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#74 海産物には珍味も多い
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「あ、ズズムさん。 こんにちは」
「おー、よく来たなシュージ」
ある日の昼下がり。
シュージは商業ギルドにレシピ登録をしに行った帰りに、ズズムの家を訪れていた。
ズズムとは最初に出会った時にまたいつでも来ていいと言われていて、その後もちょくちょく会いに来たりはしていたのだが、スタンピードがあったり、シュミットからの依頼を受けたり、沿海州に行っていたりと結構バタバタしていたので、会うのはちょっと久しぶりだ。
「ほれ、中に入って涼むとええ。 婆さんもいるから」
「ありがとうございます。 お邪魔しますね」
会って直ぐにズズムはシュージを家に招き入れてくれた。
その言葉に甘えてズズムの家の中に入り、リビングにある椅子に座らせてもらう。
「いやー、暑いですね最近は」
「そうじゃなぁ。 この先1ヶ月くらいはまだ暑そうじゃ」
「畑仕事とか気をつけてくださいね」
「ありがとよ。 シュージは最近何しとったんじゃ?」
「先日まで沿海州の方へ行ってましたよ」
「あら、沿海州は良いところよねぇ。 若い時に何回か行った事あるけど」
「何か面白いもんとかあったか?」
「それはもう。 いい人達とも巡り会えましたし、美味しい食材も沢山買えましたから、大満足ですね」
シュージがここへ来ると、最近何があったのかをズズム達に話すのが定例になっているので、シュージは沿海州であったことを一つ一つズズム達に話していった。
ズズム達からしても、もう進んで遠出をしたりする歳でも無いので、自分たちとは違った活動的な生活をするシュージの話を聞くのはとても楽しいことだった。
「ほぉー? シュージは海産物の扱いも得意なんじゃな」
「昔住んでたところは海産物がよく手に入る場所だったので」
「海産物には変わったものが沢山ありますよねぇ」
「そうですね。 あ、それで言うと、以前話してたようなものがありましたよ。 収納袋にありますから、ちょっと調理して食べてみます?」
「おお、ええのか?」
「もちろんです。 ……ぶっちゃけると、ギルドの皆さんだとちょっと好き嫌いも別れそうなので、普段の食事では出せなそうですし」
そう言いながらシュージが腰に提げた収納袋から取り出したのは、白くてぷよぷよした物体だった。
「これがタラという魚の白子ですね」
「ほうほう? 内臓と聞いてたからもっと汚いもんかと思っとったが、意外と綺麗なもんじゃな?」
「これはもう下処理をして、いつでも食べれる状態になってますからね」
以前、ズズム達と話していた時に、自分の故郷では珍しいものを色々食べるという話になり、その中で魚の白子の話もしたことがあったのだ。
まぁ、日本人は海外の人から見ると、それ食べ物? みたいなものを結構食べたりするので、より食文化が地球と比べると進んでいないこちらの世界からすると、魚の内臓を食べるというのはかなり驚くことなのだろう。
魚卵ですらあまり人気がなかったぐらいだし。
「ちょっと調理すれば食べれますけど、食べてみます?」
「お、じゃあ頼んでもええかの? 美味いんじゃろ?」
「好き嫌いは別れますけど、僕は結構好きですね」
「じゃあ、儂も食べてみたい」
「はは、分かりました」
という事で、ズズム宅の厨房を借り、既に下処理を終えた白子を食べやすいサイズに切り分け、沸騰しないぐらいのお湯で湯がいていく。
それが済んだら冷水とお酒を入れたボウルにとり、軽くゆすいで水気を拭き取る。
そして後はお皿に盛り付けてポン酢をかければ白子ポン酢の完成だ。
「出来ましたよ」
「結構調理は簡単なんですねぇ?」
「他にも鍋にしたりとかしてもいいですけど、今日は暑いですしね」
「では、頂こうかの」
お皿に載せられた白子を、ズズム達は一つ摘んでゆっくり口に運んでいった。
「ほう! これは美味いのぉ! 舌の上でとろけるようじゃ!」
「独特な味と風味ですねぇ。 表現するのが難しいけど、美味しいわ」
「しっかりと下処理しましたから、臭みがなくていいですね」
「まぁでも、確かにこれは好き嫌いが分かれそうじゃな。 見た目も相まって、若者はあんま好まんかもしれん」
「そうなんですよね。 まだ結構な量あるので、残った分は今度お酒を飲むメンバーにでも出そうかと思ってます」
「シュージちゃんはやっぱり凄いわねぇ。 こんな食材まで美味しくしてしまうなんて」
「僕もまだまだこちらに来てから試行錯誤の日々ですよ」
「末恐ろしいのぉ。 ま、こういう珍味とかは儂等年寄りからすると興味を惹かれるものが多いから、なんかまた作ったら是非食わせとくれよ」
「はは、分かりました。 今回手に入れたものの中にもまだ色々あるので、今度持って来ますね」
