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ハデス様盗賊を討つ
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ペルセポネ「さて、どこに行けばハデス様に会えるのかしら…タナトスちゃんみたいに気配に敏感ならすぐにわかるのだけれど…」
ペルセポネは降り立った草原で立ち尽くしていた
異世界に来たは良いがハデスの行方がわからないのである
ペルセポネ「仕方ありません自分の直感を信じて進むしかないですね!」
そう意気込んだペルセポネの背から美しい青白い光を放つ大きな翼が現れ
その翼を自在に使い華麗にペルセポネは飛び立った
ハデスの居るイシュガルの街とは真反対の方角へ
ペルセポネ「待っていてください!ハデス様!今愛しのペルセポネが参ります!」
そんな頃ハデスは
ハデス「…や!め!ろ!」
タナトス「い!や!です!」
ケルベロス「キャウキャウ!」
タナトスとパンの取り合いをしていた
城を買えるほどの資金を持っているハデスにとってパン一つなどどうとでもなるのだが
ハデス「オ!マ!エ!は!なんで!一口かじったら奪いに来るんだ!コラァ!!」
タナトス「だって!どんなジャムよりもマーマレードよりもクリームやバターよりもハデス様の唾液の方が美味しいに決まってます!」
ハデス「シンプルにキモい!!!!」
タナトスはハデスが一口パンをかじるたびにその手から奪い取り舐め回してからほうばるということを2度続けてやられたらしく
3度目を阻止している所だった
ハデス「キ!サ!マ!俺は昼休憩もうすぐ終わりなんだから体力使わせんじゃない!飯は食わなくても問題ないが精神と体力にダメージ与えてくるんじゃねぇ!!」
ケルベロス「キュー…」
ハデスとケルベロスは2日目の葬儀屋の手伝いの昼休憩に入っていた所だった
結局パンはタナトスに放り与えて
ケルベロスに小さく行くか…と声をかけ仕事に戻っていった
ハイネ「お、戻ってきたねじゃぁ午後はこことここの家にお邪魔して先月亡くなった方への祈りに立ち会ってもらうからね」
葬儀屋ハイネはテーブルに街の地図を広げこのあとの予定を説明していく
この世界の葬儀は一般的な西洋の葬儀と変わらない部分が多い
亡くなった方を教会で浄め棺ごと墓地に持っていき土葬する
さらに葬儀を行ってから3ヶ月は牧師が月に一度故人の親族と共に墓前で神に祈りを捧げ
墓をキレイにするという墓前神掃というものがある
その「墓をキレイにする」という事に葬儀屋が手を貸さなければならず主に忙しい理由となっている
教会に牧師は二人居るが、今まで交代で休みを取りなんとかやっていたが葬儀屋はハイネ一人でやっているので墓前神掃が間に合わず
ギルドに依頼を出したという
ハイネ「近頃ホントに亡くなる人が多くてよぉ盗賊にヤられたやら、魔物にヤられたやら今1番多いのは盗賊に殺される人たちだわなぁ…遺体を何十体と見たが酷いもんだ…手足は裂かれ腹には刺された穴が何個も…まだ男ならそれで済むがなぁ…女は悲惨だ…すぐに死なねえように刃物を使わず嬲り殺しだ」
仕事の話をしていたハイネは最近の死者の多さになんとも言えない表情をしながら愚痴を
言い始めた
タナトス「他人の死になんでそんなに感情移入できるかわっかんないですねぇ時代によっては大量虐殺も疫病で大量に死ぬ事もあるんですから珍しくもないでしょうにいちいちそんな感傷に浸ってたらきり無いですよねぇ?ハデス様?」
ハデス「(こいつうるさいな俺は姿消してないんだよ!)」
ハイネの話を聞いて姿を消したタナトスがハデスに自身の疑問を投げかけたが、ハデスが答えるわけもなくそのまま仕事を続けようとしていた
しかしハイネの話はまだ続くようだ
ハイネ「こんなに物騒になっちまってからオチオチ買い物にも行けねぇってんで女房には家で大人しくしてろって言ってあるんだがね…外に出なきゃ安心かと言われりゃそうでもないし困ったもんだ」
ハデス「その、街を出ようとは思わないんですか?」
ハイネの苦労を聞いてハデスは疑問を投げかける
ハイネ「馬鹿言うな街をでても行く所なんてないわ、近くに他の街なんか無いからな、それにここしかこの街に葬儀屋は無いんだ、俺がここから出ちまったら神父様達が困っちまう必要としてくれてる人が居るんだから俺はそれに報いてえ」
ハデス「それは、失礼な事を聞きました申し訳ない」
ハイネの決心を聞いたハデスはいらぬことを聞いたなと思いハイネに頭を下げた
ハイネ「なぁに問題ねぇ!ちゃっちゃと仕事終わらしちまおう、そっちは任せたぞプルートゥ君!」
そういうとハイネは自分の担当の仕事へ向かっていった
ハデス「さて、俺も行きますか」
ケルベロス「キャウー」
ハデスとケルベロスも自分の分担の家に早足で向かっていった
そして滞りなく今日の仕事を終えて
すでに辺りは暗くなっていた
ハデスとケルベロスは帰路につこうとして葬儀屋の小屋から出たが
ハイネに後ろから声をかけられた
ハイネ「気ぃつけて帰れよ!ま!冒険者なら大丈夫か!ガハハ!」
そう笑ってハイネは見送ってくれた
ハデスは「ハイネさんも、」と返し葬儀屋を後にした
その帰り道
ハデス「いやーハイネさん良い人だよなぁ優しいし覚悟もある漢!って感じの人だ」
ケルベロス「キャウ!」
そういってハイネの事を話題にしながらハデスたちは気分良く帰っていた
その時
タナトス「ハデス様…」
ケルベロス「キャゥ…」
タナトスとケルベロスの雰囲気がかわる
ハデス「わかってる…おい!出てきたらどうだ?」
ハデスもその気配を察していたのかすぐに臨戦態勢に入り路地に向かって声を発する
?「よぉ!よく気付いたなぁ」
臨戦態勢に入ったハデスを見て路地から出てきたのは明らかに柄の悪い男10人ほどだった
?「よぉ大金持ちの新米冒険者ぁお前が手練だってことはわかってんだだから人数用意したぜ10人には敵わんだろう?」
男達のリーダーなのか男は仲間に対して手の動きだけで陣形を取らせる
ハデス「酒場で見た顔だな俺がギルド登録した時に壁に寄りかかって目を閉じてたやつだ」
ハデスはこの男に見覚えがあったのでそう男に投げかけると男は不敵な笑みを浮かべながら言葉を放つ
アウリス「おうおうすげぇな!そんなすげえお前に自己紹介してやろう!俺は黒の爪の幹部アウリスだよろしくなぁ!まぁどうせ死ぬんでよろしくできないかもだけどなぁ!」
