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最終章・転生勇者編

第139話 次なる相手

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 アキラとの戦いから3日経過したが、ユウシの機嫌は悪いままだった。
 何も喋らず無言でイラついているユウシに、仲間たちも何と声をかけていいのかわからない。

(勝利……あれが勝利といえるようなものか……ッ!)

 ユウシはこれまで数々のモンスターや名のある悪人を相手にし、自分の力に自負をしていた。
 だからSランク冒険者と言えど、自分が勝利して当たり前のはずだった。
 だが、戦いが始まった途端の不意打ちにおくれを取り、自慢の魔法は耐えられ、最終的には勇者の盾を力任せに殴り壊されるという、勇者にあるまじき失態を晒してしまった。
 ユウシはジッとしておられず、雪辱を晴らすために動くことにした。

「次のSランクのところへ向かう。場所はどこだ?」

 ユウシたちは、次なる相手のいる場所へと向かうのだった。



 ***



 タイタンから離れた山奥。
 木の実が生い茂り、鳥がさえずる場所で、二つの影が高速で動いていた。
 一人は蒼い電撃を操るダークエルフの少年。もう一人はそれを必死に避けている少女である。

「ラン! また注意力が散漫になっているよ!」

 人間がまともに受ければ即死するレベルの電撃を笑顔で放つのは、魔王リッカ=ジード=エメラルド。嫉妬の魔剣レヴィアタンの所有者であり、電撃は魔剣の能力である。

「う゛ぅ~~~ ! ジー君が強いんッス!」

 愚痴をこぼしながらも、その攻撃を見事に避けきっている少女はSランク冒険者のラン・イーシン。魔王ジードの契約者にして恋人でもある。

 魔剣争奪戦にて敗北した二人は、あれ以来この調子で修行を重ねている。
 だが修行内容は恐ろしいもので、常に死と隣り合わせである。

「ほらほら頑張れー!」
「頑張るッス~!」

 顔だけ見れば少年と少女が仲良く戯れている風に見えなくもないのだが、周りが更地になっていく光景は、まるで地獄絵図だ。


 ***



「そろそろ誰かと模擬戦をしてみたいね」
「いっつも二人だけッスからね」

 休憩中、ジードが言った言葉にランが反応した。
 二人は確実に力を付けているのだが、いったいどれほどレベルアップしたのかは実感が無い。
 かといって、一番修行に付き合ってほしい人物は……。

「まあ彼が付き合ってくれるわけないか」
「リベンジもかねたいッスけどね~。"怠惰の化身"ッスからあの人」

 ダルンダルンの服を着た男を思い浮かべ、ため息をつく。
 ただ実際問題、実践訓練は行いたいところである。
 どこかにいい人物はいないかと考えていた時、唐突に声がかかった。

「――修行相手を探しているなら、おれが相手になろうか?」

 ランとジードが顔を向けると、ライトアーマーを着た男と、4人の女性が立っていた。
 ジードは頭に?を浮かべていたが、ランは「ん?」と何か心当たりがあるのか注意深くその男を見つめる。

「誰だい君たちは?」

 とりあえずジードは男たちの素性を知ろうと質問した。
 男は隠すこともなく名乗ろうとしたが、その前にランの脳内に電流が走った。

「おれは――」
「あっ! もしかして、転生者ッスか!?」

 その男――ユウシは前回と同じく言い当てられたことに驚きつつ肯定する。

「そうだ」
「やっぱそーッスか。どーりで――」
「?」
「いや、何でもないッス。それよりジー君。転生者と戦える機会なんて、そうそうないッスよ!」

 何かを言いかけたが、ランは口を閉じた。それよりもタイミングよく相手が現れたのだ。しかも転生者という絶好の相手だ。この機を逃す手はない。

「転生者か。面白い……ッ!」

 ジードも転生者と聞き、闘争心を燃やした。
 だがやる気を漲らせているのはユウシも同じである。

「時間がもったいない、早速やろうか」

 右手に剣を、左手に盾を持ち戦闘態勢を整えた。
 それを受け、ジードは嫉妬の魔剣レヴィアタンを逆手に構え、ランはいつでもスキルを発動できるよう準備をした。

「いくよ」
「いくッスよ!」

 転生者vs転移者の、第二戦が始まった。
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