお世話になっていい? 宿を転々とするのも面倒だし、ご飯も美味しいし!」
「ああ、部屋は空いてるから好きに使え。 ただ、ウチの若い連中に剣やら魔法、あとは知識を教えてやってくれ」
「全然いいよ!」
こうして、戦闘狂残念美人エルフのディアナがしばらく蒼天の風に滞在することになった。
「今日はパスタを作りますよ。 お客様もいる事ですし、手早く作っていきましょう」
ディアナも特に好き嫌いは無いとは言っていたが、あまり珍しいものを食べさせてもあれかと思ったシュージは、この世界でも馴染み深いパスタを作ることにした。
ただ、この世界ではあまりパスタの種類が多くなく、何気に今から作るものも、まだこちらでは見たことがないものだ。
「とりあえずパスタを茹でておいて、こちらのピーマンと玉ねぎとソーセージを切っていきましょう」
まずは具材を食べやすいサイズ…… ピーマンは細切り、玉ねぎは薄切り、ソーセージは1センチ幅くらいに切り分けていく。
そして、フライパンに油を敷き、そこへ今切ったものを投入して炒める。
ある程度具材に火が通ったら、具材をフライパンの端に寄せて、ケチャップと中濃ソース、あとは刻んだニンニクも少し入れ、ソースが煮立ってきたら具材と絡めていく。
「パスタ茹で上がりました」
「ありがとうございます、ハンスさん」
その頃にはパスタも茹で上がったので、そのパスタをフライパンに入れてしっかり絡めたら、簡単に作れるナポリタンの完成だ。
「おぉ、ミートソースのパスタと似ていますね」
「トマトを使ったソースというのは似てますけど、結構これが違うんですよね」
完成したナポリタンを皿に盛り付けて食堂に運ぶと、そこにはディアナが大人しく座っていた。
その周りにはジルバートと何人かのメンバーも座っている。
「いや~、久しぶりやねディアナ~」
「……元気?」
「ああ、普通に元気してたよ」
「お主は何も変わっとらんの」
「エルフだからね。 5年やそこらじゃ何も変わらないよ」
どうやら、ジルバート以外にも旧知のメンバーがいるようだった。
「お待たせしました」
「ああ、ありがとう。 君はシュージという名前だそうだね?」
「はい、シュージと申します。 あまり今回は手の込んだ料理ではありませんが、どうぞ」
シュージがそう言ってナポリタンを渡すと、ディアナは素直にそれを受け取り、フォークで上品に口に運んでいった。
「んんっ!? お、美味しいっ! とても好みの味だよ」
「これはナポリタンというパスタ料理の一つです」
「このソースは恐らくトマトが原料だと思うが、なんだか不思議な風味や味がするね」
「今回使ったケチャップという調味料は僕のお手製で、ナポリタンに合うような作り方をしましたから」
ケチャップに関しては、ケットシー商会から最近発売はされたものの、まだ一種類しか販売されておらず、そっちはナポリタンに入れるにはちょっと合わないのだ。
ケチャップ一つとっても、甘みが強かったり、塩味が強かったり、スパイスが効いたものなどもあって、料理によって使い分けるのが上手い使い方だったりする。
「最近、食事を摂ることを忘れる日もあったけど、これぐらい美味しいものなら毎日毎食食べたいよ」
「そう言ってもらえると嬉しいですねぇ」
割と手早く作ったナポリタンだったが、ディアナの嗜好にかなり刺さったようで、かなり早いペースで食べてくれた。
「ふぅ、ごちそうさま。 戦闘以外で満足感を得たのは久しぶりだよ」
「是非そのままでいてくれ」
「ジル、ディアナとやるならどこかの無人島にでも行ってくれ。 また壊されたらたまったもんじゃない」
「前も前でまだ出来て一年も経ってない建物壊されたからね~」
「……凄かった」
「以前と比べて人も増えましたからね」
「えぇ…… やっぱりやってくれないの……?」
「何でそこまで俺とやりたいんだ…… ドラゴンでも狩りに行けばいいだろう」
「それは……」
「……また何かしたのかお前?」
「うっ…… そのぉ…… 人里を襲っていたドラゴンとやり合ってたら、豊かな山一つ荒地に変えちゃって…… ギルド本部と色んな国から依頼以外でのAランク以上の魔物との戦闘禁止されちゃった……」
「はぁ…… お前は本当に……」
「だ、だから、人とやるしかないの!」
「我慢できないのか?」
「もう無理! 本当はさっきジルバートを見た時、斬りかかろうか迷ったんだよ!?」
「頭おかしいんじゃないかお前」
どうやらディアナ本人的には、満足のいく戦闘ができないというのはかなり深刻な問題らしく、段々と涙目になってきていた。
「ジンバさん、以前はどんな感じで建物壊れちゃったんですか?」
「最初は剣だけの戦いで、それだけでも訓練場の壁がズタズタになるぐらいの余波があったんじゃが、ディアナが魔法を使い始めてからとんでもないことになったの」
「なるほど。 あ、そういえばジンバさん、前掃除した時に魔力封じの枷みたいなの作ってませんでした?」
「ああ、あれは罪人用に国やら貴族から作ってくれと依頼されてたものじゃな」
「もし全力戦闘をするのが問題なら、ディアナさんにそれ着けてもらって剣オンリーで戦ったりすれば、熱くなって暴走みたいなことにはならないんじゃないですか?」
「確かにの。 罪人用じゃから、魔法を使えない状態なら壊せんじゃろうし」
「それを着ければ戦ってくれるのかい!?」
「む…… 確かに、こいつから魔法を取れば、まだ俺がそこまで怪我はせず無力化はできるか……」
「着ける! なんなら弱体化のデバフとかも付けていいよ!」
「そこまでは良いだろう。 俺の鍛錬にもならん」
「えっ、も、もしかしてジルバートも、本当は私と戦りたかったの……♡?」
「まぁ、俺だってたまには全力で鍛錬をしたい時もある。 ……そもそも、お前が加減さえ知ってれば、こんなに嫌がったりはしない」
「という事は……?」
「魔力封じの枷付きで、どこかの広い荒地であれば相手してやる」
「やったぁぁぁ!!」
色々制約付きではあるものの、ジルバートと戦える事が決まって心底嬉しそうな声をディアナは上げた。
「あ、ならしばらくこのギルドにお世話になっていい? 宿を転々とするのも面倒だし、ご飯も美味しいし!」
「ああ、部屋は空いてるから好きに使え。 ただ、ウチの若い連中に剣やら魔法、あとは知識を教えてやってくれ」
「全然いいよ!」
こうして、戦闘狂残念美人エルフのディアナがしばらく蒼天の風に滞在することになった。
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