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#69 海鮮料理といえば

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「リンドさん」

「お! 来たか、シュージ!」


 シュージは先日訪れた漁師組合の集会所にやってきていた。


「もう少ししたら今日来る奴らは全員来ると思うぜ」

「分かりました。 それまでに準備しちゃいますね」


 今日はここに、この街の主要な漁師達や、商会、食事処などのオーナー達が集まり、定例会議が開かれる予定だ。

 そこでこれからシュージが作った料理を食べてもらうのだが、今回はもう既に料理は潮騒の花の厨房で作ってきた。

 それをシュージの持ってる収納袋に入れてきたので、いつでも出来立てのものが取り出せる状態だ。

 ここで作ってもよかったのだが、失敗してしまう可能性も人である以上ないことはないので、今回はこのような方法をとった。

 ちなみに、料理を並べたり説明する要員として、セリアとミドリも一緒に来てくれている。

 と、そうこうしているうちに集会所には徐々に人が集まってきた。

 その人達は、全員何かしらのオーナーだったり、お偉い立場の人間だからか、威厳のある人ばかりだった。

 ただ、他の知り合いと顔を合わせると笑顔で気安く話をしていたりいていて、この会はそこまで堅苦しいものではないのだとシュージは悟った。


「よし、皆んなよく来てくれた! それで、今日の会議なんだが、色々と話す前にここにいる料理人のシュージが、沿海州でとれるものを使って新しい料理を作ってきてくれたから、それをまず皆んなで食べよう!」

「初めまして、蒼天の風という冒険者ギルドに勤めるシュージと申します。 皆様に気に入ってもらえるように色々と作ってきましたので、ぜひ食べてみてください」


 そう言いながら、シュージ達は収納袋からまず、この沿海州に来てからギルドの食事で出した海の幸で作った海鮮丼、なめろう、フライ、煮付けなどをテーブルに並べた。

 今回は色々と食べて欲しいので、どれもビュッフェのように小さめのサイズで作り、各自で気になるものを取り分けてもらう形式だ。

 それから各自にお皿を渡すと、街の有力者達は気になる料理にどんどん手をつけていった。


「おおっ! これが噂になってるライスか! 確かに海鮮と合うな!」

「これは……? ほう、油で揚げているんですか。 とても美味しいですね」


 すると、食べた者達からすぐに称賛の声が上がり始めた。

 やはり、シュージが作る色んな調味料を合わせて作った料理は、どれも今まで食べたことのない美味に感じられるようで、食事処のオーナー達からは色々と質問も寄せられた。

 それにシュージ達はしっかりと応えつつ、一人一人に行き渡るように配膳を行なっていく。


「もう少し食べてもいいかな?」

「あ、大体一通り皆さん食べましたかね? では、こちらを」


 それから一通り皆んなが出されたものを食べ終えた頃、シュージは新たに収納袋からいくつかの料理を取り出した。


「また何か出てきたぞ?」

「なんだか彩豊かですね?」

「では、説明しますね。 まずこちらの板に乗ったものは寿司という料理です」

「ライスに魚の切り身が乗っているのか?」

「はい。 ライスの部分がシャリ、上に載っているものをネタと言い、今回はマグロ、サーモン、イカを用意しました」

「こちらのは?」

「その横はシャリとネタを海苔で巻いた、寿司の中でも軍艦と呼ばれるものと、巻物と呼ばれるものになります。 軍艦の方はいくら、うに、巻物はネギトロをご用意しました」


 そう、新たに出てきたのは日本ではお馴染みの寿司だった。

 シュージは本職とまではいかないものの、普通に客に出せるレベルで寿司を握ることはできるので、今回用意させてもらった。


「本来はもう少し全体的なサイズは大きめです。 今回は皆さん他にも色々食べるので、小さめで作りました」

「その横の大きな桶に入ったものは?」

「こちらはちらし寿司というものです。 寿司の方のライスも同様なのですが、ライスを酢と砂糖を合わせた甘酢という調味料で味付けし、そこに今回は細く切った錦糸卵、椎茸、れんこん、海苔を混ぜ合わせて作りました」


 今回寿司を作るに当たって、折角ならちらし寿司も作ろうということになった。

 見た目もかなり華やかなので、きっと喜ばれるだろうと思って。


「では、どうぞ食べてみてください」


 既にハケで醤油はネタに塗っておいたので、そのまま各自にまずは板に乗った寿司を提供した。


「んん!? こ、これは美味い!」

「甘酸っぱいライスとの相性が凄いな!」

「いくらはあまり食べてこなかったけど、こんなに美味しいのね!」

「うにもいいぞ! 口の中で溶けるようだ!」


 そんな寿司を食べた反応は間違いなく今日1番のもので、割とシンプルな味付けで海鮮本来の旨味を感じ取れる寿司は、日頃から海鮮を口にしている者たちにとって馴染み深くもあるし、新しい美味でもあり、非常に嗜好に合うものだった。


「ちらし寿司の方もいいな!」

「この中に色んな海鮮を入れたも美味しそうですね」


 更にちらし寿司の方も提供すると、色んな食材が一緒に取れるというところが結構ポイント高かったようで、こちらもかなり評価が高かった。


「いやー、大人気だな!」

「喜んでもらえてよかったです」

「今回の料理だけでも、沿海州の食文化はめちゃくちゃ良くなるだろうな。 本当に報酬とかいらないのか?」

「僕は僕の知ってる料理を教えただけですから。 あ、それでも何か礼をしたいとなったら、新鮮な海産物をまた沢山売ってください」

「そんなの当たり前だ! お前さんには活きのいいやつをちゃんと適正価格で売ってやるよ」

「はは、それで十分過ぎますよ」


 それから、沿海州の有力者達との食事会は続き、全員からとても喜ばれ、感謝されるシュージだった。

 ちなみに、そんな話の中で地球にあった回転寿司屋の話をしたところ、遠くない未来に魔道具を使った回転寿司屋が発足し、沿海州の新たな名物となるのだが、それはまた別のお話。
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