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#79 王都の研究所
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「ここですね……」
「おお、立派な建物ですね」
今日、シュージはシドの付き添いで王都にある研究所にやって来ていた。
その研究所では、魔物の生態や魔道具の開発、更にはシドが携わってるという新アイテムの開発など、研究分野は多岐に渡るそうで、そのせいか研究所自体もかなり大きな建物になっていた。
「すみません、わざわざ付き添っていただいて……」
「いえいえ、今日は午後まで特にやる事なかったので大丈夫ですよ」
王都に来てからというもの、王城の料理人への料理指南や、お茶会の準備などで色々と動き回ってるシュージではあったが、仲間達との時間も過ごしたいなと思っており、今日は何やら重たい荷物を運ぼうとしていたシドに、手伝いを申し出た形だ。
まぁ、手伝いとは言っても、シドの荷物をシュージの収納袋に入れて歩いて来ただけなのだが。
「一般の方も出入りしていますね?」
「一階は便利なアイテムを売っていたり、博物館があるんです……」
「なるほど。 ちょっと覗いてもいいですか?」
「もちろんです…… シュージさんのおかげでかなり時間が浮きましたから、案内しますよ……」
「助かります」
とりあえず、シドの荷物は研究所の裏手にある倉庫へと持っていき、それが済んだら一階の博物館エリアに2人は向かった。
「ほう、これは魔物の絵ですかね?」
「そうですね…… 魔物の特徴や、その素材が何に使われるのかなどが書かれています…… いくつか伝承の中に出てくるような魔物の物もあったりします……」
「これとかですかね? エンシェントドラゴン、フェンリルなどがありますけど」
「エンシェントドラゴンは数千年生きたドラゴンの通称ですね…… フェンリルは獣の王と呼ばれていて、どちらも強大な力を持っているとされています……」
「ドラゴンとか現れたら大変そうですねぇ」
「ドラゴンは理知的な生き物ですから、人里を襲うような事は基本的にないですね…… ただ、たまに凶暴な個体もいるようで、そういうのは相当な実力者が討伐に向かいます……」
「国を挙げてとかではないんですか?」
「ドラゴンクラスになると、実力の無い者はいくらいても秒殺されてしまいますからね……」
「怖いですねぇ」
「かく言う我らがギルドマスターのジルさんも、数年前にこの国に現れたドラゴンを単独討伐した英雄なんですよ……」
「それはそれは。 ちょこちょこジルさんの武勇伝を聞きますけど、本当にすごい人なんですね」
「まともに戦闘できない僕からすると、シュージさんも相当ですけどね……」
「いやいや、僕はドラゴンなんかには絶対敵いませんから、大人しくご飯を作って皆さんの帰りを待ってます」
「シュージさんらしいですね……」
のほほんとした会話をしつつ博物館を見て回った2人は、そのままの足でいろんなアイテムが売っている場所へとやって来た。
「なんだかんだこうして冒険者が使うようなアイテムを見るの初めてです」
「ここで売られているものはかなり質もいいですよ……」
そこには定番のポーションだったり、強い光を放つ閃光弾など、冒険に役立つアイテムがたくさん売られていた。
「ポーションにも沢山種類あるんですねぇ」
「そうですね…… 傷を治すものから解毒効果のあるものや、目が覚める物なんかもあったり……」
「ポーションって基本飲んで使うものですか?」
「そうですね…… 一応、体に振りかけても効果はありますけど、飲むのが1番効果が大きいです……」
「この量を飲むのは結構大変そうですねぇ。 味はやっぱりあんまりよろしくないんですか?」
「味ですか……? まぁ、そうですね、美味しくはないです……」
「それだと尚更切羽詰まった戦闘時に飲むの大変そうですね。 りんご味とかならするっと飲めて良さそうだなとか思ったんですけど」
「…………」
「おや、シドさん?」
「あっ、すみません…… なかなか面白いアイデアだなと思いまして…… 確かに、ポーションは不味いものだっていう固定観念がありましたけど、回復効果を損なわない成分の果物があれば、味も改善できるかもしれませんね……」
「果物は体にいいもの多いですし、何かしらはありそうですね。 ああ、蜂蜜とかでもいいかもしれません」
「なるほど…… シュージさんは他に何か気になる点あったりします……?」
「うーん、あと挙げるとするなら、もう少し飲みやすいような形にできたらいいかなって」
「ふむ……?」
「ほら、僕が使ってる顆粒出汁あるじゃないですか? あれも液体だった出汁を乾燥させて旨味をぎゅっと閉じ込めたものなので、ポーションも回復成分をぎゅっと閉じ込めて、錠剤みたいにできたら戦闘中でもすぐ飲めるし味はそこまで気にならないかなって」
「なるほど……! 確かにそういうものが作れたら、とても役立ちそうです……!」
「まぁ、素人考えですけどね?」
「いえいえ…… とても参考になるアイデアですよ…… やっぱり、僕達みたいな既にアイテム作りに詳しくなってしまった者だと、固定観念に囚われがちですから、シュージさんみたいな柔軟な考えはとても参考になります……」
「そう言ってもらえると嬉しいです」
「とりあえず、今度試してみますね……!」
「頑張ってください。 あ、でも、研究に夢中になりすぎてご飯忘れちゃ駄目ですよ?」
「あはは…… はい、気をつけます……」
