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魔剣争奪戦編
第102話 リベンジ・ケルベロス
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アンブレラの種族であるケルベロスは、"地獄の番犬"の異名を持っている。
その名の由来は極寒や灼熱の大地、毒で満ちていようが、不毛の地であろうが、どのような環境にも適応できる順応性から来ている。
生命が反映できない――地獄の環境にすら生息できる猛獣。
ゆえに、地獄の番犬。
(……ノ、ハズナンダガナ)
(なんでフェニックスのひは、けせないんだよ!)
(だめだ……まったく体温調節が利かない!)
火に呑まれようとも生きていけるはずのケルベロスは、現在青い炎に包まれていた。
普段ならすぐに消火、もしくは燃えながらその温度に順応できるのだが。
不死鳥の炎はアンブレラを容易く焼いていく。
「「「ぐ、ぐぬぉぉおおおッッ!!」」」
何度も消火を試みるものの、炎は一向に消える気配がない。
アンブレラは永遠にも思える苦しみに藻掻いていた。
(――いける!)
そして、今がチャンスだとタマコはさらに追撃を開始した。
足を炎化させ、更に歌の波動を上乗せする。
「歌炎脚!」
炎+歌の合わせ技だ。
強烈なドロップキックに加え、炎の爪でアンブレラの身体を穿つ。
さらに不死鳥の歌声を乗せて内側から衝撃を与えた。
「「「っっっっっがは――」」」
凄まじい猛攻に倒れたアンブレラ。
それを見てタマコはニヤリと口の端を上げた。
決着が見え始めたとき、アンブレラの頭の中では、またかつての宿敵が思い返されていた。
あの時も同じだった。
あらゆる環境に適応できる類まれなモンスターである自分が、青い炎にだけは対応できなかった。
いや、敗北した原因はそれだけではない。
純粋にあの鳥は強かった。
互いに能力無しのぶつかり合いをしても、勝率は3割にも満たないだろう。
それを悟り、アンブレラは屈辱的な逃走を余儀なくされたのだ。
その後もトラウマのように脳内に焼き付いた記憶を思い出すたびに、アンブレラは恐怖で眠れなかった。
『暴れれば奴が来る』
アンブレラは自身の『食欲』と『殺意』を『母性』に統合し、犬頭族として身分を偽った。
結果として時間が経過したことでトラウマは克服できたが、生涯の敗北の記憶だけは苦く残ることとなったのである。
そして偶然か必然か、数千年の時を越え、あの男の血族が目の前にいる。
魔王として、二度の敗北は許されない。
それはアンブレラの――魔王としてのプライドであった。
そのプライドが、アンブレラを突き動かした。
巨体をゆっくりと起き上がらせ、炎に焼かれながらアンブレラは立ち上がった。
「「「――もう、負けるわけにはいかないのだあッッ!」」」
青炎は今もアンブレラの身体を焼いている。
しかし、アンブレラの意地がその苦しさを凌駕したのであった。
「……何度でも倒してやろう――来るがいいアンブレラ!」
青炎の翼を広げるタマコ。
だがタマコとて有利とはいえない。
不死鳥の力は体力の消耗が激しく、もはや体力切れ寸前なのだ。
アンブレラも青炎のダメージによりもうすぐ強制転移が発動する。
決着は間近である。
「炎脚!」
「「「餓狼の爪!」」」
互いの技がぶつかり合う。
威力は互角だ。
タマコは翼を展開すると、青炎を纏った羽が雨のように降り注いだ。
更に飛び出していった羽に歌の威力を上乗せする。
「炎天歌!」
アンブレラは降り注ぐ羽を俊敏に避けるが、さすがの量にいくつかが被弾。
容赦なくその身を貫き焼いていく。
「「「ぐぅッ!」」」
痛みに顔をしかめるアンブレラ。
だが、ここまで時間を稼いだことでアンブレラはチャージを完了させていた。
「コレデオワラセル!」
「こんどこそ」
「わたしたちが雪辱を果たす!」
三つの首が同時に口を開く。
炎、氷、毒、風、土、雷……と、様々な属性の魔法が合成されていく。
明らかに先ほどまでの質量を大幅に越えた奥義――
「「「全てを破壊してやろう――御伽を壊す凶狼の咆哮ッッ!」」」
超特大の破壊砲が炸裂した。
(あれは……無理じゃな)
その魔法をタマコは一目で見抜いた。
今まで使用した技のどれも通用せず、歌消でも霧散させるのは不可能だろう。
身体を炎化させても、その炎ごとかき消されてしまうに違いない。
けれど、この技はアンブレラの決死の大技であることは明白。
これをどうにかできれば、タマコの勝利は揺るぎないものとなる。
(父よ、母よ……どうか力を!)
