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魔剣争奪戦編
第79話 獲物
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ムサシとレオンが出会った同時刻。
タローたち4人はタマコの情報を頼りに美味しい果物があるというエリアへと足を運んでいた。
ここに来る前に一度地図に目を通していたタマコの知識が、ここに来て役に立つ。
が、しかし――
「おかしいのぉ……地図通りなら既に果樹がチラホラあるはずじゃが」
辺りを見回してもあるのは普通の木だけ。
果物など一つも見当たらなかった。
「記憶違いなんじゃねーの?」
「いやいやタローちゃん。マリアの記憶力は間違いないわよ~?
同世代でもバツグンに頭良かったんだから~」
タローの意見はエリスが即座に否定する。
幼馴染のエリスからすれば、マリアは確実に信頼できる頭脳を持っていた。
「もしかしたら……何か異変が起きてるのかもしれないわね~」
いつも通りの口調で話すエリスだが、少しばかり警戒をする。
そして、その言葉通り異変が起こる。
それに気づいたのはシャルルだ。
「はぁー……さすがに疲れまし――あっ!」
元々あまり体力の少ないシャルルが疲労から顔を俯くと、地面に大量の種が落ちているのに気が付いた。
しかもそれは、まるでヘンゼルとグレーテルの道しるべのように落ちている。
「辿ってみるか?」タマコが提案する。
「行くしかないだろ。どーせやることも無いんだし」タローが承諾した。
エリスとシャルルも賛同し、一行は種を追って森を進むことにしたのだった。
***
種の道はさらに森の奥深くへと続いていた。
これが本当に童話の通りならお菓子の家があるはずだが、それは期待できないだろう。
いや、魔女やモンスターなら瞬殺できる戦力はあるのだが……。
当然、魔女やモンスターの類なはずもない。
グちゃ…‥ジュぶ……ッッくン――
タローたちに聞こえてきたのは咀嚼音。
相当雑に食べているのか、荒々しいというか汚いというか、そんな音だ。
飲み込む音すら耳に届くほど豪快に食べるのはいったい誰なのか?
「……アイツは」
4人が木陰から覗くと、そこに居たのは青いワンピースを着た長い金髪の少女。
果物を次々と乱暴に口へ運び、器用に種のみを口から取り出した。
「アリスちゃん! まだまだあるから、たくさん食べるのよお!」
アリスと呼ばれた少女の横には、大きな赤いワンピースに白いエプロン。そして頭部がオオカミの獣人が、果物を大量に運んでいた。
「……ありがとう、ママ」
「はあい。どおいたしまして!」
お礼を言われると、その獣人はニカッと笑った。
一見すれば母と娘の仲睦まじい光景。
しかし腹を空かした者からすれば、食料を採りつくされていい迷惑である。
「あの娘、参加者じゃな」
「えぇ、名前は確か――」
「アリス・ワンダーランド。横にいるのが魔王兼使い魔のアンブレラ・サファイアです」
タマコとエリスはシャルルの情報を聴くと、眉をひそめた。
七柱いる魔王の中で、無敗を誇る三柱の魔王。
その内の一柱が、アンブレラ・サファイアである。
どう見てもタマコとエリスより格段に強いと理解できた。
そのことを伝えるとシャルルは「えぇ~!」と大っぴらに驚く。
「「しぃーー! 声がデカい!」」
すぐにタマコとエリスが口元を抑えられると、「すいません! すいません!」と今度は静かな声で謝罪した。
気を取り直してもう一度作戦を考える。
「って、策という策が思いつかないな」
「『退く』、がベストね~」
「そ、そうですよ! ムサシさんかレオンさん辺りに何とかしてもらいましょう!」
この戦いは無理に挑む必要はない。
他の誰かに倒してもらい、疲労したところを狙っても問題ないのだ。
戦いに汚いも奇麗もない。
あるのは勝利と敗北という"結果"のみである。
「よし、では退くぞ」
「戻りましょう戻りましょう~」
「危ないことはしたくないですね……」
三人は元の道を引き返そうと後ろを向く。
……………………
……………………
……………………三人?