それからシドとしばらく研究所を見て回り、お昼頃になったらシドとは別れ、シュージは王城へと向かうのであった。
「おお、立派な建物ですね」
今日、シュージはシドの付き添いで王都にある研究所にやって来ていた。
その研究所では、魔物の生態や魔道具の開発、更にはシドが携わってるという新アイテムの開発など、研究分野は多岐に渡るそうで、そのせいか研究所自体もかなり大きな建物になっていた。
「すみません、わざわざ付き添っていただいて……」
「いえいえ、今日は午後まで特にやる事なかったので大丈夫ですよ」
王都に来てからというもの、王城の料理人への料理指南や、お茶会の準備などで色々と動き回ってるシュージではあったが、仲間達との時間も過ごしたいなと思っており、今日は何やら重たい荷物を運ぼうとしていたシドに、手伝いを申し出た形だ。
まぁ、手伝いとは言っても、シドの荷物をシュージの収納袋に入れて歩いて来ただけなのだが。
「一般の方も出入りしていますね?」
「一階は便利なアイテムを売っていたり、博物館があるんです……」
「なるほど。 ちょっと覗いてもいいですか?」
「もちろんです…… シュージさんのおかげでかなり時間が浮きましたから、案内しますよ……」
「助かります」
とりあえず、シドの荷物は研究所の裏手にある倉庫へと持っていき、それが済んだら一階の博物館エリアに2人は向かった。
「ほう、これは魔物の絵ですかね?」
「そうですね…… 魔物の特徴や、その素材が何に使われるのかなどが書かれています…… いくつか伝承の中に出てくるような魔物の物もあったりします……」
「これとかですかね? エンシェントドラゴン、フェンリルなどがありますけど」
「エンシェントドラゴンは数千年生きたドラゴンの通称ですね…… フェンリルは獣の王と呼ばれていて、どちらも強大な力を持っているとされています……」
「ドラゴンとか現れたら大変そうですねぇ」
「ドラゴンは理知的な生き物ですから、人里を襲うような事は基本的にないですね…… ただ、たまに凶暴な個体もいるようで、そういうのは相当な実力者が討伐に向かいます……」
「国を挙げてとかではないんですか?」
「ドラゴンクラスになると、実力の無い者はいくらいても秒殺されてしまいますからね……」
「怖いですねぇ」
「かく言う我らがギルドマスターのジルさんも、数年前にこの国に現れたドラゴンを単独討伐した英雄なんですよ……」
「それはそれは。 ちょこちょこジルさんの武勇伝を聞きますけど、本当にすごい人なんですね」
「まともに戦闘できない僕からすると、シュージさんも相当ですけどね……」
「いやいや、僕はドラゴンなんかには絶対敵いませんから、大人しくご飯を作って皆さんの帰りを待ってます」
「シュージさんらしいですね……」
のほほんとした会話をしつつ博物館を見て回った2人は、そのままの足でいろんなアイテムが売っている場所へとやって来た。
「なんだかんだこうして冒険者が使うようなアイテムを見るの初めてです」
「ここで売られているものはかなり質もいいですよ……」
そこには定番のポーションだったり、強い光を放つ閃光弾など、冒険に役立つアイテムがたくさん売られていた。
「ポーションにも沢山種類あるんですねぇ」
「そうですね…… 傷を治すものから解毒効果のあるものや、目が覚める物なんかもあったり……」
「ポーションって基本飲んで使うものですか?」
「そうですね…… 一応、体に振りかけても効果はありますけど、飲むのが1番効果が大きいです……」
「この量を飲むのは結構大変そうですねぇ。 味はやっぱりあんまりよろしくないんですか?」
「味ですか……? まぁ、そうですね、美味しくはないです……」
「それだと尚更切羽詰まった戦闘時に飲むの大変そうですね。 りんご味とかならするっと飲めて良さそうだなとか思ったんですけど」
「…………」
「おや、シドさん?」
「あっ、すみません…… なかなか面白いアイデアだなと思いまして…… 確かに、ポーションは不味いものだっていう固定観念がありましたけど、回復効果を損なわない成分の果物があれば、味も改善できるかもしれませんね……」
「果物は体にいいもの多いですし、何かしらはありそうですね。 ああ、蜂蜜とかでもいいかもしれません」
「なるほど…… シュージさんは他に何か気になる点あったりします……?」
「うーん、あと挙げるとするなら、もう少し飲みやすいような形にできたらいいかなって」
「ふむ……?」
「ほら、僕が使ってる顆粒出汁あるじゃないですか? あれも液体だった出汁を乾燥させて旨味をぎゅっと閉じ込めたものなので、ポーションも回復成分をぎゅっと閉じ込めて、錠剤みたいにできたら戦闘中でもすぐ飲めるし味はそこまで気にならないかなって」
「なるほど……! 確かにそういうものが作れたら、とても役立ちそうです……!」
「まぁ、素人考えですけどね?」
「いえいえ…… とても参考になるアイデアですよ…… やっぱり、僕達みたいな既にアイテム作りに詳しくなってしまった者だと、固定観念に囚われがちですから、シュージさんみたいな柔軟な考えはとても参考になります……」
「そう言ってもらえると嬉しいです」
「とりあえず、今度試してみますね……!」
「頑張ってください。 あ、でも、研究に夢中になりすぎてご飯忘れちゃ駄目ですよ?」
「あはは…… はい、気をつけます……」
それからシドとしばらく研究所を見て回り、お昼頃になったらシドとは別れ、シュージは王城へと向かうのであった。
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