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最終章・転生勇者編
第132話 攻撃したのは
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前回のあらすじ。
シリアスな感じで「戦え!」って言ったけど、フツーに断られた。
はい、回想終了。
・・・・・・・
・・・・・
・・・
気まずい。
その言葉は、まさに今この瞬間にピッタリの言葉である。
「そんな元気よく『戦え!』って言われてものぉ……無理」
「……いや、でも決闘してほしくて」
「決闘って……ここ街中じゃぞ? 周りに迷惑じゃろ」
魔王に常識を説かれる勇者の図である。
「でも」
「『でも』じゃない。出直してきなさい!」
「いやだ!」
「かァ~! なんて聞き分けの悪い子じゃ!」
「いやお母さんかよオイ」
魔王と勇者のやり取りに思わず突っ込んでしまったセイバーである。
が、悲しいかな。正しいのは魔王タイラントである。
人通りの多いこの中でいきなり戦おうものなら被害が甚大となることは間違いない。
というか薄々感じているのだが、この魔王もしかして……
((((人、襲う気なくない?))))
ユウシ以外の4人が同じことを思った。
さっきだって普通に店の主人と平和にやり取りしていたし、今だって決闘を断ったのは『面倒』など私的な理由ではなく、『周りの迷惑になる』という人間のことを考えてのことだ。
魔王タイラントが何を思っているのかはわからないが、少なくとも人間を襲う気はないと判断しても良い気がしてきた。
が、それはあくまでもセイバーたち4人の考えである。
18年間魔王のことを思ってきたユウシとは気持ちの入りようが違うのだ。
散々フラれ続け、ようやく努力が実りそうなこの瞬間。
わずかな希望の光を失いかけているユウシがとる行動は、いたって単純であった。
「ええい何でもいい! とりあえず、おれと戦えぇえええッッ!」
「「「「まさかの強行突破ッッ!?」」」」
その行動はあまりに突然すぎた。仲間たちもすでに警戒を解いてしまっていたため加勢することも止めに入ることもできない。
ユウシは一瞬で魔王タイラントへと距離を詰めると、指輪状に収められていた"勇者の剣"を展開した。
勇者の武器である剣と盾は、普段は指輪の形になっているのだ。
「やれやれ、しょうがないのぉ――」
無視したいところであるが、周りにはまだ人がいる。
先ほどのやり取りでやじ馬が増えたようで、このままだと犠牲が出てしまうかもしれない。
魔王タイラントは仕方なく迎撃しようとした。
(ん?)
だが、タイラントは視線の先に映る光景を見て、攻撃態勢を解いた。
その行動に、ユウシも驚いた。
(なぜ攻撃をやめた? まさか、おれなど敵として見てもいないと言うことかッッ!?)
その結論に至り、こめかみに血管が浮き出る。
(ならば貴様を真っ二つにしてくれるわッッ!)
ユウシは頭から真っ二つにしようと剣を振り下ろす――ことにはならなかった。
ユウシが攻撃する前に、別の攻撃が通ったのである。
自分の脳天に。
「――へぶんずッッ!!?」
そのとき、鳴ってはいけない音がした。
なんか、絶対頭から鳴っちゃいけない音。
バキッ! とか、バコンッ! とかそんな音ではない。
バkヲアjウィオジャイオジェアジョ;アアッッ!!
である。
まー要するに言葉では言い表せない破壊音。いや、破滅音だろうか。
そんな恐怖の音を鳴らすほどの攻撃を受けたユウシは、地面へとまっしぐら。
頭どころか上半身が全て地面にめり込むという大惨事となってしまったのであった。
「「「「ユウシーーッッ!?」」」」
仲間の4人は急いでユウシのもとへ駆けつけた。
魔王タイラントは、ユウシと呼ばれた男に背を向け、どうどうと歩き去っていったのだった。
***
魔王タイラント。というか、タマコが歩いていくと、そこには予想していた人物が立っていた。
「助けてくれてありがとう――主殿」
「おう」
タマコの感謝の言葉に短く返したのは、タローである。
その手には、鞭の形状に変化した怠惰の魔剣が握られていた。
時間を少し戻すと、先ほどユウシが受けた攻撃はタローのものだ。
冒険者の依頼を一人で終わらせてきたタロー。
帰り道を一人歩いていると、遠くの方で男と言い合いになっているタマコを発見。
すると、男が急に襲い掛かったではないか。
タローはそいつを敵だと判断すると、瞬時に魔剣を鞭へと変化。
凄まじい力で振られた鞭は大勢いる人をかいくぐり、ユウシの脳天へと直撃したのであった。
「あやつの頭になにやら降ってきたのが見えたから何だと思ったぞ? まぁ魔剣の気配がしたからすぐにわかったがな」
と、タマコは笑って話していた。
けれど、タローの攻撃はすさまじい速さのものだった。
タマコが見切れたのは、発達した動体視力と自分の攻撃がスピード特化だったからである。
ユウシは攻撃に気付いていなかっただけであるが、仲間の女性ら4人には突然ユウシが地面にめり込んだように見えただろう。
だから、ユウシたちはタローの存在など認知できなかった。
だから彼らには、タマコが何かをしたようにしか思えないだろう。
シリアスな感じで「戦え!」って言ったけど、フツーに断られた。
はい、回想終了。
・・・・・・・
・・・・・
・・・
気まずい。
その言葉は、まさに今この瞬間にピッタリの言葉である。
「そんな元気よく『戦え!』って言われてものぉ……無理」
「……いや、でも決闘してほしくて」
「決闘って……ここ街中じゃぞ? 周りに迷惑じゃろ」
魔王に常識を説かれる勇者の図である。
「でも」
「『でも』じゃない。出直してきなさい!」
「いやだ!」
「かァ~! なんて聞き分けの悪い子じゃ!」
「いやお母さんかよオイ」
魔王と勇者のやり取りに思わず突っ込んでしまったセイバーである。
が、悲しいかな。正しいのは魔王タイラントである。
人通りの多いこの中でいきなり戦おうものなら被害が甚大となることは間違いない。
というか薄々感じているのだが、この魔王もしかして……
((((人、襲う気なくない?))))