アウリスという男が声を荒らげると周りの男たちが一斉に飛びかかってきた
しかし、普通の人間がハデスに敵うわけがなくあっさりと全員その場で崩れ落ちた
比喩ではなく文字通り崩れ落ちたのである
細切れになりサイコロのように小さくなって
あたりに崩れ転がった
一瞬で血の海と化した惨状をみてアウリスが震えた声でハデスに問いかける
アウリス「き、キサマ何者なんだ!」
ハデス「そういうキサマは最近街を騒がせてる盗賊団の幹部といったところか…確かに普通の人間なら聞き取れない微かな音も聞き分けるいい耳を持っているが、それだけで幹部になれるとは黒の爪とやらも大したことないな」
アウリス「何故!?」
アウリスは恐怖で言葉が出なかったのか言葉を紡ぐことが出来なかった
ハデス「何故…というのは俺が何故お前の耳について分かっているかという意味か?」
アウリスの言葉足らずの発言に対しハデスは推測を投げかけるが、合っていたらしく
アウリスは首を何度も縦に振る
しかしその疑問をアウリスが解決することはなかった
ハデス「…お前に教える義理は無い」
ハデスがそういうと一刀でアウリスの首をはねた
ハデス「はぁ、服が血でベタベタだ風呂に入りたいなケルベロス?」
ケルベロス「キャウ!」
そういうハデスはケルベロスと共に早足で宿に向かった
宿に向かう途中タナトスがハデスに話しかける
タナトス「なんであの男の特技がわかったんです?ハデス様!」
ハデス「まぁ、視線かな?あの男達を超高速で切り刻んだが装備に剣が当たる時の金属音が鳴った所にすかさず目線をやってたから超高性能な聴覚を持ってるんだろうなと思ったんだよまぁ音聞いてからの視線だから結局目では追いきれてなかったが」
ハデスは先程の戦闘について丁寧に話す
タナトス「流石はハデス様!僕と違って戦闘経験値が違いますね!」
タナトスにそう褒められたハデスは満更でもなく少し口角が上がっていた
ハデス「あ、アイツ幹部って言ってたな、そうかぁこれで終わりじゃないのかぁ面倒だな、アジト聞き出せばよかった、まぁいっか」
そして話しているとメナスの酒場に到着した
ハデス達はそのまま入ると酒場に居た全員がギョッとした顔でハデス達を見ていた
ハデス「なんだ?」
ハデスはわからないと言った感じで歩みを進めるがギルド受付からミントが飛び出してきた
ミント「ちょちょちょちょちょちょっーーーっと待った!プルートゥさん!ど、ど、どどうしたんですか!?その血は!」
ハデス「あぁ、なるほど」
ハデスはミントの焦り様と言動で何故周りに驚かれているのかがわかった
そうするとハデスはミントに説明する
ハデス「いやー実は帰り道で盗賊団に襲われてさ、返り討ちにしたんだよねアウリスとかいう奴とその手下10人ぐらい」
ミント「な、なんですって!?……冒険者の皆さん!誰でもいいので付いてきてください!あ、プルートゥさんは裏の浴場で体と服をあらってください!怖すぎです!あと…ワンちゃん!その咥えてる頭渡しなさい!」
ハデス「え?」
ミントの言葉に驚きケルベロスを見るとアウリスの頭を口に咥えていた
ハデスもギョッとなったがケルベロスから頭を受け取りミントに渡した
すごく嫌そうな顔でミントはその頭を持ち
数名の冒険者と共に急ぎ外に出ていった
ハデス「なんなんだ?」
そうしてハデスとケルベロスは風呂に入ってから
酒場でゆっくりしていたが
ミント達が血まみれになって帰ってきた
ミントはハデスに一言ちょっと待っててください
と伝えるとそのままギルド受付の奥まで入っていった
数分後
チャラジャラ!と音を立てて受付カウンターに金貨と銀貨が置かれた
ミント「プルートゥさん、これは盗賊の討伐報酬です!金貨10枚に銀貨10枚!」
ハデス「は?」
ミント「現場に行って確かめてきました10人ぐらいの血の海、残った体、切り取られた頭部、首筋に太い三本線のタトゥー、確かに討伐依頼が出ていた黒の爪の幹部アウリスとその部下たちと判断できましたのでこれはプルートゥさんのものです!いやー盗賊団の幹部がやっと討ち取れました!欲を言えばアジトも吐かせたい所ではありましたが仕方ありませんね!」
矢継ぎ早にミントに説明されなんの事だかわからぬ内に金を渡されたハデスは
ミントに質問した
ハデス「おいおい、受けていない依頼を達成してもペナルティがあるだけじゃなかったか?どうなってるんだ?」
基本的に依頼は受けたものしかやってはならないルールで、他の人が受けてたりするのを邪魔する事になるかららしい
ペナルティとして1年間冒険者ランクアップは見送りになるとのことだ
ミント「いえ!この依頼は緊急依頼となっていて、進出鬼没、誰が襲われるかわからないというターゲットだったので誰がクリアしても報酬を出す事になってるんです!他の幹部達もそうなってますよ!もちろん上位依頼達成として1カウントもされます!」
ハデスはミントの説明を受けなるほど、では、と言いながら金を受け取り
自室に戻っていった
その後ろでミントが大きな声でありがとーございましたーと言ってる声が聞こえる
ハデスは悪くないなと思いながら自室のドアを開けた
?「チッ」
酒場の隅のテーブルでは舌打ちをするガラの悪そうな男達がハデスを見ていた
自室に入ったハデスは何故かすでにベッドに寝転がっているタナトスをムリヤリベッドから引き剥がし投げ捨てた
ハデス「…とりあえず明日も頑張るかなぁ、葬儀屋の依頼の合間に盗賊団の聞き込みでもしてみるかぁ…」
そういうとハデスは目を閉じスヤスヤと寝息を立て始めた
ケルベロスもそれに続いてハデスの腕に包まるように眠りについた
タナトスは
タナトス「扱いが…雑!」
と放り投げられソファに顔を埋めていたが
とりあえず今朝は大丈夫だったんだからと、モゾモゾとハデスのベッドに入り込んだ
そして翌朝
一発タナトスの頭を殴り
朝食を済ませ
ハデスとケルベロスは葬儀屋に向かった
ハデス「今日は葬儀か墓前神掃か…どっちかね、とりあえず昼休みには街に聞き込みに行かねばな」
と今日の予定を立てながら葬儀屋の小屋に入る
するとそこには神父と数人の冒険者
そして
天井からロープを垂らし首を吊っている変わり果てたハイネの姿があった
ハデス「嘘だろ…」
見開いた目で変わり果てたハイネを見ていたハデスの元に神父が近寄ってきた
神父「…プルートゥさん…」
神父はポンとハデスの肩を叩き教会に移動するよう促し説明してくれた