タマコは魔力を最大まで高める。
アンブレラが奥義を放つのなら、こちらも奥義で対抗する。
最強の魔法に、自身の最強魔法をぶつける――
「これが私の最強じゃ――威炉破歌――」
炎と歌と自身の魔力を最大にまで高めて放つ、タマコの最強魔法。
高出力の魔法が互いに激突した。
アンブレラの復讐とタマコの意地。
両者の想いを乗せた魔法は一歩も譲らず、大爆発を起こし消滅した。
爆煙が辺りを包み込み、視界が悪くなる。
「アレヲカキケスカ……」
「たいしたもんだよ」
「ええ……ほんとに、たいしたものねえ……」
全てを出し切ったアンブレラはどこか清々しい気分でいっぱいだった。
フッと笑みをこぼすと、爆発の中からタマコが現れた。
そして、最後のとどめを刺す。
「王炎歌!」
アンブレラの身体を覆っていた青炎が突然と爆発を起こした。
煙と青炎が消えると、アンブレラはその巨体を地につけた。
(やはり強いわね……フレイ)
かつての記憶を思い出しながら、アンブレラは転移の光に包まれ、消えていった。
魔王アンブレラ=サファイア 脱落
その名の由来は極寒や灼熱の大地、毒で満ちていようが、不毛の地であろうが、どのような環境にも適応できる順応性から来ている。
生命が反映できない――地獄の環境にすら生息できる猛獣。
ゆえに、地獄の番犬。
(……ノ、ハズナンダガナ)
(なんでフェニックスのひは、けせないんだよ!)
(だめだ……まったく体温調節が利かない!)
火に呑まれようとも生きていけるはずのケルベロスは、現在青い炎に包まれていた。
普段ならすぐに消火、もしくは燃えながらその温度に順応できるのだが。
不死鳥の炎はアンブレラを容易く焼いていく。
「「「ぐ、ぐぬぉぉおおおッッ!!」」」
何度も消火を試みるものの、炎は一向に消える気配がない。
アンブレラは永遠にも思える苦しみに藻掻いていた。
(――いける!)
