それぞれの事情

紫陽花

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第八章 爽

どうしようか……

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 私、山内爽は今年二十七才になったイベント会社のOL。
半年前に二十一才の大学生矢島健人と付き合い始めた。
遊びなんかじゃない。
好きになってしまった。
どうしようも無く好きなの。
浮かれている!
気持ち良いくらいに
**************
 10ヶ月前に遡る。
アルバイトで来ている矢島健人に恋愛相談に乗って欲しいと突然言われた。
矢島は一年ぐら前からバイトに来ている大学生だ。
仕事が出来て人懐っこい性格となれば誰からも好かれる……
そして外見はなかなかのイケメン!
もう~社内のお姉さん達が黙っているわけ無い。
って!私もそのひとりの訳だが。
然し、矢島は私と同期の夏川絵美に惹かれていた。
何かとちょっかいを出しているが
全く相手にされず焦れていたので、その時はごく一般的なアドバイスをして、若いんだからおばさん相手に悩むなと言ったら、私達の年齢はまだおばさんでは無いと、逆に説教為れてしまった。
私はそんな矢島の姿に、
切ない想いをまた募らせてしまうのだ。
***************
今日もあなたの姿を追っている。
でも、あなたの瞳は違う誰かに釘付け。
ムクムクと起きてくるしょうもないヤキモチが嫌い。
だから、せめて揶揄うぐらい
なんだって言うの?
少し捻くれた私の恋心。
**************
夏川絵美は同期の中でもよく話す方だが、さすがにお互いの恋バナまで話す仲ではない。
そりゃそうでしょ、三十路に手が届こうとしている女はそう簡単に胸の内は暴露しないのだ。
プライドもあるし……

ある日、絵美と昼休みが一緒になり、ふたりで社食に向かうエレベーターの中
「最近さ、バイトの矢島くんに絡まれていて困ってるんだよ。」
絵美は溜息交じりに呟いた。

「ああ見てても判るよ。良いじゃないよ、話す分には結構イケメンだし性格だって良いよ。」
「ふっ~他人事だと思って。
私いるんだよね…… 
付き合っている奴がさ。」
爽は思いがけない絵美の言葉に
思わず絶句していると

「何驚く事?いて可笑しくない年です!三十路ですよ~わたしたち!。」
「三十路ねぇまだです!とは言えないよね~クゥ~ 
それで同じ会社の人?」

絵美はケラケラ笑いながら
「秘密~秘密~フフフ教えない~ 
さて、何食べようかなぁ。」
券売機の前で迷っている絵美の背中を見つめながら、ふと矢島の顔を想い浮かべた。

ショックだよなぁ。
こりゃ泣くかな~。
泣く事は無いかもだけど、落ちこむわなぁ。
またまた相談乗るとこになるのかなぁ。
嫌なんだよねぇ。 
だって、あいつの辛そうな顔見ると、こっちが悲しくなるもん。

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