ハデスは俯いたまま神父の話を聞いていた
手に力がこもっているのか少し震えているし、握りすぎた拳から血が流れている
神父によると
今朝
ハイネが起きると家に妻の姿がなく
いろんな所を探したが見つからず憔悴した状態で教会に来たという
その話をハイネから聞いていると教会に冒険者が入ってきて道すがら女性の遺体を見つけてここに運んできたと言うのだ
神父とハイネは悪い予感しかしなかった
その遺体は服は剥がれ
顔は半分皮をを剥かれ、腹部には黒の爪の文字が刻まれていた
見るも無残な姿になったその女性はハイネの妻のミネルバだった
神父は泣き叫びながら暴れ回るハイネを落ち着かせ、せめてすぐにでもミネルバの葬儀をしてやろうと思い準備を進めていた所で
ハイネを休ませていた小屋に様子を見に行くと首を吊って亡くなっていた
という顛末だった
その話を聞き終えたハデスは小さく呟いた
ハデス「葬儀を…二人の葬儀を進めましょう…」
神父はハデスの気持ちがわかったのか黙って頷き葬儀の準備に戻った
そして二人の葬儀が滞り無く行われ
二人は墓地へ埋葬された
ハデスは墓前に華を添え拳を握る
埋葬も終え、ハデスは神父と挨拶を交わし葬儀屋の小屋に戻り小屋の中を見回す
ハデス「2日しか顔を合わせていないが…これは……俺があの時アウリスを切り捨てず情報を聞き出してすぐにでも盗賊団を殲滅していればこんなことにはならなかった…」
誰に話すわけでもなくハデスは自分自身に問うていた
何故あそこであんなことを…後悔が押し寄せてきていた
ケルベロス「キュゥーン……」
ケルベロスもハデス同様悲しい顔をしていた
タナトス「んーハデス様こっちに来て人間にでもなっちゃったんですかね?人が二人死んだだけですよ?しかも片方は顔も見たこと無い女、まぁ死体で見ても顔半分ベロベロだったけ…グェッ」
ハデス「黙れ!」
タナトスの発言があまりにも不謹慎で死者を冒涜する言葉でハデスの怒りにふれた
怒りに任せハデスはタナトスの首を締め上げる
ハデス「仮に俺が今人間だったとしよう、だがそれがハイネさんとその奥さんを馬鹿にしていい理由になるのか!あぁ!?言ってみろタナトス!」
タナトス「グヘェッ、ぼん"どう"に"人間みたいですね!!!!」
タナトスは首を締め上げていたハデスの手を振り払い言葉を続ける
タナトス「言っちゃいますけど!あなたはどの世界にいても、いつの時代でも、どんな状況でも冥王ハデスなんです!!冥界の王なんです!亡者共に裁定を下す唯一無二の存在なんです!それを人間が数人死んだぐらいで騒がないでください!それにハデス様もやってることは同じなんですよ!?」
強い言葉でタナトスはハデスに言い返す
その言葉にハデスは何だと?と聞き返す
タナトス「だってそうでしょう?昨夜ハデス様は盗賊団をなんの躊躇もなく殺しました、悪人だろうとハデス様とハイネの様に付き合いがある人間が居たかもしれません!その人間は今ハデス様と同じ気持ちかもしれません!でもハデス様はそんな事も考えず盗賊団を切って捨てましたし、盗賊団が一方的に悪いとおもってる!もう一度いいますよ?あなたは冥界の王唯一無二の存在である冥王ハデスなんです!人間と同列にならないでください!」
タナトスの力説にハデスは怒りを抑え、冷静になるために水を頭から浴びた
ハデス「タナトス…見知った者が死んだ時怒るなと言うのか?」
タナトス「それは相手が人間なのであれば人間の感情です。それは冥王であるあなたが持ってはいけない感情ですよ」
ハデス「そうか…そうだなわかった」
ハデスは落ち着いたのかいつもの表情を見せ
小屋を後にした
タナトス「ホントに大丈夫なんですかねぇ」
ケルベロス「きゅーん」
そしてタナトスとケルベロスは少し心配気味にハデスの後ろについていく
ハデス「ケルベロス…昨日の盗賊団の匂い覚えてるか?」
ケルベロス「きゃう!」
タナトス「ちょっちょっとハデス様!だから復讐とかそういうのは!」
ハデス「わかってるこれは冒険者として依頼をこなすだけだ、葬儀屋の依頼も失敗だしな」
タナトスの静止を冒険者として依頼を受けるだけだという理由をつけて
封殺する
そして匂いを頼りにハデスとケルベロスは
街を出た
街を出て南に2時間ほど歩いたところで森についた
ハデス「ここか…」
森の入り口らしきところで立ち止まったハデスは
神の御業で何も無いところから鎧を取り出し、鎧は勝手にハデスの体を覆った
そして兜も被り透明になった
さらにケルベロスも主人の行動を察したのか封印を解き三つ首の姿に戻る
ケルベロス「ガウ!バウ!Zzz!」
タナトス「はぁ…人間相手にムキになるなんて…ペルセポネ様が見たら泣くんだろうなぁ…もう今回だけですからね!?それに僕は加勢しませんからね!?」
ハデス「あぁ必要ない」
タナトスが森の入り口でギャーギャー喚いているのをよそに
ハデスとケルベロスは森に入っていく
透明になったハデスと元の姿に戻ったケルベロスは森の木々をなぎ倒し奥へ進んでいく
男1「なんだ!どうしたんだ!?」
木々をなぎ倒し進む音を聞いて飛び出してきたのは盗賊団の一員のようだった
ハデスは息を殺しその男の後ろに回り込んだ透明化しているので気付かれることはない
そして首元にある太い三本線を確認しその場で首をはねた
ハデス「まず一人」
ドシャッという首のない死体が倒れる音と同時に森の中からわらわらと盗賊団らしき男達が集まってきた
男2「くそっ!バケモンだ!みんな集まれ!出てこい!」
ケルベロス「ガウ!バウ!Zzz!」
ケルベロスの大きさは高さだけでもハデスの2倍はあるので人間が見れば脅威でしかないはずであった
男2「オクルスさんも呼んでこい!」
男3「わかりました!」
そう言って男が誰かを呼びに行ったがその男だけ見逃し、ケルベロスとハデスは盗賊団を掃討した
ハデス「2人、3人、4人……8、9、10、11、12、13」
ケルベロス「ガウ!バウ!Zzz!」
ものの数秒もせずに辺りは静かになり血の匂いの充満する森の血の池が完成した
?「なんじゃこりゃ」
男3「オクルスさん!こいつですよ!バケモノは!って全員死んでる?え?嘘だろ?」
さっきわざと見逃した男がオクルスと呼ばれた男を連れて戻ってきた
オクルス「いやこれは…あの獣だけじゃ…はっ!?避けろ!」
男3「へ?」
オクルスの声に反応出来なかった男は縦に体を割られてしまった
ハデス「ほぅ?今のが見えたのか?」
ハデスは声だけで相手に質問する
