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最終章・転生勇者編
第138話 不燃焼
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アキラが考えた秘策。
その名も"下手な鉄砲も全弾当てる作戦"である。
強く重い一撃ではなく、弱く速い一撃を大量に打ち込むという作戦とも呼べぬ作戦。
他人は「え、それが秘策?」と思うかもしれない。
だが、結果はどうだろう。
黄金の盾は砕け、地面に崩れ落ちていったのだ。
ならば間違いなく、これは成功である。
え、所詮は結果論だって?
そう思うヤツには教えてあげよう。
結果論だろうが何だろうが、成功すればこっちの勝ちである。
「…………」
壊れた盾を見つめたままユウシは動かなかった。
正直驚いてはいる。が、取り乱してはいない。
目線を盾からアキラに移すと、ユウシは口を開いた。
「まさか本当に壊れるとは思わなかったな。けど……」
途中で口を紡ぐと、ユウシはおもむろに壊れた盾に魔力を流した。
すると盾の破片が金色に光を発しだし、ユウシの手元に集まっていく。
盾は再形成され、数秒で元通りとなった。
「残念だが、この盾は魔力を与えれば何度でも再生できる」
勇者の剣と盾には魔剣のように"固有能力"が備わっている。
また、それと同時に"共通能力"も存在している。
それが『魔力再生』だ。
自身の魔力を盾に流すことで、たとえミクロの粒子になろうと再生することが可能。もちろん剣も同じだ。
「少々驚きはしたが、もう油断はしない。
今度はこちらの番だッ!」
ユウシは剣を前に構える姿勢に変更。
荒々しい戦法に面食らいはしたが、相手のスタイルは理解できた。
ここから、ユウシの反撃が始まる。
――かと思われた。
「降参する」
両手を上げたアキラの口から出たのは、その言葉だった。
「…………は?」
「オレの負けだ。こんな拳じゃ、もう殴れねぇよ」
そう言いながら見せた両拳は見るからにボロボロで、一部は骨が見えるほどの重傷であった。
アキラの連打戦法は強力であった。しかし、まだこれは開発途中の技だ。その要因は何を隠そう拳の耐久力なのだ。
最大解放で防御力は上がっているとはいえ、合計4000万を超える攻撃力を叩き出した連撃。
だが強力な反面、二が一に、十が一になるほどの速さで打つ拳の負担は現在の防御力ではカバーしきれないのである。
「盾は壊せた。けどそれ止まりだ。
オレの拳はボロボロ。たとえその盾が再生しなくてもオレに戦える余力はすでにない。
――敗北は見えてる。これ以上、無理することはねぇだろ」
それは冷静な判断だった。
以前であれば何も考えずに続行していたであろうが、アキラも精神的に成長しているのである。
が、それはあくまでもアキラの話であって、ユウシからすれば不服もいいところだ。
不完全燃焼どころか、燃焼すらできてないのだ。
当然文句は出る。
「勝手に決めるな! そもそもこれは、おれの修行であって――」
「でも、もう結果は見えてるだろ」
「ッ!」
ユウシはアキラの言葉に押し黙ってしまった。
図星だったからだ。
「拳の使えないオレは蹴り技を多用する。蹴りの威力は強いがスピードは出ねぇ。盾は壊せないし、壊せたとしても再生される。
そもそもオレが攻撃を当てられてんのは、お前への不意打ちが大きい。まともにやればこっちが危うい。
パンチは使えない。攻撃を当てられるかも不明。そんな悪条件で命を懸けても意味はない。
だったらオレは、これを糧にして次に活かす」
アキラは言い終わると、背を向けて去っていこうとした。
消化不良だ。が、アキラの言うことは正しく、自分が勝つことがわかりきっている戦いは無駄でしかない。
強いて言えばSランクの実力を理解できたのが、唯一の収穫だろうか。
「ふぅ……」と一つ息を吐き、ユウシもこの場を去ろうとしたとき、「あ、そうだそうだ」と、アキラが一度だけ振り返った。
「おまえ強ぇけど、アイツほどじゃないぞ?」
「アイツ?」とユウシは眉を寄せて聞き返した。
「いずれ会うだろうさ。
だが、気を付けろよ? 自分の力を疑っちまうほど強ぇからな」
その言葉を最後に、もうアキラが振り向くことはなかった。
「痛ってぇ」とぼやきながら去っていく背中を見つめながら、勝利と呼んでいいのかもわからないまま、ユウシはただ茫然と立ち尽くしたのだった。
その名も"下手な鉄砲も全弾当てる作戦"である。
強く重い一撃ではなく、弱く速い一撃を大量に打ち込むという作戦とも呼べぬ作戦。
他人は「え、それが秘策?」と思うかもしれない。
だが、結果はどうだろう。
黄金の盾は砕け、地面に崩れ落ちていったのだ。
ならば間違いなく、これは成功である。
え、所詮は結果論だって?
