上 下
47 / 101

#47 たまに食べたくなるジャンクフード

しおりを挟む
「今日のお昼はリックとカインとメイだけですか」

「みたいだぜー? 他の皆んなはそれぞれの仕事とか、スタンピードの対策会議で出払っちまったよ」

「もうすぐ来るそうですよね? 何でも、数日間にかけた戦いになると聞きました」

「そうそう。 オイラ達は悔しいけど、後方支援だから、あんまり今からできることとか無いんだ」

「後方支援も立派なお仕事ですよ」

「魔物の強さはそこまででは無いですけど、量が凄いのと、第一波、第二波といった感じで断続的に魔物の群れが襲ってきますから、長期戦になります」

「僕もサポートに回りますから、一緒に頑張りましょうね」


 調査を行っている冒険者達からの情報によると、あと1週間くらいでスタンピードが来ると予想されていて、ヤタサの街はいつもより少し張り詰めた空気に包まれている。

 ただ、冒険者達にとっては稼ぎ時という側面もあり、不安もあるが戦いへのやる気もかなり湧き上がってきているようだった。

 ちなみにシュージは正式に炊き出し班に参加する事になっていて、一応戦えもするので、その近辺の護衛も兼業する予定だ。

 まぁ、炊き出しは街の防壁の裏側で行われるので、余程のことが無ければ戦闘に巻き込まれることは無いだろう。

 ただ、もしスタンピードの勢いが想定以上で押されるなんて事になったら、シュージも前線に加わるつもりだ。

 戦うのをそこまで好まないとは言え、シュージだってこの街の一員だ。

 この街が好きだし、この街で出会った人達を守りたいという気持ちは本物なので、密かに戦う心構えもしておいている。


「さて、ではお昼ご飯は何にしましょうか?」

「うーん、なんかガツンとしたもんがいい!」

「オイラも!」

「私はお二人が食べたいもので大丈夫です」

「うーん、では、少しジャンクな物を作りましょうか」


 今日ギルドにいるのは、10代中盤の食べ盛りな3人という事で、少しジャンキーなメニューにする事にした。

 という事で、まずはメイとリックにはじゃがいもを洗って皮剥きをしてもらっておく。

 その間、シュージとカインは、玉ねぎをみじん切りにし、合い挽き肉と合わせて塩胡椒を振ってからしっかりと混ぜていく。

 そうして出来上がった肉だねを、ハンバーグよりも平べったい丸型に延ばし、油をひいたフライパンで焼き始めた。

 同時に、下処理を終えたジャガイモを細長い形に切り分け、小麦粉と片栗粉を塗して油で揚げていく。

 そう、今作っているのは地球の代表的なジャンクフードである、ハンバーガーとフライドポテトだ。

 ホットドッグはこの世界でも見かけたことはあるが、ハンバーガーはまだ見たこと無いので、受け入れられるかをチェックする意味でも今日はこの3人に食べてもらおうと思う。

 そんな風に肉を焼いている間、ハンバーガーに挟むレタスとトマトを切り分け、それ用のバンズでは無いが、丸い形のパンを買ってきておいたので、それを半分にカットしておく。

 そして、肉に火が通ったらチーズを乗せて少し溶けるくらいになったら、フライパンから上げてパンに乗せ、トマトとレタスと一緒に挟み、ケチャップとマヨネーズを適量かけたら、手作りハンバーガーの完成だ。

 その頃にはフライドポテトも揚げ上がったので、バットに移して油を切り、熱々の内に塩を振ったらこちらも完成だ。


「という事で、ハンバーガーセットの完成です」

「ハンバーガーセット?」

「僕の故郷では、ハンバーガーとフライドポテトをセットにして売っている人気店があったんですよ。 どうぞ食べてみてください」


 シュージがそう言いながら、ハンバーガーを手に持って、その大きな口でかぶりついた。

 そのお手本と同じように、リック達もそれぞれハンバーガーを口に運んだ。


「んっ! 美味い!」

「すごい食べ応えがありますね?」

「今回は一般的なサイズで作りましたけど、僕の故郷では肉とかパンを何枚も重ねて凄く大きなハンバーガーとかも作られてましたね」

「なにそれ、楽しそう!」

「人数がいる時になら作って良いかもしれませんねぇ」

「このフライドポテトも美味しいです」

「やけに合いますよね。 まぁ、こういう食事は食べ過ぎると体に悪いので、たまに食べるくらいにしないといけないのが玉に瑕ですかね」

「体に悪いのか?」

「食べ過ぎなければ全然そんな事ないですよ? ただ、油をたくさん使っているので、食べ過ぎると太ったり、体調悪くしたりします。 まぁ、どの料理でもそうですが」

「そうなんだなー」

「でも、皆さんは伸び盛りな年齢ですから、遠慮はせず沢山食べてください。 食べた分しっかり運動もしてますし」

「おう! いつかシュージみたいなムキムキになってやるよ!」

「はは、それは頑張らないとですねぇ」


 どことなく食べていて罪悪感のあるジャンクフードを食べながら、今日も平和な時間を過ごすシュージだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

所詮は他人事と言われたので他人になります!婚約者も親友も見捨てることにした私は好きに生きます!