オクルス「俺の目は特別性だがそれでも見えるのは足元のへこみだけだ!てめぇ一体なにもんだ!姿を見せろ!」
ケルベロス「ガウ!バウ!Zzz!」
オクルス「ごぶぁ!」
オクルスが叫ぶがそのスキにケルベロスが前脚で叩き飛ばす
オクルスは血を吐きながら一本の木に激突する
その衝撃で木は折れて倒れるが
その幹の部分には血を流しうなだれているオクルスが居た
オクルス「バケモノめ…」
ハデス「ふっまぁまぁ強いな聞きたいことがあるんでな聞かせてもらおうか」
ハデスは兜を取り
オクルスの前に顔を晒す
オクルス「お前は!!プルートゥ!」
透明化が解除されすべて見えるようになったオクルスは驚愕の声を上げた
ハデス「ふむ…我が名はハデス!冥界の王にして三神の長兄!冥王ハデスである!」
オクルス「グハッ!くっ…神…?冥王?なんだそれは…」
ハデスの声でオクルスはさらに血を吐き
疑問を放つ
ハデス「お前が知らなくても仕方ないな…世界が違う…で、キサマは目が異様に良いみたいだな目の動きの速さが常人のそれとは比較にならないものだった、力を抜いているとはいえ、透明化もしているのに足跡だけで俺の動きに目が追いついていたすごい事だな…だが、体が動かねば意味がないな…さぁ答えろ盗賊団は残り何人だ?他はどこにいる?ハイネさんの奥さんを殺したのはお前か?お前幹部だろその異様な体は誰からもらった?」
ハデスの言葉に終始驚きっぱなしのオクルスだったが喋ろうとせず
ただ、「体は誰からもらった」かという質問にだけピクリと体が動いた
そして小さく喋る
オクルス「くそくらえ…ぅっ!」
オクルスは毒を飲んだのか血を吐いて息を引き取った
ハデス「まぁいいサヨウナラだ、匂いで場所はわかるし残りの幹部に聞きゃいいだろう、ケルベロス!乗せてくれ!」
そういうとハデスはケルベロスにまたがり
森をさらに奥まで進んだ
そして四角をベースに作られた大きな建物が森の中にあった
ハデス「まさかこれが盗賊団のアジトか?こんなでかいものが今まで見つかってないなんてことありえるのか?」
ケルベロス「ガウ!バウ!Zzz!」
ハデスが驚いているとケルベロスが叫びだした
?「えぇもちろん!見つかるはずがないのですがね!」
その声の方を見るとここに居てはいけない人間が居た
そこには
今日教会に来ていなかったもう一人の神父である
?「私の名前はまだ名乗っていませんでしたね?プルートゥさん?教会ではお世話になりました助かりましたよ?」
そういうと神父は深々と頭を下げニヤリと笑った
オース「改めまして!私の名はオース!黒の爪の幹部兼頭首を勤めさせていただいております!あなたのおかげでもう黒の爪も壊滅状態、手下達もあのアジトに拘束してある10人しかいません!困りました…実に困った!面倒なんですよ?人を集めるのって!」
オースの不気味な喋り方に違和感を覚えつつハデスは質問で返す
ハデス「お前がボスだと?なんの力もなさそうだが…それに手下を拘束してあるとはどういう事だ?」
オース「いいでしょう!お話しましょう!私はお話が大好きです!」
変なテンションでオースは語りだした
オース「私にはこの口で、言葉で、人を操ることができるのです!しかしね、対価も必要でしてね一つの命令をするのに自分の血を飲ませた人間一人の命を使うんですよー難しいでしょー?面倒でしょー?だから黒の爪を作るのなんて手下達と同じ人数犠牲になってますからね?大変でしたよーまぁでも教会にくる人達にワインとか振る舞えば全然簡単に血を飲ませられましたけどね!」
軽快に喋るオースをハデスは冷たい目で見ていた
そして質問を続ける
ハデス「そうか街で死人が多いのはお前のせいだったわけだ…そして他人の命を犠牲にここにくる奴らに暗示をかけ操りアジトを隠蔽していたのか」
オース「その通りでございます!おしゃべりは良いですねぇ!楽しい!あ、私ねおしゃべりともう2つ好きなことがあるんですよ!」
ハデス「あ?」
ハデスはオースの喋り方に苛立ちを隠せないように疑問で返す
それにさらに対抗する様にオースは厭らしい顔をしながらハデスをみて話す
オース「女をね?嬲るんですよぉ!私の言葉で意識を失わせた上で身体中メチャクチャにしてやったり!意識がある状態で手足が動かないよう暗示をかけて処女を散らしてやったり!手下共数人に輪姦させたりとやりたい放題!もう楽しすぎて女一人嬲るのに対価を5人以上毎回使っちゃったりね!ほんと最高!で、最後には殺しちゃうんですけどね?」
ハデス「そうか…そんな力、生まれたときからあったのか?」
ハデスは額に血管を浮き出させながら質問する
オース「そうですねぇ…この力は実は貰い物でしてなんか全知全能がどうとか言ってた白ひげのモジャモジャのオジサンに「くれてやる存分に楽しめ」といわれてもらったんですよね、こう頭をガシっと掴まれてピカーっと光ったんですよそしたらこの通り他の幹部のアウリスもオクルスもそうだったみたいですよ?まぁ運良く私のしもべになれたんですけどね!?」
本当に喋ることが好きなのか、次から次へと言葉が出てくる
そしてその言葉の中にはハデスにとって聞き捨てならない言葉もあった
ハデス「そうか…そうか…!!!最後に1つ聞こうハイネの奥さんを殺したのはお前だな?ゲス神父!」
怒りで唇を噛み締め血が出てるのも構わず
拳を振り上げオースに近づくハデス
オース「もちろんあの葬儀屋に似つかわしくない美人な奥さんは私が美味しくいただきましたよ!えぇそれはもちろん息絶え…ブベェ!!」
ハデス「もう喋るなゲス野郎」
言葉を遮るように言葉を出させないようにハデスはオースの顔面を殴りつけた
オース「ブェっと、私の力を甘く見てますね?さぁ捻れなさい!焼けなさい!血を吹き出しなさい!……………あれ?なぜ捻れない!なぜ燃えない!?なぜ血を吹き出さない!」
オースの力はハデスに効いてる様子もなくどんどんハデスはオースへ近づいていく
オース「ひっ!くるな!くるな!」
ハデス「お前の力は「人を操る力」だろそんなもん神である俺に効くわけねぇだろうが!!!!!!!」
オース「か、神?へボォォ!」
ハデスの拳はオースの顔面を貫いた
黒の爪壊滅
ハデスとケルベロスは幹部の頭部を持って森を抜けた
そしてハデスは森に振り返り
オースの言葉を思い出す
オース「全知全能がどうとか…」
ハデス「全知全能………クソが!ゼウス!!!!貴様の仕業か!!!!」
