25 / 152
#25 異世界初外食
しおりを挟む
時刻は午後の14時くらい。
本日、シュージは街にある、もくもく亭という名前の大衆食堂を訪れていた。
というのも、なんだかんだでこの世界に来てから、まだこの世界の料理人が作るご飯を食べた事が無く、単純な興味と何となく今日は外食をしたい気分だったので、ギルドメンバーに作った昼食は自分では食べずにここまでやって来た。
――カランコロン
「いらっしゃいませー!」
という事で、もくもく亭の趣のある木製の扉を開けると、小気味いい木簡の音が鳴り響き、若いメイド服のような給仕服を着た女性の店員が出てきてくれた。
「わっ、逞しい人ですねっ。 あ、何名ですか?」
「1人です」
「ありがとうございます! 席は沢山空いてますので、空いてるお席にどうぞ! お席にメニューも置いてありますので、決まったら声をかけてください!」
「ありがとうございます」
店員さんにお礼を言い、シュージは2人掛けのテーブル席に腰かけた。
もう昼間のピークの時間を過ぎたからか、店内にはそこまで人はおらず、いても既に食事を終えて談笑している人がほとんどだった。
とりあえず、シュージも何か頼もうと、テーブルに置いてあったメニューを見てみる。
そこには、ステーキや酒蒸し、スパゲッティといった一品料理が10種類ほど書かれていて、後は飲み物も同じくらい書かれていた。
値段は大衆食堂という事もあってかなりリーズナブルで、あまり作るのに時間がかからない料理がほとんどだった。
「すみません」
「はい! お決まりですか?」
「えっと、このバッファローのステーキを一つ」
「はい! お飲み物はどうします?」
「では、オレンジジュースを」
「はーい! すぐお持ちしますね!」
元気な店員さんに注文を伝え、5分ちょっと待っていると、300グラムくらいはありそうかという大きなステーキが運ばれてきた。
「はい、お待ち」
そして、それを運んできてくれたのは、先程の店員さんではなく、エプロンをかけた恰幅のいいおばちゃんだった。
恐らく、この人が厨房担当なのだろう。
「ありがとうございます。 すごいボリュームありますね」
「うちは安くて沢山食えるのがウリだからね。 それに、娘がなんだかゴツい人が来たと言っていたし」
「はは、ありがとうございます」
「アンタは冒険者かい?」
「いえ、僕は蒼天の風というギルドで、料理や掃除をしている用務員です」
「ほう? 中々に厳つい用務員がいたもんだね」
「良く言われます」
「ああ、食事前に話しかけて悪かったね。 存分に食ってくれ」
「はい、いただきます」
おばちゃんに断りを入れ、シュージはステーキをナイフでカットし、口に運んだ。
この世界に来てから何度も食べた肉ではあるが、何度食べてもその旨味には驚かされる。
さらに、丁度いい火加減と塩加減で味付けされたステーキはとても美味しく、この量と価格で前世で売られていたら、行列のできる人気店になっていたかもしれない。
結果、自然と手が進み、割とあっという間にステーキはシュージの胃の中へと消えていった。
「ふぅ……」
「あ、お皿お下げしますね!」
「ありがとうございます。 この辺りに来て始めてお店の料理を食べたんですけど、とても美味しかったです」
「それは良かったです! この辺の人じゃないんですね?」
「そうですね。 かなり遠方の独特な文化がある場所から来ました」
「へぇ~、そっちでは何をしてたんですか?」
「一応、ここのような大衆食堂で厨房を任されていました。 後は軽い格闘技を趣味程度に」
「お兄さんも料理人なんですね! あ、それならちょっと聞いてもいいですか?」
「何でしょうか?」
「最近、お客さんにお酒のつまみになる、手軽に食べれるメニューが欲しいって言われて、どうしよっかなーって思ってるんですよ。 簡単に作れそうなもので何かないですかね?」
「お酒のつまみですか……」
この世界のお酒は、基本的にはエールと果実酒、後はワインが流通していて、この食堂にもそれらがメニューには入っている。
ちなみに、ギルドでも飲めるメンバーがたまに晩酌をする時があり、それに参加したり、おつまみを作ったりした事もある。
本日、シュージは街にある、もくもく亭という名前の大衆食堂を訪れていた。
というのも、なんだかんだでこの世界に来てから、まだこの世界の料理人が作るご飯を食べた事が無く、単純な興味と何となく今日は外食をしたい気分だったので、ギルドメンバーに作った昼食は自分では食べずにここまでやって来た。
――カランコロン
「いらっしゃいませー!」
という事で、もくもく亭の趣のある木製の扉を開けると、小気味いい木簡の音が鳴り響き、若いメイド服のような給仕服を着た女性の店員が出てきてくれた。