ユウ
恋愛
辺境伯爵令嬢のリーゼロッテは幼馴染と婚約者に悩まされてきた。 幼馴染で親友であるアグネスは侯爵令嬢であり王太子殿下の婚約者ということもあり幼少期から王命によりサポートを頼まれていた。 婚約者である伯爵家の令息は従妹であるアグネスを大事にするあまり、婚約者であるサリオンも優先するのはアグネスだった。 王太子妃になるアグネスを優先することを了承ていたし、大事な友人と婚約者を愛していたし、尊敬もしていた。 しかしその関係に亀裂が生じたのは一人の女子生徒によるものだった。 貴族でもない平民の少女が特待生としてに入り王太子殿下と懇意だったことでアグネスはきつく当たり、婚約者も同調したのだが、相手は平民の少女。 遠回しに二人を注意するも‥ 「所詮あなたは他人だもの!」 「部外者がしゃしゃりでるな!」 十年以上も尽くしてきた二人の心のない言葉に愛想を尽かしたのだ。 「所詮私は他人でしかないので本当の赤の他人になりましょう」 関係を断ったリーゼロッテは国を出て隣国で生きていくことを決めたのだが… 一方リーゼロッテが学園から姿を消したことで二人は王家からも責められ、孤立してしまうのだった。 なんとか学園に連れ戻そうと試みるのだが…

前世の記憶が蘇ったので、身を引いてのんびり過ごすことにします

柚木ゆず
恋愛
 ※明日(3月6日)より、もうひとつのエピローグと番外編の投稿を始めさせていただきます。  我が儘で強引で性格が非常に悪い、筆頭侯爵家の嫡男アルノー。そんな彼を伯爵令嬢エレーヌは『ブレずに力強く引っ張ってくださる自信に満ちた方』と狂信的に愛し、アルノーが自ら選んだ5人の婚約者候補の1人として、アルノーに選んでもらえるよう3年間必死に自分を磨き続けていました。  けれどある日無理がたたり、倒れて後頭部を打ったことで前世の記憶が覚醒。それによって冷静に物事を見られるようになり、ようやくアルノーは滅茶苦茶な人間だと気付いたのでした。 「オレの婚約者候補になれと言ってきて、それを光栄に思えだとか……。倒れたのに心配をしてくださらないどころか、異常が残っていたら候補者から脱落させると言い出すとか……。そんな方に夢中になっていただなんて、私はなんて愚かなのかしら」  そのためエレーヌは即座に、候補者を辞退。その出来事が切っ掛けとなって、エレーヌの人生は明るいものへと変化してゆくことになるのでした。

だらだら生きるテイマーのお話

めぇ
ファンタジー
自堕落・・・もとい楽して生きたい一人のテイマーのお話。目指すのはスローライフ!

いらないと言ったのはあなたの方なのに

水谷繭
恋愛
精霊師の名門に生まれたにも関わらず、精霊を操ることが出来ずに冷遇されていたセラフィーナ。 セラフィーナは、生家から救い出して王宮に連れてきてくれた婚約者のエリオット王子に深く感謝していた。 エリオットに尽くすセラフィーナだが、関係は歪つなままで、セラよりも能力の高いアメリアが現れると完全に捨て置かれるようになる。 ある日、エリオットにお前がいるせいでアメリアと婚約できないと言われたセラは、二人のために自分は死んだことにして隣国へ逃げようと思いつく。 しかし、セラがいなくなればいいと言っていたはずのエリオットは、実際にセラが消えると血相を変えて探しに来て……。 ◆表紙画像はGirly drop様からお借りしました🍬 ◇いいね、エールありがとうございます!

【完結】キズモノになった私と婚約破棄ですか?別に構いませんがあなたが大丈夫ですか?

なか
恋愛
「キズモノのお前とは婚約破棄する」 顔にできた顔の傷も治らぬうちに第二王子のアルベルト様にそう宣告される 大きな傷跡は残るだろう キズモノのとなった私はもう要らないようだ そして彼が持ち出した条件は婚約破棄しても身体を寄越せと下卑た笑いで告げるのだ そんな彼を殴りつけたのはとある人物だった このキズの謎を知ったとき アルベルト王子は永遠に後悔する事となる 永遠の後悔と 永遠の愛が生まれた日の物語

今さら、私に構わないでください

ましゅぺちーの
恋愛
愛する夫が恋をした。 彼を愛していたから、彼女を側妃に迎えるように進言した。 愛し合う二人の前では私は悪役。 幸せそうに微笑み合う二人を見て、私は彼への愛を捨てた。 しかし、夫からの愛を完全に諦めるようになると、彼の態度が少しずつ変化していって……? タイトル変更しました。

私は私で勝手に生きていきますから、どうぞご自由にお捨てになってください。

木山楽斗
恋愛
伯爵令嬢であるアルティリアは、婚約者からある日突然婚約破棄を告げられた。 彼はアルティリアが上から目線だと批判して、自らの妻として相応しくないと判断したのだ。 それに対して不満を述べたアルティリアだったが、婚約者の意思は固かった。こうして彼女は、理不尽に婚約を破棄されてしまったのである。 そのことに関して、アルティリアは実の父親から責められることになった。 公にはなっていないが、彼女は妾の子であり、家での扱いも悪かったのだ。 そのような環境で父親から責められたアルティリアの我慢は限界であった。伯爵家に必要ない。そう言われたアルティリアは父親に告げた。 「私は私で勝手に生きていきますから、どうぞご自由にお捨てになってください。私はそれで構いません」 こうしてアルティリアは、新たなる人生を送ることになった。 彼女は伯爵家のしがらみから解放されて、自由な人生を送ることになったのである。 同時に彼女を虐げていた者達は、その報いを受けることになった。彼らはアルティリアだけではなく様々な人から恨みを買っており、その立場というものは盤石なものではなかったのだ。

どうかそのまま真実の愛という幻想の中でいつまでもお幸せにお過ごし下さいね。

しげむろ ゆうき
恋愛
ある日、私は婚約者であるアルタール・ロクサーヌ殿下に婚約解消をされてしまう。 どうやら、殿下は真実の愛に目覚めたらしい……。 しかし、殿下のお相手は徐々に現実を理解し……。 全五話

処理中です...