そう叫ぶハデスの声が晴天の空にこだましていく
そしてとある山の頂上にそびえ立つ城
その城の玉座に座る
白髪の男が口ずさむ
?「楽しいねぇ兄さん」
ペルセポネは降り立った草原で立ち尽くしていた
異世界に来たは良いがハデスの行方がわからないのである
ペルセポネ「仕方ありません自分の直感を信じて進むしかないですね!」
そう意気込んだペルセポネの背から美しい青白い光を放つ大きな翼が現れ
その翼を自在に使い華麗にペルセポネは飛び立った
ハデスの居るイシュガルの街とは真反対の方角へ
ペルセポネ「待っていてください!ハデス様!今愛しのペルセポネが参ります!」
そんな頃ハデスは
ハデス「…や!め!ろ!」
タナトス「い!や!です!」
ケルベロス「キャウキャウ!」
タナトスとパンの取り合いをしていた
城を買えるほどの資金を持っているハデスにとってパン一つなどどうとでもなるのだが
ハデス「オ!マ!エ!は!なんで!一口かじったら奪いに来るんだ!コラァ!!」
タナトス「だって!どんなジャムよりもマーマレードよりもクリームやバターよりもハデス様の唾液の方が美味しいに決まってます!」
ハデス「シンプルにキモい!!!!」
タナトスはハデスが一口パンをかじるたびにその手から奪い取り舐め回してからほうばるということを2度続けてやられたらしく
3度目を阻止している所だった
ハデス「キ!サ!マ!俺は昼休憩もうすぐ終わりなんだから体力使わせんじゃない!飯は食わなくても問題ないが精神と体力にダメージ与えてくるんじゃねぇ!!」
ケルベロス「キュー…」
ハデスとケルベロスは2日目の葬儀屋の手伝いの昼休憩に入っていた所だった
結局パンはタナトスに放り与えて
ケルベロスに小さく行くか…と声をかけ仕事に戻っていった
ハイネ「お、戻ってきたねじゃぁ午後はこことここの家にお邪魔して先月亡くなった方への祈りに立ち会ってもらうからね」
葬儀屋ハイネはテーブルに街の地図を広げこのあとの予定を説明していく
この世界の葬儀は一般的な西洋の葬儀と変わらない部分が多い
亡くなった方を教会で浄め棺ごと墓地に持っていき土葬する
さらに葬儀を行ってから3ヶ月は牧師が月に一度故人の親族と共に墓前で神に祈りを捧げ
墓をキレイにするという墓前神掃というものがある
その「墓をキレイにする」という事に葬儀屋が手を貸さなければならず主に忙しい理由となっている
教会に牧師は二人居るが、今まで交代で休みを取りなんとかやっていたが葬儀屋はハイネ一人でやっているので墓前神掃が間に合わず
ギルドに依頼を出したという
ハイネ「近頃ホントに亡くなる人が多くてよぉ盗賊にヤられたやら、魔物にヤられたやら今1番多いのは盗賊に殺される人たちだわなぁ…遺体を何十体と見たが酷いもんだ…手足は裂かれ腹には刺された穴が何個も…まだ男ならそれで済むがなぁ…女は悲惨だ…すぐに死なねえように刃物を使わず嬲り殺しだ」
仕事の話をしていたハイネは最近の死者の多さになんとも言えない表情をしながら愚痴を
言い始めた
タナトス「他人の死になんでそんなに感情移入できるかわっかんないですねぇ時代によっては大量虐殺も疫病で大量に死ぬ事もあるんですから珍しくもないでしょうにいちいちそんな感傷に浸ってたらきり無いですよねぇ?ハデス様?」
ハデス「(こいつうるさいな俺は姿消してないんだよ!)」
ハイネの話を聞いて姿を消したタナトスがハデスに自身の疑問を投げかけたが、ハデスが答えるわけもなくそのまま仕事を続けようとしていた
しかしハイネの話はまだ続くようだ
ハイネ「こんなに物騒になっちまってからオチオチ買い物にも行けねぇってんで女房には家で大人しくしてろって言ってあるんだがね…外に出なきゃ安心かと言われりゃそうでもないし困ったもんだ」
ハデス「その、街を出ようとは思わないんですか?」
ハイネの苦労を聞いてハデスは疑問を投げかける
ハイネ「馬鹿言うな街をでても行く所なんてないわ、近くに他の街なんか無いからな、それにここしかこの街に葬儀屋は無いんだ、俺がここから出ちまったら神父様達が困っちまう必要としてくれてる人が居るんだから俺はそれに報いてえ」
ハデス「それは、失礼な事を聞きました申し訳ない」
ハイネの決心を聞いたハデスはいらぬことを聞いたなと思いハイネに頭を下げた
ハイネ「なぁに問題ねぇ!ちゃっちゃと仕事終わらしちまおう、そっちは任せたぞプルートゥ君!」
そういうとハイネは自分の担当の仕事へ向かっていった
ハデス「さて、俺も行きますか」
ケルベロス「キャウー」
ハデスとケルベロスも自分の分担の家に早足で向かっていった
そして滞りなく今日の仕事を終えて
すでに辺りは暗くなっていた
ハデスとケルベロスは帰路につこうとして葬儀屋の小屋から出たが
ハイネに後ろから声をかけられた
ハイネ「気ぃつけて帰れよ!ま!冒険者なら大丈夫か!ガハハ!」
そう笑ってハイネは見送ってくれた
ハデスは「ハイネさんも、」と返し葬儀屋を後にした
その帰り道
ハデス「いやーハイネさん良い人だよなぁ優しいし覚悟もある漢!って感じの人だ」
ケルベロス「キャウ!」
そういってハイネの事を話題にしながらハデスたちは気分良く帰っていた
その時
タナトス「ハデス様…」
ケルベロス「キャゥ…」
タナトスとケルベロスの雰囲気がかわる
ハデス「わかってる…おい!出てきたらどうだ?」
ハデスもその気配を察していたのかすぐに臨戦態勢に入り路地に向かって声を発する
?「よぉ!よく気付いたなぁ」
臨戦態勢に入ったハデスを見て路地から出てきたのは明らかに柄の悪い男10人ほどだった
?「よぉ大金持ちの新米冒険者ぁお前が手練だってことはわかってんだだから人数用意したぜ10人には敵わんだろう?」
男達のリーダーなのか男は仲間に対して手の動きだけで陣形を取らせる
ハデス「酒場で見た顔だな俺がギルド登録した時に壁に寄りかかって目を閉じてたやつだ」
ハデスはこの男に見覚えがあったのでそう男に投げかけると男は不敵な笑みを浮かべながら言葉を放つ
アウリス「おうおうすげぇな!そんなすげえお前に自己紹介してやろう!俺は黒の爪の幹部アウリスだよろしくなぁ!まぁどうせ死ぬんでよろしくできないかもだけどなぁ!」
アウリスという男が声を荒らげると周りの男たちが一斉に飛びかかってきた
しかし、普通の人間がハデスに敵うわけがなくあっさりと全員その場で崩れ落ちた
比喩ではなく文字通り崩れ落ちたのである
細切れになりサイコロのように小さくなって