「わっ、逞しい人ですねっ。 あ、何名ですか?」
「1人です」
「ありがとうございます! 席は沢山空いてますので、空いてるお席にどうぞ! お席にメニューも置いてありますので、決まったら声をかけてください!」
「ありがとうございます」
店員さんにお礼を言い、シュージは2人掛けのテーブル席に腰かけた。
もう昼間のピークの時間を過ぎたからか、店内にはそこまで人はおらず、いても既に食事を終えて談笑している人がほとんどだった。
とりあえず、シュージも何か頼もうと、テーブルに置いてあったメニューを見てみる。
そこには、ステーキや酒蒸し、スパゲッティといった一品料理が10種類ほど書かれていて、後は飲み物も同じくらい書かれていた。
値段は大衆食堂という事もあってかなりリーズナブルで、あまり作るのに時間がかからない料理がほとんどだった。
「すみません」
「はい! お決まりですか?」
「えっと、このバッファローのステーキを一つ」
「はい! お飲み物はどうします?」
「では、オレンジジュースを」
「はーい! すぐお持ちしますね!」
元気な店員さんに注文を伝え、5分ちょっと待っていると、300グラムくらいはありそうかという大きなステーキが運ばれてきた。
「はい、お待ち」
そして、それを運んできてくれたのは、先程の店員さんではなく、エプロンをかけた恰幅のいいおばちゃんだった。
恐らく、この人が厨房担当なのだろう。
「ありがとうございます。 すごいボリュームありますね」
「うちは安くて沢山食えるのがウリだからね。 それに、娘がなんだかゴツい人が来たと言っていたし」
「はは、ありがとうございます」
「アンタは冒険者かい?」
「いえ、僕は蒼天の風というギルドで、料理や掃除をしている用務員です」
「ほう? 中々に厳つい用務員がいたもんだね」
「良く言われます」
「ああ、食事前に話しかけて悪かったね。 存分に食ってくれ」
「はい、いただきます」
おばちゃんに断りを入れ、シュージはステーキをナイフでカットし、口に運んだ。
この世界に来てから何度も食べた肉ではあるが、何度食べてもその旨味には驚かされる。
さらに、丁度いい火加減と塩加減で味付けされたステーキはとても美味しく、この量と価格で前世で売られていたら、行列のできる人気店になっていたかもしれない。
結果、自然と手が進み、割とあっという間にステーキはシュージの胃の中へと消えていった。
「ふぅ……」
「あ、お皿お下げしますね!」
「ありがとうございます。 この辺りに来て始めてお店の料理を食べたんですけど、とても美味しかったです」
「それは良かったです! この辺の人じゃないんですね?」
「そうですね。 かなり遠方の独特な文化がある場所から来ました」
「へぇ~、そっちでは何をしてたんですか?」
「一応、ここのような大衆食堂で厨房を任されていました。 後は軽い格闘技を趣味程度に」
「お兄さんも料理人なんですね! あ、それならちょっと聞いてもいいですか?」
「何でしょうか?」
「最近、お客さんにお酒のつまみになる、手軽に食べれるメニューが欲しいって言われて、どうしよっかなーって思ってるんですよ。 簡単に作れそうなもので何かないですかね?」
「お酒のつまみですか……」
この世界のお酒は、基本的にはエールと果実酒、後はワインが流通していて、この食堂にもそれらがメニューには入っている。
ちなみに、ギルドでも飲めるメンバーがたまに晩酌をする時があり、それに参加したり、おつまみを作ったりした事もある。
2,194
お気に入りに追加
3,988
あなたにおすすめの小説
異世界屋台経営-料理一本で異世界へ
芽狐
ファンタジー
松原 真人(35歳)は、ある夜に自分の料理屋で亡くなってしまう。
そして、次に目覚めた場所は、見たことない木で出来た一軒家のような場所であった。そこで、出会ったトンボという男と異世界を津々浦々屋台を引きながら回り、色んな異世界人に料理を提供していくお話です。
更新日時:不定期更新18時投稿
よかったらお気に入り登録・感想などよろしくお願いします。
屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。
彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。
父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。
わー、凄いテンプレ展開ですね!
ふふふ、私はこの時を待っていた!
いざ行かん、正義の旅へ!
え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。
でも……美味しいは正義、ですよね?
