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好きなのは…

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 眠れない――

 遥香は何度目かの眠れない夜をすごしていた。

 ここのところ、全然眠れない。そのせいか日中にぼーっとしてしまって、クロードを心配させてしまっている。

 遥香はベッドに寝ころんだまま、左手に光る指輪を見つめる。

 はずさなくてはと思って、はずせない、弘貴からもらった大切な指輪。

 弘貴は今、幸せだろうか。リリーがそばにいて、喜んでいるのだろうか。

 そんなことばかり考えてしまう。

 弘貴があの優しい微笑みをリリーに向けているのかと思うだけで、心臓が締め付けられるように痛くなった。

 ドーリッヒ・ホフマンの手掛かりを探しているクロード。本当は、遥香も率先して手伝うべきだ。それなのに、彼に任せきりにしてしまっているのは――、戻るのが、怖いから。

「……弘貴、さん」

 弘貴の名を声に出せば、淋しさが押し寄せてくる。

 遥香はリリーのかわりだったとわかったのに――、この期に及んで、まだ彼に会いたいと思っている自分がいる。

 会いたい。

 元の世界に戻って――、もし、リリーのかわりでもいいと縋りつけば、彼は今までと同じように身代わりでも遥香を愛してくれるだろうか。

 矜持もなにもかも、投げ出して縋りつけば。

 遥香は弘貴を失いたくなかった。傷つけられても、まだ愛している。弘貴がいい。弘貴だけがほしい。

 こんなにも弘貴に依存していたのかと気づかされて、遥香は自分が嫌になる。

 わたしのことは好きではないかもしれないけど、一緒にいてください――、そんな我儘を弘貴に押しつけてしまいたくなる自分がいる。

「弘貴……さん」

 遥香はもう一度つぶやいて、そっと左手の薬指に光る指輪に口づけた。

 その瞬間――

 ピカっと、指輪から強い光が放たれた。
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