あたりに崩れ転がった
一瞬で血の海と化した惨状をみてアウリスが震えた声でハデスに問いかける
アウリス「き、キサマ何者なんだ!」
ハデス「そういうキサマは最近街を騒がせてる盗賊団の幹部といったところか…確かに普通の人間なら聞き取れない微かな音も聞き分けるいい耳を持っているが、それだけで幹部になれるとは黒の爪とやらも大したことないな」
アウリス「何故!?」
アウリスは恐怖で言葉が出なかったのか言葉を紡ぐことが出来なかった
ハデス「何故…というのは俺が何故お前の耳について分かっているかという意味か?」
アウリスの言葉足らずの発言に対しハデスは推測を投げかけるが、合っていたらしく
アウリスは首を何度も縦に振る
しかしその疑問をアウリスが解決することはなかった
ハデス「…お前に教える義理は無い」
ハデスがそういうと一刀でアウリスの首をはねた
ハデス「はぁ、服が血でベタベタだ風呂に入りたいなケルベロス?」
ケルベロス「キャウ!」
そういうハデスはケルベロスと共に早足で宿に向かった
宿に向かう途中タナトスがハデスに話しかける
タナトス「なんであの男の特技がわかったんです?ハデス様!」
ハデス「まぁ、視線かな?あの男達を超高速で切り刻んだが装備に剣が当たる時の金属音が鳴った所にすかさず目線をやってたから超高性能な聴覚を持ってるんだろうなと思ったんだよまぁ音聞いてからの視線だから結局目では追いきれてなかったが」
ハデスは先程の戦闘について丁寧に話す
タナトス「流石はハデス様!僕と違って戦闘経験値が違いますね!」
タナトスにそう褒められたハデスは満更でもなく少し口角が上がっていた
ハデス「あ、アイツ幹部って言ってたな、そうかぁこれで終わりじゃないのかぁ面倒だな、アジト聞き出せばよかった、まぁいっか」
そして話しているとメナスの酒場に到着した
ハデス達はそのまま入ると酒場に居た全員がギョッとした顔でハデス達を見ていた
ハデス「なんだ?」
ハデスはわからないと言った感じで歩みを進めるがギルド受付からミントが飛び出してきた
ミント「ちょちょちょちょちょちょっーーーっと待った!プルートゥさん!ど、ど、どどうしたんですか!?その血は!」
ハデス「あぁ、なるほど」
ハデスはミントの焦り様と言動で何故周りに驚かれているのかがわかった
そうするとハデスはミントに説明する
ハデス「いやー実は帰り道で盗賊団に襲われてさ、返り討ちにしたんだよねアウリスとかいう奴とその手下10人ぐらい」
ミント「な、なんですって!?……冒険者の皆さん!誰でもいいので付いてきてください!あ、プルートゥさんは裏の浴場で体と服をあらってください!怖すぎです!あと…ワンちゃん!その咥えてる頭渡しなさい!」
ハデス「え?」
ミントの言葉に驚きケルベロスを見るとアウリスの頭を口に咥えていた
ハデスもギョッとなったがケルベロスから頭を受け取りミントに渡した
すごく嫌そうな顔でミントはその頭を持ち
数名の冒険者と共に急ぎ外に出ていった
ハデス「なんなんだ?」
そうしてハデスとケルベロスは風呂に入ってから
酒場でゆっくりしていたが
ミント達が血まみれになって帰ってきた
ミントはハデスに一言ちょっと待っててください
と伝えるとそのままギルド受付の奥まで入っていった
数分後
チャラジャラ!と音を立てて受付カウンターに金貨と銀貨が置かれた
ミント「プルートゥさん、これは盗賊の討伐報酬です!金貨10枚に銀貨10枚!」
ハデス「は?」
ミント「現場に行って確かめてきました10人ぐらいの血の海、残った体、切り取られた頭部、首筋に太い三本線のタトゥー、確かに討伐依頼が出ていた黒の爪の幹部アウリスとその部下たちと判断できましたのでこれはプルートゥさんのものです!いやー盗賊団の幹部がやっと討ち取れました!欲を言えばアジトも吐かせたい所ではありましたが仕方ありませんね!」
矢継ぎ早にミントに説明されなんの事だかわからぬ内に金を渡されたハデスは
ミントに質問した
ハデス「おいおい、受けていない依頼を達成してもペナルティがあるだけじゃなかったか?どうなってるんだ?」
基本的に依頼は受けたものしかやってはならないルールで、他の人が受けてたりするのを邪魔する事になるかららしい
ペナルティとして1年間冒険者ランクアップは見送りになるとのことだ
ミント「いえ!この依頼は緊急依頼となっていて、進出鬼没、誰が襲われるかわからないというターゲットだったので誰がクリアしても報酬を出す事になってるんです!他の幹部達もそうなってますよ!もちろん上位依頼達成として1カウントもされます!」
ハデスはミントの説明を受けなるほど、では、と言いながら金を受け取り
自室に戻っていった
その後ろでミントが大きな声でありがとーございましたーと言ってる声が聞こえる
ハデスは悪くないなと思いながら自室のドアを開けた
?「チッ」
酒場の隅のテーブルでは舌打ちをするガラの悪そうな男達がハデスを見ていた
自室に入ったハデスは何故かすでにベッドに寝転がっているタナトスをムリヤリベッドから引き剥がし投げ捨てた
ハデス「…とりあえず明日も頑張るかなぁ、葬儀屋の依頼の合間に盗賊団の聞き込みでもしてみるかぁ…」
そういうとハデスは目を閉じスヤスヤと寝息を立て始めた
ケルベロスもそれに続いてハデスの腕に包まるように眠りについた
タナトスは
タナトス「扱いが…雑!」
と放り投げられソファに顔を埋めていたが
とりあえず今朝は大丈夫だったんだからと、モゾモゾとハデスのベッドに入り込んだ
そして翌朝
一発タナトスの頭を殴り
朝食を済ませ
ハデスとケルベロスは葬儀屋に向かった
ハデス「今日は葬儀か墓前神掃か…どっちかね、とりあえず昼休みには街に聞き込みに行かねばな」
と今日の予定を立てながら葬儀屋の小屋に入る
するとそこには神父と数人の冒険者
そして
天井からロープを垂らし首を吊っている変わり果てたハイネの姿があった
ハデス「嘘だろ…」
見開いた目で変わり果てたハイネを見ていたハデスの元に神父が近寄ってきた
神父「…プルートゥさん…」
神父はポンとハデスの肩を叩き教会に移動するよう促し説明してくれた
ハデスは俯いたまま神父の話を聞いていた
手に力がこもっているのか少し震えているし、握りすぎた拳から血が流れている
神父によると
今朝
ハイネが起きると家に妻の姿がなく
いろんな所を探したが見つからず憔悴した状態で教会に来たという