ユウシ以外の4人が同じことを思った。
さっきだって普通に店の主人と平和にやり取りしていたし、今だって決闘を断ったのは『面倒』など私的な理由ではなく、『周りの迷惑になる』という人間のことを考えてのことだ。
魔王タイラントが何を思っているのかはわからないが、少なくとも人間を襲う気はないと判断しても良い気がしてきた。
が、それはあくまでもセイバーたち4人の考えである。
18年間魔王のことを思ってきたユウシとは気持ちの入りようが違うのだ。
散々フラれ続け、ようやく努力が実りそうなこの瞬間。
わずかな希望の光を失いかけているユウシがとる行動は、いたって単純であった。
「ええい何でもいい! とりあえず、おれと戦えぇえええッッ!」
「「「「まさかの強行突破ッッ!?」」」」
その行動はあまりに突然すぎた。仲間たちもすでに警戒を解いてしまっていたため加勢することも止めに入ることもできない。
ユウシは一瞬で魔王タイラントへと距離を詰めると、指輪状に収められていた"勇者の剣"を展開した。
勇者の武器である剣と盾は、普段は指輪の形になっているのだ。
「やれやれ、しょうがないのぉ――」
無視したいところであるが、周りにはまだ人がいる。
先ほどのやり取りでやじ馬が増えたようで、このままだと犠牲が出てしまうかもしれない。
魔王タイラントは仕方なく迎撃しようとした。
(ん?)
だが、タイラントは視線の先に映る光景を見て、攻撃態勢を解いた。
その行動に、ユウシも驚いた。
(なぜ攻撃をやめた? まさか、おれなど敵として見てもいないと言うことかッッ!?)
その結論に至り、こめかみに血管が浮き出る。
(ならば貴様を真っ二つにしてくれるわッッ!)
ユウシは頭から真っ二つにしようと剣を振り下ろす――ことにはならなかった。
ユウシが攻撃する前に、別の攻撃が通ったのである。
自分の脳天に。
「――へぶんずッッ!!?」
そのとき、鳴ってはいけない音がした。
なんか、絶対頭から鳴っちゃいけない音。
バキッ! とか、バコンッ! とかそんな音ではない。
バkヲアjウィオジャイオジェアジョ;アアッッ!!
である。
まー要するに言葉では言い表せない破壊音。いや、破滅音だろうか。
そんな恐怖の音を鳴らすほどの攻撃を受けたユウシは、地面へとまっしぐら。
頭どころか上半身が全て地面にめり込むという大惨事となってしまったのであった。
「「「「ユウシーーッッ!?」」」」
仲間の4人は急いでユウシのもとへ駆けつけた。
魔王タイラントは、ユウシと呼ばれた男に背を向け、どうどうと歩き去っていったのだった。
***
魔王タイラント。というか、タマコが歩いていくと、そこには予想していた人物が立っていた。
「助けてくれてありがとう――主殿」
「おう」
タマコの感謝の言葉に短く返したのは、タローである。
その手には、鞭の形状に変化した怠惰の魔剣が握られていた。
時間を少し戻すと、先ほどユウシが受けた攻撃はタローのものだ。
冒険者の依頼を一人で終わらせてきたタロー。
帰り道を一人歩いていると、遠くの方で男と言い合いになっているタマコを発見。
すると、男が急に襲い掛かったではないか。
タローはそいつを敵だと判断すると、瞬時に魔剣を鞭へと変化。
凄まじい力で振られた鞭は大勢いる人をかいくぐり、ユウシの脳天へと直撃したのであった。
「あやつの頭になにやら降ってきたのが見えたから何だと思ったぞ? まぁ魔剣の気配がしたからすぐにわかったがな」
と、タマコは笑って話していた。
けれど、タローの攻撃はすさまじい速さのものだった。
タマコが見切れたのは、発達した動体視力と自分の攻撃がスピード特化だったからである。
ユウシは攻撃に気付いていなかっただけであるが、仲間の女性ら4人には突然ユウシが地面にめり込んだように見えただろう。
だから、ユウシたちはタローの存在など認知できなかった。
だから彼らには、タマコが何かをしたようにしか思えないだろう。
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