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チューロンとリーファの過去
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「おめ…でた……?」
ラーファオが茫然としている間に、リーファはエレノアに支えられながらソファに腰を下ろした。
「おめでた……って、姉上?」
「子供……?」
凍りついてしまったように動かなくなったラーファオとユアンに、ばあやははあと大きくため息をついた。
「男どもは情けないのぅ」
「りんりん、あかちゃんー?」
「おめでたー?」
「やったー!」
妖精たちが騒ぎ出すと、ようやく我に返ったらしいラーファオが、妻のもとへ飛んで行った。
「本当なのか?」
「そ、そうなのかしら……? 言われてみれば確かに思い当たる節も……」
リーファ本人も気づいていなかったのか、おろおろとばあやを見上げている。
ばあやはリーファの脈を取り、顔色を見ながら「間違いない」と判断を下した。
「まだはっきりとはわからんが、まあ、妊娠して五、六週間ってところじゃろうな」
すると、ラーファオは感極まったようにリーファを抱き上げた。
「きゃっ」
「でかしたリーファ!」
「これ! 妊婦をそんな風に抱き上げるな!」
ばあやに注意されて、ラーファオは渋々リーファを膝の上に抱き上げて座りなおす。
「よかったな」
心配そうにリーファの周りをうろうろしているエレノアを捕まえて、膝の上に抱き上げながらサーシャロッドが言えば、リーファは頬を染めて小さく頷いた。
「しばらくは安静にしていろ。少なくとも安定期に入るまではな」
「お、お家のことはわたしががんばります!」
エレノアが意気込んで言うと、リーファが優しく微笑んでくれる。
「ありがとうございます。では、お言葉に甘えてしばらくゆっくりさせていただきますね」
「ちょうどよく話し相手兼見張りがきたからな。ユアン皇子、リーファがうろうろしないかどうか見ていてくれ」
「あら、わたくしはそんなにうろうろしたりしないわ」
「嘘をいえ。お前は昔からじっとしておくのが苦手だろう」
「姉上、しっかり見張らせていただきますからね」
夫と弟に二人がかりでやり込められて、リーファは少し拗ねたようだ。
だが、おなかの中に子供がいると聞いて嬉しくて仕方がないのか、先ほどからしきりに平らなお腹を撫でている。
ラーファオはそんな妻の頭を愛おしそうに撫でていて、エレノアはちょっぴり羨ましくなってしまったのだが――、それは、内緒だ。
ラーファオが茫然としている間に、リーファはエレノアに支えられながらソファに腰を下ろした。
「おめでた……って、姉上?」
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凍りついてしまったように動かなくなったラーファオとユアンに、ばあやははあと大きくため息をついた。
「男どもは情けないのぅ」
「りんりん、あかちゃんー?」
「おめでたー?」
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すると、ラーファオは感極まったようにリーファを抱き上げた。
「きゃっ」
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「これ! 妊婦をそんな風に抱き上げるな!」
ばあやに注意されて、ラーファオは渋々リーファを膝の上に抱き上げて座りなおす。
「よかったな」
心配そうにリーファの周りをうろうろしているエレノアを捕まえて、膝の上に抱き上げながらサーシャロッドが言えば、リーファは頬を染めて小さく頷いた。
「しばらくは安静にしていろ。少なくとも安定期に入るまではな」
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「ありがとうございます。では、お言葉に甘えてしばらくゆっくりさせていただきますね」
「ちょうどよく話し相手兼見張りがきたからな。ユアン皇子、リーファがうろうろしないかどうか見ていてくれ」
「あら、わたくしはそんなにうろうろしたりしないわ」
「嘘をいえ。お前は昔からじっとしておくのが苦手だろう」
「姉上、しっかり見張らせていただきますからね」
夫と弟に二人がかりでやり込められて、リーファは少し拗ねたようだ。
だが、おなかの中に子供がいると聞いて嬉しくて仕方がないのか、先ほどからしきりに平らなお腹を撫でている。
ラーファオはそんな妻の頭を愛おしそうに撫でていて、エレノアはちょっぴり羨ましくなってしまったのだが――、それは、内緒だ。
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