その話をハイネから聞いていると教会に冒険者が入ってきて道すがら女性の遺体を見つけてここに運んできたと言うのだ
神父とハイネは悪い予感しかしなかった
その遺体は服は剥がれ
顔は半分皮をを剥かれ、腹部には黒の爪の文字が刻まれていた
見るも無残な姿になったその女性はハイネの妻のミネルバだった
神父は泣き叫びながら暴れ回るハイネを落ち着かせ、せめてすぐにでもミネルバの葬儀をしてやろうと思い準備を進めていた所で
ハイネを休ませていた小屋に様子を見に行くと首を吊って亡くなっていた
という顛末だった
その話を聞き終えたハデスは小さく呟いた
ハデス「葬儀を…二人の葬儀を進めましょう…」
神父はハデスの気持ちがわかったのか黙って頷き葬儀の準備に戻った
そして二人の葬儀が滞り無く行われ
二人は墓地へ埋葬された
ハデスは墓前に華を添え拳を握る
埋葬も終え、ハデスは神父と挨拶を交わし葬儀屋の小屋に戻り小屋の中を見回す
ハデス「2日しか顔を合わせていないが…これは……俺があの時アウリスを切り捨てず情報を聞き出してすぐにでも盗賊団を殲滅していればこんなことにはならなかった…」
誰に話すわけでもなくハデスは自分自身に問うていた
何故あそこであんなことを…後悔が押し寄せてきていた
ケルベロス「キュゥーン……」
ケルベロスもハデス同様悲しい顔をしていた
タナトス「んーハデス様こっちに来て人間にでもなっちゃったんですかね?人が二人死んだだけですよ?しかも片方は顔も見たこと無い女、まぁ死体で見ても顔半分ベロベロだったけ…グェッ」
ハデス「黙れ!」
タナトスの発言があまりにも不謹慎で死者を冒涜する言葉でハデスの怒りにふれた
怒りに任せハデスはタナトスの首を締め上げる
ハデス「仮に俺が今人間だったとしよう、だがそれがハイネさんとその奥さんを馬鹿にしていい理由になるのか!あぁ!?言ってみろタナトス!」
タナトス「グヘェッ、ぼん"どう"に"人間みたいですね!!!!」
タナトスは首を締め上げていたハデスの手を振り払い言葉を続ける
タナトス「言っちゃいますけど!あなたはどの世界にいても、いつの時代でも、どんな状況でも冥王ハデスなんです!!冥界の王なんです!亡者共に裁定を下す唯一無二の存在なんです!それを人間が数人死んだぐらいで騒がないでください!それにハデス様もやってることは同じなんですよ!?」
強い言葉でタナトスはハデスに言い返す
その言葉にハデスは何だと?と聞き返す
タナトス「だってそうでしょう?昨夜ハデス様は盗賊団をなんの躊躇もなく殺しました、悪人だろうとハデス様とハイネの様に付き合いがある人間が居たかもしれません!その人間は今ハデス様と同じ気持ちかもしれません!でもハデス様はそんな事も考えず盗賊団を切って捨てましたし、盗賊団が一方的に悪いとおもってる!もう一度いいますよ?あなたは冥界の王唯一無二の存在である冥王ハデスなんです!人間と同列にならないでください!」
タナトスの力説にハデスは怒りを抑え、冷静になるために水を頭から浴びた
ハデス「タナトス…見知った者が死んだ時怒るなと言うのか?」
タナトス「それは相手が人間なのであれば人間の感情です。それは冥王であるあなたが持ってはいけない感情ですよ」
ハデス「そうか…そうだなわかった」
ハデスは落ち着いたのかいつもの表情を見せ
小屋を後にした
タナトス「ホントに大丈夫なんですかねぇ」
ケルベロス「きゅーん」
そしてタナトスとケルベロスは少し心配気味にハデスの後ろについていく
ハデス「ケルベロス…昨日の盗賊団の匂い覚えてるか?」
ケルベロス「きゃう!」
タナトス「ちょっちょっとハデス様!だから復讐とかそういうのは!」
ハデス「わかってるこれは冒険者として依頼をこなすだけだ、葬儀屋の依頼も失敗だしな」
タナトスの静止を冒険者として依頼を受けるだけだという理由をつけて
封殺する
そして匂いを頼りにハデスとケルベロスは
街を出た
街を出て南に2時間ほど歩いたところで森についた
ハデス「ここか…」
森の入り口らしきところで立ち止まったハデスは
神の御業で何も無いところから鎧を取り出し、鎧は勝手にハデスの体を覆った
そして兜も被り透明になった
さらにケルベロスも主人の行動を察したのか封印を解き三つ首の姿に戻る
ケルベロス「ガウ!バウ!Zzz!」
タナトス「はぁ…人間相手にムキになるなんて…ペルセポネ様が見たら泣くんだろうなぁ…もう今回だけですからね!?それに僕は加勢しませんからね!?」
ハデス「あぁ必要ない」
タナトスが森の入り口でギャーギャー喚いているのをよそに
ハデスとケルベロスは森に入っていく
透明になったハデスと元の姿に戻ったケルベロスは森の木々をなぎ倒し奥へ進んでいく
男1「なんだ!どうしたんだ!?」
木々をなぎ倒し進む音を聞いて飛び出してきたのは盗賊団の一員のようだった
ハデスは息を殺しその男の後ろに回り込んだ透明化しているので気付かれることはない
そして首元にある太い三本線を確認しその場で首をはねた
ハデス「まず一人」
ドシャッという首のない死体が倒れる音と同時に森の中からわらわらと盗賊団らしき男達が集まってきた
男2「くそっ!バケモンだ!みんな集まれ!出てこい!」
ケルベロス「ガウ!バウ!Zzz!」
ケルベロスの大きさは高さだけでもハデスの2倍はあるので人間が見れば脅威でしかないはずであった
男2「オクルスさんも呼んでこい!」
男3「わかりました!」
そう言って男が誰かを呼びに行ったがその男だけ見逃し、ケルベロスとハデスは盗賊団を掃討した
ハデス「2人、3人、4人……8、9、10、11、12、13」
ケルベロス「ガウ!バウ!Zzz!」
ものの数秒もせずに辺りは静かになり血の匂いの充満する森の血の池が完成した
?「なんじゃこりゃ」
男3「オクルスさん!こいつですよ!バケモノは!って全員死んでる?え?嘘だろ?」
さっきわざと見逃した男がオクルスと呼ばれた男を連れて戻ってきた
オクルス「いやこれは…あの獣だけじゃ…はっ!?避けろ!」
男3「へ?」
オクルスの声に反応出来なかった男は縦に体を割られてしまった
ハデス「ほぅ?今のが見えたのか?」
ハデスは声だけで相手に質問する
オクルス「俺の目は特別性だがそれでも見えるのは足元のへこみだけだ!てめぇ一体なにもんだ!姿を見せろ!」
ケルベロス「ガウ!バウ!Zzz!」
オクルス「ごぶぁ!」
オクルスが叫ぶがそのスキにケルベロスが前脚で叩き飛ばす