「あれ? 主殿?」
思い返せば一番身近な男の声が聞こえない。
いったいタローはどこへ行っ――
「それ分けてくんない?」
普通に話しかけに行ってた。
(何やっとんじゃぁぁぁああああ!?)
(ちょ、タローちゃん!?)
(タロー様それは大胆すぎますぅぅう!)
タローは人見知りをしない。
割と誰にでも話しかけられる。
まさかそれが悪い方向に行くとはだれも思わなかったが。
「あらどなた?」
「タローです」
「(^・ω・^)」
(訳:プーです)
「あら美味しそうなクマ」
「Σ(^・ω・^;)!」
(訳:美味しそうッッ!?)
「ははっ、不味いッスよ?」
「あら残念」
「(^・ω・^;)」
(訳:……美味しかったら食べてたの?)
が、意外にも打ち解けそうな雰囲気であった。
これ案外食料分けてもらえるのでは? という空気が流れだす中。
少女はジーっとタローを見つめていた。
「……クマの人」
少女は小さく呟いた。
すると、あろうことか少女は一口で残りの果物を食い尽くす。
ペロリと完食すると、今度は真っすぐな瞳を向けた。
「……なんで食ったん?」
タローは目の前で食い尽くされた果物を残念そうに見ていた。
しかし、それ以上に反応したのは警戒心。
なにか――嫌な気を察したからだ。
「……くち直ししたくなっちゃった」
アリスはそう言うと、木に立てかけていたノコギリを手に持った。
「……そのクマ……たべられる?」
無表情な少女はプーに目線を移動する。
「Σ(^◎ω◎^;ノ)ノ!」
(訳:えッッ!?)
「不味いって言わなかった?」
「……不味くても食べられるなら食べる」
「…………悪いけどプーは俺の武器だ。食わせられないよ」
アリスから隠すようにプーの前に立ちはだかるタロー。
それでもアリスは口元を乱雑に拭うと、その唇を怪しく持ち上げた。
「……だいじょうぶ」
アリスは手に持ったノコギリを――
いや、暴食の魔剣をタローへと向ける。
「……獲物は狩るから!」
少女とは思えない強烈な踏み込みの後、アリスは暴食の刃を振りかざした。
タローたち4人はタマコの情報を頼りに美味しい果物があるというエリアへと足を運んでいた。
ここに来る前に一度地図に目を通していたタマコの知識が、ここに来て役に立つ。
が、しかし――
「おかしいのぉ……地図通りなら既に果樹がチラホラあるはずじゃが」
辺りを見回してもあるのは普通の木だけ。
果物など一つも見当たらなかった。
「記憶違いなんじゃねーの?」
「いやいやタローちゃん。マリアの記憶力は間違いないわよ~?
同世代でもバツグンに頭良かったんだから~」
タローの意見はエリスが即座に否定する。
幼馴染のエリスからすれば、マリアは確実に信頼できる頭脳を持っていた。
「もしかしたら……何か異変が起きてるのかもしれないわね~」
いつも通りの口調で話すエリスだが、少しばかり警戒をする。
そして、その言葉通り異変が起こる。
それに気づいたのはシャルルだ。
「はぁー……さすがに疲れまし――あっ!」
元々あまり体力の少ないシャルルが疲労から顔を俯くと、地面に大量の種が落ちているのに気が付いた。
しかもそれは、まるでヘンゼルとグレーテルの道しるべのように落ちている。
「辿ってみるか?」タマコが提案する。
「行くしかないだろ。どーせやることも無いんだし」タローが承諾した。
エリスとシャルルも賛同し、一行は種を追って森を進むことにしたのだった。
***
種の道はさらに森の奥深くへと続いていた。
これが本当に童話の通りならお菓子の家があるはずだが、それは期待できないだろう。
いや、魔女やモンスターなら瞬殺できる戦力はあるのだが……。
当然、魔女やモンスターの類なはずもない。
グちゃ…‥ジュぶ……ッッくン――
タローたちに聞こえてきたのは咀嚼音。
相当雑に食べているのか、荒々しいというか汚いというか、そんな音だ。
飲み込む音すら耳に届くほど豪快に食べるのはいったい誰なのか?
「……アイツは」
4人が木陰から覗くと、そこに居たのは青いワンピースを着た長い金髪の少女。
果物を次々と乱暴に口へ運び、器用に種のみを口から取り出した。
「アリスちゃん! まだまだあるから、たくさん食べるのよお!」
アリスと呼ばれた少女の横には、大きな赤いワンピースに白いエプロン。そして頭部がオオカミの獣人が、果物を大量に運んでいた。
「……ありがとう、ママ」
「はあい。どおいたしまして!」
お礼を言われると、その獣人はニカッと笑った。
一見すれば母と娘の仲睦まじい光景。
しかし腹を空かした者からすれば、食料を採りつくされていい迷惑である。
「あの娘、参加者じゃな」
「えぇ、名前は確か――」
「アリス・ワンダーランド。横にいるのが魔王兼使い魔のアンブレラ・サファイアです」
タマコとエリスはシャルルの情報を聴くと、眉をひそめた。
七柱いる魔王の中で、無敗を誇る三柱の魔王。
その内の一柱が、アンブレラ・サファイアである。
どう見てもタマコとエリスより格段に強いと理解できた。
そのことを伝えるとシャルルは「えぇ~!」と大っぴらに驚く。
「「しぃーー! 声がデカい!」」
すぐにタマコとエリスが口元を抑えられると、「すいません! すいません!」と今度は静かな声で謝罪した。
気を取り直してもう一度作戦を考える。
「って、策という策が思いつかないな」
「『退く』、がベストね~」
「そ、そうですよ! ムサシさんかレオンさん辺りに何とかしてもらいましょう!」
この戦いは無理に挑む必要はない。
他の誰かに倒してもらい、疲労したところを狙っても問題ないのだ。
戦いに汚いも奇麗もない。
あるのは勝利と敗北という"結果"のみである。
「よし、では退くぞ」
「戻りましょう戻りましょう~」
「危ないことはしたくないですね……」
三人は元の道を引き返そうと後ろを向く。
……………………
……………………
……………………三人?
「あれ? 主殿?」
思い返せば一番身近な男の声が聞こえない。
いったいタローはどこへ行っ――
「それ分けてくんない?」
普通に話しかけに行ってた。
(何やっとんじゃぁぁぁああああ!?)
(ちょ、タローちゃん!?)
(タロー様それは大胆すぎますぅぅう!)
タローは人見知りをしない。
割と誰にでも話しかけられる。
まさかそれが悪い方向に行くとはだれも思わなかったが。
「あらどなた?」
「タローです」
「(^・ω・^)」
(訳:プーです)
「あら美味しそうなクマ」
「Σ(^・ω・^;)!」
(訳:美味しそうッッ!?)
「ははっ、不味いッスよ?」
「あら残念」
「(^・ω・^;)」
(訳:……美味しかったら食べてたの?)
が、意外にも打ち解けそうな雰囲気であった。
これ案外食料分けてもらえるのでは? という空気が流れだす中。
少女はジーっとタローを見つめていた。
「……クマの人」
少女は小さく呟いた。
すると、あろうことか少女は一口で残りの果物を食い尽くす。
ペロリと完食すると、今度は真っすぐな瞳を向けた。
「……なんで食ったん?」
タローは目の前で食い尽くされた果物を残念そうに見ていた。
しかし、それ以上に反応したのは警戒心。
なにか――嫌な気を察したからだ。
「……くち直ししたくなっちゃった」
アリスはそう言うと、木に立てかけていたノコギリを手に持った。
「……そのクマ……たべられる?」
無表情な少女はプーに目線を移動する。
「Σ(^◎ω◎^;ノ)ノ!」
(訳:えッッ!?)
「不味いって言わなかった?」
「……不味くても食べられるなら食べる」
「…………悪いけどプーは俺の武器だ。食わせられないよ」
アリスから隠すようにプーの前に立ちはだかるタロー。
それでもアリスは口元を乱雑に拭うと、その唇を怪しく持ち上げた。
「……だいじょうぶ」
アリスは手に持ったノコギリを――
いや、暴食の魔剣をタローへと向ける。
「……獲物は狩るから!」
少女とは思えない強烈な踏み込みの後、アリスは暴食の刃を振りかざした。
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