それからしばらくシュージはズズム宅で2人と語り合いながら、のほほんとした時間を過ごすのであった。
「おー、よく来たなシュージ」
ある日の昼下がり。
シュージは商業ギルドにレシピ登録をしに行った帰りに、ズズムの家を訪れていた。
ズズムとは最初に出会った時にまたいつでも来ていいと言われていて、その後もちょくちょく会いに来たりはしていたのだが、スタンピードがあったり、シュミットからの依頼を受けたり、沿海州に行っていたりと結構バタバタしていたので、会うのはちょっと久しぶりだ。
「ほれ、中に入って涼むとええ。 婆さんもいるから」
「ありがとうございます。 お邪魔しますね」
会って直ぐにズズムはシュージを家に招き入れてくれた。
その言葉に甘えてズズムの家の中に入り、リビングにある椅子に座らせてもらう。
「いやー、暑いですね最近は」
「そうじゃなぁ。 この先1ヶ月くらいはまだ暑そうじゃ」
「畑仕事とか気をつけてくださいね」
「ありがとよ。 シュージは最近何しとったんじゃ?」
「先日まで沿海州の方へ行ってましたよ」
「あら、沿海州は良いところよねぇ。 若い時に何回か行った事あるけど」
「何か面白いもんとかあったか?」
「それはもう。 いい人達とも巡り会えましたし、美味しい食材も沢山買えましたから、大満足ですね」
シュージがここへ来ると、最近何があったのかをズズム達に話すのが定例になっているので、シュージは沿海州であったことを一つ一つズズム達に話していった。
ズズム達からしても、もう進んで遠出をしたりする歳でも無いので、自分たちとは違った活動的な生活をするシュージの話を聞くのはとても楽しいことだった。
「ほぉー? シュージは海産物の扱いも得意なんじゃな」
「昔住んでたところは海産物がよく手に入る場所だったので」
「海産物には変わったものが沢山ありますよねぇ」
「そうですね。 あ、それで言うと、以前話してたようなものがありましたよ。 収納袋にありますから、ちょっと調理して食べてみます?」
「おお、ええのか?」
「もちろんです。 ……ぶっちゃけると、ギルドの皆さんだとちょっと好き嫌いも別れそうなので、普段の食事では出せなそうですし」
そう言いながらシュージが腰に提げた収納袋から取り出したのは、白くてぷよぷよした物体だった。
「これがタラという魚の白子ですね」
「ほうほう? 内臓と聞いてたからもっと汚いもんかと思っとったが、意外と綺麗なもんじゃな?」
「これはもう下処理をして、いつでも食べれる状態になってますからね」
以前、ズズム達と話していた時に、自分の故郷では珍しいものを色々食べるという話になり、その中で魚の白子の話もしたことがあったのだ。
まぁ、日本人は海外の人から見ると、それ食べ物? みたいなものを結構食べたりするので、より食文化が地球と比べると進んでいないこちらの世界からすると、魚の内臓を食べるというのはかなり驚くことなのだろう。
魚卵ですらあまり人気がなかったぐらいだし。
「ちょっと調理すれば食べれますけど、食べてみます?」
「お、じゃあ頼んでもええかの? 美味いんじゃろ?」
「好き嫌いは別れますけど、僕は結構好きですね」
「じゃあ、儂も食べてみたい」
「はは、分かりました」
という事で、ズズム宅の厨房を借り、既に下処理を終えた白子を食べやすいサイズに切り分け、沸騰しないぐらいのお湯で湯がいていく。
それが済んだら冷水とお酒を入れたボウルにとり、軽くゆすいで水気を拭き取る。
そして後はお皿に盛り付けてポン酢をかければ白子ポン酢の完成だ。
「出来ましたよ」
「結構調理は簡単なんですねぇ?」
「他にも鍋にしたりとかしてもいいですけど、今日は暑いですしね」
「では、頂こうかの」
お皿に載せられた白子を、ズズム達は一つ摘んでゆっくり口に運んでいった。
「ほう! これは美味いのぉ! 舌の上でとろけるようじゃ!」
「独特な味と風味ですねぇ。 表現するのが難しいけど、美味しいわ」
「しっかりと下処理しましたから、臭みがなくていいですね」
「まぁでも、確かにこれは好き嫌いが分かれそうじゃな。 見た目も相まって、若者はあんま好まんかもしれん」
「そうなんですよね。 まだ結構な量あるので、残った分は今度お酒を飲むメンバーにでも出そうかと思ってます」
「シュージちゃんはやっぱり凄いわねぇ。 こんな食材まで美味しくしてしまうなんて」
「僕もまだまだこちらに来てから試行錯誤の日々ですよ」
「末恐ろしいのぉ。 ま、こういう珍味とかは儂等年寄りからすると興味を惹かれるものが多いから、なんかまた作ったら是非食わせとくれよ」
「はは、分かりました。 今回手に入れたものの中にもまだ色々あるので、今度持って来ますね」
それからしばらくシュージはズズム宅で2人と語り合いながら、のほほんとした時間を過ごすのであった。
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