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最終章・転生勇者編
第130話 のちに罪となる無知
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留守。
また留守。
またまた留守。
またまたまた留守。
またまたまたまた留守。
またまたまたまたまた留守。
またまたまたまたまたまた留守。
魔王が留守の七連続。
一度や二度ならまだしも、さすがに七回連続では勇者だろうが何だろうが心が折れるってもんである。
そんなこんなで一週間後。ようやく魔王がSランク冒険者の使い魔になったことが知らされたのだった。
「そうか、Sランク冒険者の……」
その事実を聞いてユウシはすごく落胆した。
使い魔の契約を結ぶとモンスターは主人を裏切ることは無い。
契約に必要なのは『絆』である。心を通わせた者にしかモンスターは契約できない。
そして契約者はSランク冒険者だ。ガラの悪い奴もいるが、全員が世界の平和のために動いている。
つまり、魔王が主人を裏切り人々を襲うことは100%無い。
さらに言えば、ユウシの目標である『魔王討伐』も結果的に果たされているのだ。
なぜなら『魔王討伐』は人々の平和のために行おうとしていたこと。魔王が人を襲わないという時点ですでに世界平和は実現されているのである。
この瞬間、ユウシは勇者としての使命を終えた。
本人の知らぬところで"勇者の魔王討伐の旅"は幕引きとなったのだ。
「何年も頑張ったんだけどな……」
遠くにある空を眺めながら言葉は口からこぼれていた。
ようやく自分にスポットライトが当たるのだと理解したあの日。
みんなから羨望の眼差しと称賛の声で溢れるのだと興奮したあの日。
才能に満ち溢れ、日に日に強さを実感したあの日。
四人の仲間と共に魔王を討伐しようと誓ったあの日。
どれもこれも転生前ではありえない出来事だ。
だから辛い修行も頑張れた。この世界の両親と離れることも厭わなかった。この未来にある栄光のために努力が出来た。
だが、その栄光はもう消失した。
世界が平和になったのなら、それは良いことだ。
でもそれはそれ、これはこれである。
誰しも唐突に目標を失えば、心は空虚となりえるのだ。
(魔王はもう脅威ではない。おれの旅は終わったんだ)
見上げる空はいつもと違う。
いつもは澄んでいる青空も、なんだか虚空に見える。
空っぽだ。まるで自分の心と同じように。
「「「「…………」」」」
仲間もかける言葉が見つからない。
出会ってから2年。自分たちはその頃に魔王の討伐を決意したが、彼は生まれてからずっと魔王と戦うことを宿命付けられていたのだ。思いの重さはまるで違う。
4人はただユウシが立ち直るのを待つことしかできなかった。
***
寝ころびながら空虚な空を見上げていたユウシ。
飛んでいる鳥、地上を照らす陽光。浮かぶ雲。
空は何も変わらないはずなのに、自分の心ひとつで見えかたは180度違ってくる。
(おれは、これからどうすればいいのだろう?)
その疑問が真っ先に浮かんだ。
魔王は討伐していない。だが危険は無くなった。
自分は何もしていない。だが平和にはなった。
それを達成したのは1人の転生者ではなく、6人の転移者。
(Sランク冒険者はたしか転移者だったか。転生者とはまた違うらしいけど、特別は一人だけじゃないんだな)
そう何となく考えた瞬間だ。
(――ん?)
ユウシは自分の考えに違和感を覚えた。
(Sランク冒険者は6人だ。そして魔王は7柱。
Sランク6人……ということは!)
その結論に辿り着いたとき、ユウシの身体には電撃が走った。
勢いよく飛び起きたユウシに仲間は驚くが、そんなのお構いなしにユウシは歩み寄りキララの肩をガッと掴んだ。
「キララ! Sランクたちのそれぞれの使い魔は誰だ?」
いきなり掴みかかられ動揺するキララは「えっと! えっと……!」と目を回しながら答える。
「む、ムサシ・ミヤモトが魔王ハザードで、レオン・フェルマーが魔王アルバート。
アリス・ワンダーランド、魔王アンブレラ。
ラン・イーシン、魔王リッカ。
アキラ・アマミヤ、魔王ハンター。
シャルル・フローラル、魔王リアムです!」
それを聞いてユウシは確信を得た。
「一柱……まだ一柱残っている……ッ!」
先ほどの違和感はこれ。Sランク冒険者と魔王の数の不一致だ。
Sランク冒険者、つまり転移者ならば魔王を従わせたのも納得できる。正直この世界の人間に魔王を使い魔にできるほどの実力はない。よってこの異世界において魔王を従わせられる者は転移者以外いないということになる。
そしてそれは、まだ一柱の魔王は野放しだということ。
今キララの情報に名前が挙がらなかったのは――
「魔王タイラント、か」
そのときユウシの心に再び火がともった。
失った目標を、名声を、使命を果たせるチャンスが巡ってきたのだ。
(魔王タイラントの居場所はわからないが、他の魔王はSランクと共にいる。
ならば次に向かうべき場所は――)
「タイタンへ向かうぞ!」
発した言葉はとても力強いものだった。
空は何も変わらない。けれど自分の心ひとつで見えかたは180度違ってくる。
いまユウシの目に映る空は、とても澄んだ青空だった。
飛んでいる鳥、地上を照らす太陽。そして浮かぶ雲。