オクルスは血を吐きながら一本の木に激突する
その衝撃で木は折れて倒れるが
その幹の部分には血を流しうなだれているオクルスが居た
オクルス「バケモノめ…」
ハデス「ふっまぁまぁ強いな聞きたいことがあるんでな聞かせてもらおうか」
ハデスは兜を取り
オクルスの前に顔を晒す
オクルス「お前は!!プルートゥ!」
透明化が解除されすべて見えるようになったオクルスは驚愕の声を上げた
ハデス「ふむ…我が名はハデス!冥界の王にして三神の長兄!冥王ハデスである!」
オクルス「グハッ!くっ…神…?冥王?なんだそれは…」
ハデスの声でオクルスはさらに血を吐き
疑問を放つ
ハデス「お前が知らなくても仕方ないな…世界が違う…で、キサマは目が異様に良いみたいだな目の動きの速さが常人のそれとは比較にならないものだった、力を抜いているとはいえ、透明化もしているのに足跡だけで俺の動きに目が追いついていたすごい事だな…だが、体が動かねば意味がないな…さぁ答えろ盗賊団は残り何人だ?他はどこにいる?ハイネさんの奥さんを殺したのはお前か?お前幹部だろその異様な体は誰からもらった?」
ハデスの言葉に終始驚きっぱなしのオクルスだったが喋ろうとせず
ただ、「体は誰からもらった」かという質問にだけピクリと体が動いた
そして小さく喋る
オクルス「くそくらえ…ぅっ!」
オクルスは毒を飲んだのか血を吐いて息を引き取った
ハデス「まぁいいサヨウナラだ、匂いで場所はわかるし残りの幹部に聞きゃいいだろう、ケルベロス!乗せてくれ!」
そういうとハデスはケルベロスにまたがり
森をさらに奥まで進んだ
そして四角をベースに作られた大きな建物が森の中にあった
ハデス「まさかこれが盗賊団のアジトか?こんなでかいものが今まで見つかってないなんてことありえるのか?」
ケルベロス「ガウ!バウ!Zzz!」
ハデスが驚いているとケルベロスが叫びだした
?「えぇもちろん!見つかるはずがないのですがね!」
その声の方を見るとここに居てはいけない人間が居た
そこには
今日教会に来ていなかったもう一人の神父である
?「私の名前はまだ名乗っていませんでしたね?プルートゥさん?教会ではお世話になりました助かりましたよ?」
そういうと神父は深々と頭を下げニヤリと笑った
オース「改めまして!私の名はオース!黒の爪の幹部兼頭首を勤めさせていただいております!あなたのおかげでもう黒の爪も壊滅状態、手下達もあのアジトに拘束してある10人しかいません!困りました…実に困った!面倒なんですよ?人を集めるのって!」
オースの不気味な喋り方に違和感を覚えつつハデスは質問で返す
ハデス「お前がボスだと?なんの力もなさそうだが…それに手下を拘束してあるとはどういう事だ?」
オース「いいでしょう!お話しましょう!私はお話が大好きです!」
変なテンションでオースは語りだした
オース「私にはこの口で、言葉で、人を操ることができるのです!しかしね、対価も必要でしてね一つの命令をするのに自分の血を飲ませた人間一人の命を使うんですよー難しいでしょー?面倒でしょー?だから黒の爪を作るのなんて手下達と同じ人数犠牲になってますからね?大変でしたよーまぁでも教会にくる人達にワインとか振る舞えば全然簡単に血を飲ませられましたけどね!」
軽快に喋るオースをハデスは冷たい目で見ていた
そして質問を続ける
ハデス「そうか街で死人が多いのはお前のせいだったわけだ…そして他人の命を犠牲にここにくる奴らに暗示をかけ操りアジトを隠蔽していたのか」
オース「その通りでございます!おしゃべりは良いですねぇ!楽しい!あ、私ねおしゃべりともう2つ好きなことがあるんですよ!」
ハデス「あ?」
ハデスはオースの喋り方に苛立ちを隠せないように疑問で返す
それにさらに対抗する様にオースは厭らしい顔をしながらハデスをみて話す
オース「女をね?嬲るんですよぉ!私の言葉で意識を失わせた上で身体中メチャクチャにしてやったり!意識がある状態で手足が動かないよう暗示をかけて処女を散らしてやったり!手下共数人に輪姦させたりとやりたい放題!もう楽しすぎて女一人嬲るのに対価を5人以上毎回使っちゃったりね!ほんと最高!で、最後には殺しちゃうんですけどね?」
ハデス「そうか…そんな力、生まれたときからあったのか?」
ハデスは額に血管を浮き出させながら質問する
オース「そうですねぇ…この力は実は貰い物でしてなんか全知全能がどうとか言ってた白ひげのモジャモジャのオジサンに「くれてやる存分に楽しめ」といわれてもらったんですよね、こう頭をガシっと掴まれてピカーっと光ったんですよそしたらこの通り他の幹部のアウリスもオクルスもそうだったみたいですよ?まぁ運良く私のしもべになれたんですけどね!?」
本当に喋ることが好きなのか、次から次へと言葉が出てくる
そしてその言葉の中にはハデスにとって聞き捨てならない言葉もあった
ハデス「そうか…そうか…!!!最後に1つ聞こうハイネの奥さんを殺したのはお前だな?ゲス神父!」
怒りで唇を噛み締め血が出てるのも構わず
拳を振り上げオースに近づくハデス
オース「もちろんあの葬儀屋に似つかわしくない美人な奥さんは私が美味しくいただきましたよ!えぇそれはもちろん息絶え…ブベェ!!」
ハデス「もう喋るなゲス野郎」
言葉を遮るように言葉を出させないようにハデスはオースの顔面を殴りつけた
オース「ブェっと、私の力を甘く見てますね?さぁ捻れなさい!焼けなさい!血を吹き出しなさい!……………あれ?なぜ捻れない!なぜ燃えない!?なぜ血を吹き出さない!」
オースの力はハデスに効いてる様子もなくどんどんハデスはオースへ近づいていく
オース「ひっ!くるな!くるな!」
ハデス「お前の力は「人を操る力」だろそんなもん神である俺に効くわけねぇだろうが!!!!!!!」
オース「か、神?へボォォ!」
ハデスの拳はオースの顔面を貫いた
黒の爪壊滅
ハデスとケルベロスは幹部の頭部を持って森を抜けた
そしてハデスは森に振り返り
オースの言葉を思い出す
オース「全知全能がどうとか…」
ハデス「全知全能………クソが!ゼウス!!!!貴様の仕業か!!!!」
そう叫ぶハデスの声が晴天の空にこだましていく
そしてとある山の頂上にそびえ立つ城
その城の玉座に座る
白髪の男が口ずさむ
?「楽しいねぇ兄さん」
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