そう思うヤツには教えてあげよう。
結果論だろうが何だろうが、成功すればこっちの勝ちである。
「…………」
壊れた盾を見つめたままユウシは動かなかった。
正直驚いてはいる。が、取り乱してはいない。
目線を盾からアキラに移すと、ユウシは口を開いた。
「まさか本当に壊れるとは思わなかったな。けど……」
途中で口を紡ぐと、ユウシはおもむろに壊れた盾に魔力を流した。
すると盾の破片が金色に光を発しだし、ユウシの手元に集まっていく。
盾は再形成され、数秒で元通りとなった。
「残念だが、この盾は魔力を与えれば何度でも再生できる」
勇者の剣と盾には魔剣のように"固有能力"が備わっている。
また、それと同時に"共通能力"も存在している。
それが『魔力再生』だ。
自身の魔力を盾に流すことで、たとえミクロの粒子になろうと再生することが可能。もちろん剣も同じだ。
「少々驚きはしたが、もう油断はしない。
今度はこちらの番だッ!」
ユウシは剣を前に構える姿勢に変更。
荒々しい戦法に面食らいはしたが、相手のスタイルは理解できた。
ここから、ユウシの反撃が始まる。
――かと思われた。
「降参する」
両手を上げたアキラの口から出たのは、その言葉だった。
「…………は?」
「オレの負けだ。こんな拳じゃ、もう殴れねぇよ」
そう言いながら見せた両拳は見るからにボロボロで、一部は骨が見えるほどの重傷であった。
アキラの連打戦法は強力であった。しかし、まだこれは開発途中の技だ。その要因は何を隠そう拳の耐久力なのだ。
最大解放で防御力は上がっているとはいえ、合計4000万を超える攻撃力を叩き出した連撃。
だが強力な反面、二が一に、十が一になるほどの速さで打つ拳の負担は現在の防御力ではカバーしきれないのである。
「盾は壊せた。けどそれ止まりだ。
オレの拳はボロボロ。たとえその盾が再生しなくてもオレに戦える余力はすでにない。
――敗北は見えてる。これ以上、無理することはねぇだろ」
それは冷静な判断だった。
以前であれば何も考えずに続行していたであろうが、アキラも精神的に成長しているのである。
が、それはあくまでもアキラの話であって、ユウシからすれば不服もいいところだ。
不完全燃焼どころか、燃焼すらできてないのだ。
当然文句は出る。
「勝手に決めるな! そもそもこれは、おれの修行であって――」
「でも、もう結果は見えてるだろ」
「ッ!」
ユウシはアキラの言葉に押し黙ってしまった。
図星だったからだ。
「拳の使えないオレは蹴り技を多用する。蹴りの威力は強いがスピードは出ねぇ。盾は壊せないし、壊せたとしても再生される。
そもそもオレが攻撃を当てられてんのは、お前への不意打ちが大きい。まともにやればこっちが危うい。
パンチは使えない。攻撃を当てられるかも不明。そんな悪条件で命を懸けても意味はない。
だったらオレは、これを糧にして次に活かす」
アキラは言い終わると、背を向けて去っていこうとした。
消化不良だ。が、アキラの言うことは正しく、自分が勝つことがわかりきっている戦いは無駄でしかない。
強いて言えばSランクの実力を理解できたのが、唯一の収穫だろうか。
「ふぅ……」と一つ息を吐き、ユウシもこの場を去ろうとしたとき、「あ、そうだそうだ」と、アキラが一度だけ振り返った。
「おまえ強ぇけど、アイツほどじゃないぞ?」
「アイツ?」とユウシは眉を寄せて聞き返した。
「いずれ会うだろうさ。
だが、気を付けろよ? 自分の力を疑っちまうほど強ぇからな」
その言葉を最後に、もうアキラが振り向くことはなかった。
「痛ってぇ」とぼやきながら去っていく背中を見つめながら、勝利と呼んでいいのかもわからないまま、ユウシはただ茫然と立ち尽くしたのだった。
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