けれどユウシは気付いていない。
その雲がのちに地上へ雷と雨を落とす、暗い雲の種であることに。――
また留守。
またまた留守。
またまたまた留守。
またまたまたまた留守。
またまたまたまたまた留守。
またまたまたまたまたまた留守。
魔王が留守の七連続。
一度や二度ならまだしも、さすがに七回連続では勇者だろうが何だろうが心が折れるってもんである。
そんなこんなで一週間後。ようやく魔王がSランク冒険者の使い魔になったことが知らされたのだった。
「そうか、Sランク冒険者の……」
その事実を聞いてユウシはすごく落胆した。
使い魔の契約を結ぶとモンスターは主人を裏切ることは無い。
契約に必要なのは『絆』である。心を通わせた者にしかモンスターは契約できない。
そして契約者はSランク冒険者だ。ガラの悪い奴もいるが、全員が世界の平和のために動いている。
つまり、魔王が主人を裏切り人々を襲うことは100%無い。
さらに言えば、ユウシの目標である『魔王討伐』も結果的に果たされているのだ。
なぜなら『魔王討伐』は人々の平和のために行おうとしていたこと。魔王が人を襲わないという時点ですでに世界平和は実現されているのである。
この瞬間、ユウシは勇者としての使命を終えた。
本人の知らぬところで"勇者の魔王討伐の旅"は幕引きとなったのだ。
「何年も頑張ったんだけどな……」
遠くにある空を眺めながら言葉は口からこぼれていた。
ようやく自分にスポットライトが当たるのだと理解したあの日。
みんなから羨望の眼差しと称賛の声で溢れるのだと興奮したあの日。
才能に満ち溢れ、日に日に強さを実感したあの日。
四人の仲間と共に魔王を討伐しようと誓ったあの日。
どれもこれも転生前ではありえない出来事だ。
だから辛い修行も頑張れた。この世界の両親と離れることも厭わなかった。この未来にある栄光のために努力が出来た。
だが、その栄光はもう消失した。
世界が平和になったのなら、それは良いことだ。
でもそれはそれ、これはこれである。
誰しも唐突に目標を失えば、心は空虚となりえるのだ。
(魔王はもう脅威ではない。おれの旅は終わったんだ)
見上げる空はいつもと違う。
いつもは澄んでいる青空も、なんだか虚空に見える。
空っぽだ。まるで自分の心と同じように。
「「「「…………」」」」
仲間もかける言葉が見つからない。
出会ってから2年。自分たちはその頃に魔王の討伐を決意したが、彼は生まれてからずっと魔王と戦うことを宿命付けられていたのだ。思いの重さはまるで違う。
4人はただユウシが立ち直るのを待つことしかできなかった。
***
寝ころびながら空虚な空を見上げていたユウシ。
飛んでいる鳥、地上を照らす陽光。浮かぶ雲。
空は何も変わらないはずなのに、自分の心ひとつで見えかたは180度違ってくる。
(おれは、これからどうすればいいのだろう?)
その疑問が真っ先に浮かんだ。
魔王は討伐していない。だが危険は無くなった。
自分は何もしていない。だが平和にはなった。
それを達成したのは1人の転生者ではなく、6人の転移者。
(Sランク冒険者はたしか転移者だったか。転生者とはまた違うらしいけど、特別は一人だけじゃないんだな)
そう何となく考えた瞬間だ。
(――ん?)
ユウシは自分の考えに違和感を覚えた。
(Sランク冒険者は6人だ。そして魔王は7柱。
Sランク6人……ということは!)
その結論に辿り着いたとき、ユウシの身体には電撃が走った。
勢いよく飛び起きたユウシに仲間は驚くが、そんなのお構いなしにユウシは歩み寄りキララの肩をガッと掴んだ。
「キララ! Sランクたちのそれぞれの使い魔は誰だ?」
いきなり掴みかかられ動揺するキララは「えっと! えっと……!」と目を回しながら答える。
「む、ムサシ・ミヤモトが魔王ハザードで、レオン・フェルマーが魔王アルバート。
アリス・ワンダーランド、魔王アンブレラ。
ラン・イーシン、魔王リッカ。
アキラ・アマミヤ、魔王ハンター。
シャルル・フローラル、魔王リアムです!」
それを聞いてユウシは確信を得た。
「一柱……まだ一柱残っている……ッ!」
先ほどの違和感はこれ。Sランク冒険者と魔王の数の不一致だ。
Sランク冒険者、つまり転移者ならば魔王を従わせたのも納得できる。正直この世界の人間に魔王を使い魔にできるほどの実力はない。よってこの異世界において魔王を従わせられる者は転移者以外いないということになる。
そしてそれは、まだ一柱の魔王は野放しだということ。
今キララの情報に名前が挙がらなかったのは――
「魔王タイラント、か」
そのときユウシの心に再び火がともった。
失った目標を、名声を、使命を果たせるチャンスが巡ってきたのだ。
(魔王タイラントの居場所はわからないが、他の魔王はSランクと共にいる。
ならば次に向かうべき場所は――)
「タイタンへ向かうぞ!」
発した言葉はとても力強いものだった。
空は何も変わらない。けれど自分の心ひとつで見えかたは180度違ってくる。
いまユウシの目に映る空は、とても澄んだ青空だった。
飛んでいる鳥、地上を照らす太陽。そして浮かぶ雲。
けれどユウシは気付いていない。
その雲がのちに地上へ雷と雨を落とす、暗い雲の種であることに。――
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