マッチョな料理人が送る、異世界のんびり生活。 〜強面、筋骨隆々、とても強い。 でもとっても優しい男が異世界でのんびり暮らすお話〜

#28 疲れも吹き飛ぶスタミナ丼

　そして、お昼時。

　訓練を終えたシュージは、キッチンで昼ごはんを作っていた。


「それで、私は何をすればいい？」


　今日はたまには忘れないように料理もしたいとのことで、シャロがお手伝い要員として来てくれた。


「では、シャロさんはこのネギとニラを切ってください。 ネギは斜めに薄切りで、ニラは3センチくらいに切ってもらえれば」

「分かったわ」


　言われた通りシャロはネギとニラを切り始めた。

　シャロもかつてはこのギルドで見習いをしていて、その時に料理もしていたらしく、その手つきは一流とまではいかないものの、しっかりとしていた。


「今日は何を作るの？」

「僕含め、皆さん体を動かしましたから、スタミナのつく肉料理を作ろうかと」

「ふうん？ 楽しみね」


　ガルほどあからさまではではないが、シャロも獣人なので、肉は大好物だし、かなり良く食べる。

　割とサッパリとした性格なので、両手を上げて喜ぶなんて事はしないが、そのもふもふの狐の尻尾がふりふりと揺れていて、喜んでいることが伝わってきた。

　そんなシャロにほっこりしつつ、シュージはフライパンにごま油と刻んだにんにくを入れ、千切りにした人参と、あらかじめ酒をふって置いておいたオーク肉を炒めていく。


「すごい良い匂い……！」

「お腹空きますよねぇ」

「獣人は他の種族より鼻がいいから、最近はシュージがとても良い匂いを毎日させて、ちょっと困ってるわ」

「はは、それはすみません」

「でも、ちゃんと美味しいものたくさん作ってくれてるから、許すわ」

「ありがとうございます」


　ゆるゆるとシャロと会話をしつつ、炒め終わったオーク肉とにんじんに、シャロに切ってもらったネギとニラを加える。

　それらをしっかりと火が通るまで炒めたら、和風出汁と醤油を適量入れ、スパイスなどが売っている店で手に入れた鷹の爪をほんの少しだけ入れて辛味を加えて混ぜ合わせる。

　あとはこれをご飯の上に乗っければ、疲れも吹き飛ばすオーク肉のスタミナ丼の完成だ。


「すごい美味しそう……！ これで全部？」

「いえ、ちょっと野菜が足りないので、これも食べましょう」


　そう言ってシュージは、冷蔵庫から、きゅうりを使って作った浅漬けを取り出した。

　これは塩と砂糖、あと少しの和風出汁を揉み込んで作って、冷蔵庫で漬け込んでおいたのだ。


「これはきゅうり？」

「そうですね。 食べてみます？」

「じゃあ…… んっ！ 美味しい！ 何だか、スッキリとした味で、どんどん食べれちゃいそう」

「漬物も美味しいですからね。 今度機会があったらもっと手の込んだものを作りたいです」

「シュージが料理してるの、しっかり見たのは初めてだったけど、凄いわね？ 手際もいいし、色々考えながら作ってて」

「食べてもらう人に喜んでもらいたいですならね」

「カッコいいわね。 毎日ありがとう、シュージ」

「いえいえ。 お手伝い助かりましたよ」

「またこうして、暇な時は手伝いに来るわね」

「ぜひぜひ」


　そんなこんなで、丁度完成したのとほぼ同時に、昼ご飯を食べるメンバーが続々と食堂にやって来たので、とりあえずはみんな同じ丼にスタミナ丼をよそって振る舞ってみた。

　
「美味え！ これ美味え！」

「シュージ、これ美味い！」

「はは、良かったです」


　結果、ガルやリックといった育ち盛りの者達には大好評で、かなりの量炊いておいたご飯はあっという間に消化されていった。

　しかも、きゅうりの浅漬けを間に挟むと、こってりとした後味がすっきりと流され、またどんどんスタミナ丼が進むというスパイラルが生まれていた。


「この形式は食べやすくていいな」

「どんぶりとか、丼料理とか、丼ものって言いますね」

「大衆食堂とかではかなり人気が出るんじゃないか？ 冒険者などは手早く済ませたい者もいるから、スプーンで掻き込めるこの料理は好まれそうだ」

「確かにそうかもしれませんね。 シンプルな焼肉とか、味をつけたベーコンエッグとかを載せても美味しいですから」

「シュージ、それ今度作ってくれよ！」

「はは、分かりました。 近いうちに作りますね」


　その後、しっかりとスタミナ丼で精をつけたギルドメンバー達は、午後の訓練にも張り切って臨むのであった。