2021/02/19 第一部完結
2021/02/21 第二部連載開始
2021/05/05 第二部完結
幸子ばあさんの異世界ご飯
雨夜りょう
ファンタジー
「幸子さん、異世界に行ってはくれませんか」
伏見幸子、享年88歳。家族に見守られ天寿を全うしたはずだったのに、目の前の男は突然異世界に行けというではないか。
食文化を発展させてほしいと懇願され、幸子は異世界に行くことを決意する。
異世界のんびり料理屋経営
芽狐
ファンタジー
主人公は日本で料理屋を経営している35歳の新垣拓哉(あらかき たくや)。
ある日、体が思うように動かず今にも倒れそうになり、病院で検査した結果末期癌と診断される。
それなら最後の最後まで料理をお客様に提供しようと厨房に立つ。しかし体は限界を迎え死が訪れる・・・
次の瞬間目の前には神様がおり「異世界に赴いてこちらの住人に地球の料理を食べさせてほしいのじゃよ」と言われる。
人間・エルフ・ドワーフ・竜人・獣人・妖精・精霊などなどあらゆる種族が訪れ食でみんなが幸せな顔になる物語です。
「面白ければ、お気に入り登録お願いします」
今日も誰かが飯を食いに来る。異世界スローライフ希望者の憂鬱。
KBT
ファンタジー
神の気まぐれで異世界転移した荻野遼ことリョウ。
神がお詫びにどんな能力もくれると言う中で、リョウが選んだのは戦闘能力皆無の探索能力と生活魔法だった。
現代日本の荒んだ社会に疲れたリョウは、この地で素材採取の仕事をしながら第二の人生をのんびりと歩もうと決めた。
スローライフ、1人の自由な暮らしに憧れていたリョウは目立たないように、優れた能力をひた隠しにしつつ、街から少し離れた森の中でひっそりと暮らしていた。
しかし、何故か飯時になるとやって来る者達がリョウにのんびりとした生活を許してくれないのだ。
これは地味に生きたいリョウと派手に生きている者達の異世界物語です。
異世界でお取り寄せ生活
マーチ・メイ
ファンタジー
異世界の魔力不足を補うため、年に数人が魔法を貰い渡り人として渡っていく、そんな世界である日、日本で普通に働いていた橋沼桜が選ばれた。
突然のことに驚く桜だったが、魔法を貰えると知りすぐさま快諾。
貰った魔法は、昔食べて美味しかったチョコレートをまた食べたいがためのお取り寄せ魔法。
意気揚々と異世界へ旅立ち、そして桜の異世界生活が始まる。
貰った魔法を満喫しつつ、異世界で知り合った人達と緩く、のんびりと異世界生活を楽しんでいたら、取り寄せ魔法でとんでもないことが起こり……!?
そんな感じの話です。
のんびり緩い話が好きな人向け、恋愛要素は皆無です。
※小説家になろう、カクヨムでも同時掲載しております。
料理がしたいので、騎士団の任命を受けます!
ハルノ
ファンタジー
過労死した主人公が、異世界に飛ばされてしまいました
。ここは天国か、地獄か。メイド長・ジェミニが丁寧にもてなしてくれたけれども、どうも味覚に違いがあるようです。異世界に飛ばされたとわかり、屋敷の主、領主の元でこの世界のマナーを学びます。
令嬢はお菓子作りを趣味とすると知り、キッチンを借りた女性。元々好きだった料理のスキルを活用して、ジェミニも領主も、料理のおいしさに目覚めました。
そのスキルを生かしたいと、いろいろなことがあってから騎士団の料理係に就職。
ひとり暮らしではなかなか作ることのなかった料理も、大人数の料理を作ることと、満足そうに食べる青年たちの姿に生きがいを感じる日々を送る話。
※表紙は「かんたん表紙メーカー」を使用しています。
昔助けた弱々スライムが最強スライムになって僕に懐く件
なるとし
ファンタジー
最強スライムぷるんくんとお金を稼ぎ、美味しいものを食べ、王国を取り巻く問題を解決してスローライフを目指せ!
最強種が集うSSランクのダンジョンで、レオという平民の男の子は最弱と言われるスライム(ぷるんくん)を救った。
レオはぷるんくんを飼いたいと思ったが、テイムが使えないため、それは叶わなかった。
レオはぷるんくんと約束を交わし、別れる。
数年が過ぎた。
レオは両親を失い、魔法の才能もない最弱平民としてクラスの生徒たちにいじめられるハメになる。
身も心もボロボロになった彼はクラスのいじめっ子に煽られ再びSSランクのダンジョンへ向かう。
ぷるんくんに会えるという色褪せた夢を抱いて。
だが、レオを迎えたのは自分を倒そうとするSSランクの強力なモンスターだった。
もう死を受け入れようとしたが、
レオの前にちっこい何かが現れた。
それは自分が幼い頃救ったぷるんくんだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる