白狼 白起伝

松井暁彦

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王の誕生

 十

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 魏冄を北で五月蠅うるさ跳梁ちょうりょうする義渠の討伐へあてた。魏冄の旗本百名と全て騎兵とした。
 
 試用段階であるが、嬴蕩は胡服騎射の参入に本腰を入れ始めている。そのあたりでも白は良く役に立った。白は義渠で育ったと言っても過言ではない。故に馬術。そして、騎乗状態での弓術と剣術には精通している。彼の意見を取り入れ、魏冄には旗本百騎を徹底的に苛め抜かせた。彼等の動きを白に見せた。渋い顔をしていたが、言葉は発さなかった。
 恐らく及第点という所だったのだろう。磨き甲斐はある。先人達が血と叡智の結晶である、中原の兵法と胡服騎射を組み合わせれば、誰もが目にしたことのない最強の軍隊が仕上がるはずだ。魏冄は義渠討伐戦で、己に足りないものを何か掴んで来るに違いない。

 同じく内政では、賢人として名高い叔父の樗里疾ちょりしつを右丞相に、父王の遺臣である甘茂かんもを左丞相に任じた。
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