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黒い雪だるまの悪戯

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 ぐったりとベッドに横になるエレノアを抱き寄せて、サーシャロッドはその頬をくすぐるように撫でる。

 風呂から上がって、一度は夜着に袖を通したエレノアだが、それもすっかりはだけてしまっていた。

(子作り、怖い……)

 肌を撫でられたり揉まれたり、吸い付かれたりするのはいつものことと言えばいつものことだが、今日は長かった。それはもう、長かった!

 今まで触れられたことのない足の間とかも撫でられたし、もう、顔から火が出そうに恥ずかしい。

 これで予習ならば、「おいおい」が来たら自分はどうなってしまうのか――想像するだけで心臓が止まりそうだ。

 二度と「がんばる」とか「娘がー」とか、言わないぞとエレノアは固く心に誓った。

 サーシャロッドはそんなエレノアを腕に掻き抱いてさんざん甘やかしながら、「エレノアに似た娘なら可愛いだろうな」などと言っている。

 それならサーシャロッドに似た息子も欲しい――とうっかり言いかけて、エレノアは慌てて口を閉ざした。

 口は禍の元。この教訓を心に刻んだばかりなのに、もう一度同じ轍を踏むところだった。

(子供はもう少し後でいいです!)

 ほしいかほしくないかと言われればほしいけれど! 子供を得るまでの過程が恐ろしすぎて、エレノアはまだ「ほしい」などと口が裂けても言えない。

 そして、今までただの「肉付きチェック」だと思っていた一連の流れが、実は子作りの予習に関係していたなんて知らなかったと頭を抱えるエレノアだ。

 体に肉がついたかどうかを確認するだけなのに、執拗に撫でまわされたり吸いつかれたりするのはどうしてだろうと疑問を思わないでもなかったが、ここまで気がつかなかった自分の鈍さを呪いたい。

「明日は雪像を作って遊ぶのか?」

 サーシャロッドが耳元で喋るからこそばゆくて、エレノアは小さく身をよじった。

 雪まつりは明日の夜。雪まつりの日の夜にだけ、山から光る虫がやって来るそうで、虫たちが雪の像を照らし出してくれるそうだ。

 何でも、年に一度、虫たちの恋の季節が訪れるそうで、その時にだけ雪山の奥深くから麓まで降りてくるという。

 エレノアとリーファも、明日は雪だるまの妖精たちに手伝ってもらって、雪像づくりに挑戦する予定だ。

 ラーファオは、「寒いから嫌だ」と雪像作りは不参加だが、隙あらばカイルがリーファにちょっかいを出すので、渋々ながら外には出てくるらしい。

「サーシャ様も、雪遊びしますか?」

「いや、私は少し調べたいことがある」

 サーシャロッドが難しい表情をしたので、もしかして行方不明になったという雪だるまの妖精のことを調べるつもりなのかもしれない。

 サーシャロッドと一緒でないのは少し淋しいが、お仕事なら仕方がなかった。

 すると、エレノアがしょんぼりしたのがわかったのか、サーシャロッドがころんとエレノアを転がして下敷きにした。

「明日淋しくないように、たくさん可愛がってやろう」

 どうしてそういう流れになるのかわからなかったが、サーシャロッドはニヤリと笑ってエレノアの首筋に吸いついてきて。

「やあぁ―――!」

 エレノアは再び、サーシャロッドのいう「子作りの予習」というありがたくもない勉強をさせられる羽目になったのだった。
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