そして、今がチャンスだとタマコはさらに追撃を開始した。
足を炎化させ、更に歌の波動を上乗せする。
「歌炎脚!」
炎+歌の合わせ技だ。
強烈なドロップキックに加え、炎の爪でアンブレラの身体を穿つ。
さらに不死鳥の歌声を乗せて内側から衝撃を与えた。
「「「っっっっっがは――」」」
凄まじい猛攻に倒れたアンブレラ。
それを見てタマコはニヤリと口の端を上げた。
決着が見え始めたとき、アンブレラの頭の中では、またかつての宿敵が思い返されていた。
あの時も同じだった。
あらゆる環境に適応できる類まれなモンスターである自分が、青い炎にだけは対応できなかった。
いや、敗北した原因はそれだけではない。
純粋にあの鳥は強かった。
互いに能力無しのぶつかり合いをしても、勝率は3割にも満たないだろう。
それを悟り、アンブレラは屈辱的な逃走を余儀なくされたのだ。
その後もトラウマのように脳内に焼き付いた記憶を思い出すたびに、アンブレラは恐怖で眠れなかった。
『暴れれば奴が来る』
アンブレラは自身の『食欲』と『殺意』を『母性』に統合し、犬頭族として身分を偽った。
結果として時間が経過したことでトラウマは克服できたが、生涯の敗北の記憶だけは苦く残ることとなったのである。
そして偶然か必然か、数千年の時を越え、あの男の血族が目の前にいる。
魔王として、二度の敗北は許されない。
それはアンブレラの――魔王としてのプライドであった。
そのプライドが、アンブレラを突き動かした。
巨体をゆっくりと起き上がらせ、炎に焼かれながらアンブレラは立ち上がった。
「「「――もう、負けるわけにはいかないのだあッッ!」」」
青炎は今もアンブレラの身体を焼いている。
しかし、アンブレラの意地がその苦しさを凌駕したのであった。
「……何度でも倒してやろう――来るがいいアンブレラ!」
青炎の翼を広げるタマコ。
だがタマコとて有利とはいえない。
不死鳥の力は体力の消耗が激しく、もはや体力切れ寸前なのだ。
アンブレラも青炎のダメージによりもうすぐ強制転移が発動する。
決着は間近である。
「炎脚!」
「「「餓狼の爪!」」」
互いの技がぶつかり合う。
威力は互角だ。
タマコは翼を展開すると、青炎を纏った羽が雨のように降り注いだ。
更に飛び出していった羽に歌の威力を上乗せする。
「炎天歌!」
アンブレラは降り注ぐ羽を俊敏に避けるが、さすがの量にいくつかが被弾。
容赦なくその身を貫き焼いていく。
「「「ぐぅッ!」」」
痛みに顔をしかめるアンブレラ。
だが、ここまで時間を稼いだことでアンブレラはチャージを完了させていた。
「コレデオワラセル!」
「こんどこそ」
「わたしたちが雪辱を果たす!」
三つの首が同時に口を開く。
炎、氷、毒、風、土、雷……と、様々な属性の魔法が合成されていく。
明らかに先ほどまでの質量を大幅に越えた奥義――
「「「全てを破壊してやろう――御伽を壊す凶狼の咆哮ッッ!」」」
超特大の破壊砲が炸裂した。
(あれは……無理じゃな)
その魔法をタマコは一目で見抜いた。
今まで使用した技のどれも通用せず、歌消でも霧散させるのは不可能だろう。
身体を炎化させても、その炎ごとかき消されてしまうに違いない。
けれど、この技はアンブレラの決死の大技であることは明白。
これをどうにかできれば、タマコの勝利は揺るぎないものとなる。
(父よ、母よ……どうか力を!)
タマコは魔力を最大まで高める。
アンブレラが奥義を放つのなら、こちらも奥義で対抗する。
最強の魔法に、自身の最強魔法をぶつける――
「これが私の最強じゃ――威炉破歌――」
炎と歌と自身の魔力を最大にまで高めて放つ、タマコの最強魔法。
高出力の魔法が互いに激突した。
アンブレラの復讐とタマコの意地。
両者の想いを乗せた魔法は一歩も譲らず、大爆発を起こし消滅した。
爆煙が辺りを包み込み、視界が悪くなる。
「アレヲカキケスカ……」
「たいしたもんだよ」
「ええ……ほんとに、たいしたものねえ……」
全てを出し切ったアンブレラはどこか清々しい気分でいっぱいだった。
フッと笑みをこぼすと、爆発の中からタマコが現れた。
そして、最後のとどめを刺す。
「王炎歌!」
アンブレラの身体を覆っていた青炎が突然と爆発を起こした。
煙と青炎が消えると、アンブレラはその巨体を地につけた。
(やはり強いわね……フレイ)
かつての記憶を思い出しながら、アンブレラは転移の光に包まれ、消えていった。
魔王アンブレラ=サファイア 脱落
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