それぞれの事情

紫陽花

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第四章 鈴世

前触れもなく

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振られてから二カ月目に入ったある日
涙が止めどなく溢れてくる
涙腺崩壊だ……

朝起きると目やにで瞼がくっ付いて離れない
眼帯してマスクをして顔の殆どを隠し出勤
周りには花粉が酷くてと言い訳してやりすごす

フロアごとに小休憩場所が設置されている
のが今の鈴世には有りがたかった
一階上の休憩所に行きマスク眼帯をとり
一息つく
同僚に見られたら煩くて敵わない

どうでも良いネットニュースを見ながら
ぼーっとしていた
誰かが隣に座ったのは判ったが
この顔見られたく無いし
知らん顔していると

「鈴世先輩どうしたんすか?その酷すぎる顔」

徐に横を見ると課が違うのにやたら絡んでくる
後輩がニヤニヤ為ている

田向秋也だ!

「はいはい 不細工ですんません!
花粉症なんだよ!」

「何怒ってるんですか~ そう言えば
今日暇?ですか~ 今度の二課合同飲み会の
場所探し頼まれてつきあっ貰えます?
確か……」

そう言えば今朝聞いた気がした
一課から私 二課から田向何たら君だった~

「それなら聞いてるよ 今日?いいけど」
「はい!決まり 六時ロビー集合で良いね」
タメ口ですか?
別にいいけどね~

気晴らしになるかも
誰かと出かけるなんて
それも男だ

そんな事より話す事ないなぁ
アルコール入ったら崩れるかな
やっぱりウーロン茶だよね等
頭の中に渦巻く不安をお伴に
一階ロビーに降りていくと
田向秋也が先に待っていた

「お疲れさまッす 眼帯取れば?」
「何で?醜いアヒルの子なんです」
「それ違う!最後は白鳥になるんすよ
アハハあれは なれないでしょうに」

いちいち頭に来る 
「早く行かないと帰る!」

「ふくれ面してる~ブス顔だー
さて冗談はさておき ちょうど良い時間だな 行きましょう あそこ」
田向秋也は向かいのビルに出来たアジアン料理の店を指した

信号が変わった瞬間手を取られダッシュさせられた

そのままの勢いで店のなかに入いると
田向秋也は名前を言って予約為てあることを
告げると個室に通された

何となく安心したのを見透かすように
「これで泣けますから~アハハ」

ったくさっきから馬鹿笑いして
先輩で遊ぶな!

「はいはい 君相手に泣く理由無いし
冗談は置いといて結構人気だよねこの店
良く予約取れたね」

「まあね~捻じこんだ!大学の先輩がオーナーだからさ」
「嘘っ!本当」
「でた!嘘 本当
本当だよ!」

「いらっしゃいませ
オーナーの佐々木ゆずるです」

「初めまして 田向君と同じ会社に勤めております 沢 鈴世です 今日はご無理させてしまったようで申し訳ございません」

「いえいえ 秋也は弟みたいなもんですから
気になさらないで下さいね」
「ゆず!もう良いから 適当に下さい!
先輩ビールで良い?」
頷く鈴世を見て
「とりあえずビール二つ」

佐々木はニコニコ笑いながら
部屋を出て行った

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