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#25 異世界初外食

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 時刻は午後の14時くらい。

 本日、シュージは街にある、もくもく亭という名前の大衆食堂を訪れていた。

 というのも、なんだかんだでこの世界に来てから、まだこの世界の料理人が作るご飯を食べた事が無く、単純な興味と何となく今日は外食をしたい気分だったので、ギルドメンバーに作った昼食は自分では食べずにここまでやって来た。


 ――カランコロン


「いらっしゃいませー!」


 という事で、もくもく亭の趣のある木製の扉を開けると、小気味いい木簡の音が鳴り響き、若いメイド服のような給仕服を着た女性の店員が出てきてくれた。


「わっ、逞しい人ですねっ。 あ、何名ですか?」

「1人です」

「ありがとうございます! 席は沢山空いてますので、空いてるお席にどうぞ! お席にメニューも置いてありますので、決まったら声をかけてください!」

「ありがとうございます」


 店員さんにお礼を言い、シュージは2人掛けのテーブル席に腰かけた。

 もう昼間のピークの時間を過ぎたからか、店内にはそこまで人はおらず、いても既に食事を終えて談笑している人がほとんどだった。

 とりあえず、シュージも何か頼もうと、テーブルに置いてあったメニューを見てみる。

 そこには、ステーキや酒蒸し、スパゲッティといった一品料理が10種類ほど書かれていて、後は飲み物も同じくらい書かれていた。

 値段は大衆食堂という事もあってかなりリーズナブルで、あまり作るのに時間がかからない料理がほとんどだった。


「すみません」

「はい! お決まりですか?」

「えっと、このバッファローのステーキを一つ」

「はい! お飲み物はどうします?」

「では、オレンジジュースを」

「はーい! すぐお持ちしますね!」


 元気な店員さんに注文を伝え、5分ちょっと待っていると、300グラムくらいはありそうかという大きなステーキが運ばれてきた。


「はい、お待ち」


 そして、それを運んできてくれたのは、先程の店員さんではなく、エプロンをかけた恰幅のいいおばちゃんだった。

 恐らく、この人が厨房担当なのだろう。
 

「ありがとうございます。 すごいボリュームありますね」

「うちは安くて沢山食えるのがウリだからね。 それに、娘がなんだかゴツい人が来たと言っていたし」

「はは、ありがとうございます」

「アンタは冒険者かい?」

「いえ、僕は蒼天の風というギルドで、料理や掃除をしている用務員です」

「ほう? 中々に厳つい用務員がいたもんだね」

「良く言われます」

「ああ、食事前に話しかけて悪かったね。 存分に食ってくれ」

「はい、いただきます」


 おばちゃんに断りを入れ、シュージはステーキをナイフでカットし、口に運んだ。

 この世界に来てから何度も食べた肉ではあるが、何度食べてもその旨味には驚かされる。

 さらに、丁度いい火加減と塩加減で味付けされたステーキはとても美味しく、この量と価格で前世で売られていたら、行列のできる人気店になっていたかもしれない。

 結果、自然と手が進み、割とあっという間にステーキはシュージの胃の中へと消えていった。

 
「ふぅ……」

「あ、お皿お下げしますね!」

「ありがとうございます。 この辺りに来て始めてお店の料理を食べたんですけど、とても美味しかったです」

「それは良かったです! この辺の人じゃないんですね?」

「そうですね。 かなり遠方の独特な文化がある場所から来ました」

「へぇ~、そっちでは何をしてたんですか?」

「一応、ここのような大衆食堂で厨房を任されていました。 後は軽い格闘技を趣味程度に」

「お兄さんも料理人なんですね! あ、それならちょっと聞いてもいいですか?」

「何でしょうか?」

「最近、お客さんにお酒のつまみになる、手軽に食べれるメニューが欲しいって言われて、どうしよっかなーって思ってるんですよ。 簡単に作れそうなもので何かないですかね?」

「お酒のつまみですか……」


 この世界のお酒は、基本的にはエールと果実酒、後はワインが流通していて、この食堂にもそれらがメニューには入っている。

 ちなみに、ギルドでも飲めるメンバーがたまに晩酌をする時があり、それに参加したり、おつまみを作ったりした事もある。

 
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