破滅回避の契約結婚だったはずなのに、お義兄様が笑顔で退路を塞いでくる!~意地悪お義兄様はときどき激甘~

狭山ひびき@バカふり200万部突破

文字の大きさ
上 下
63 / 89
第一部 悪役令嬢未満、お兄様と結婚します!

王都の義賊 4

しおりを挟む
「お嬢様もなかなかの悪女っぷりですね。この短い間に、二人の男性を手玉に取るなんて」
「人聞きの悪いことを言わないで‼」

 ヴィルマに白い目を向けられながら、わたしは髪を結ってもらっていた。
 もちろん、「ヴォルケヘア」なんかではありませんよ。普通の、清楚なお嬢様っぽいハーフアップです。

 ……それにしても、お兄様とアレクサンダー様と三人でオペラなんて、わたし、そのうち女の子たちから刺されるんじゃなかろうか。

 もちろん、お兄様の言い分も一理あった。
 というか、気づかなかったわたしもどうかしていたのだ。
 世間一般的に、わたしとお兄様は婚約者と言うことになる。結婚が決まっているからだ。
 その、婚約者持ちのわたしが、違う男性と二人っきりでオペラ鑑賞なんて、妙な噂が立ってもおかしくない状況である。だから、アレクサンダー様と二人っきりになるのはまずかったのだ。

 ……だからといって、お兄様参戦で三人はないでしょうよ。せめてヴィルマがよかったわ。

 とは思うものの、貴族の常識として、同行する使用人は数にカウントされない。
 のちのち変な噂が立った時に「いやいや侍女が一緒でしたけど!」というのは、言い訳にはならないのだ。

 ……やっぱり、女友達が必要だわ。こういう時に一緒に行ってくれる、優しくて可愛い女友達が!
 リッチーはお友達だけど、あれは女友達とは違う。言動は怪しいが一応男性だし。

「お嬢様、できましたよ。……本当に、これでいいんですか? せっかく両手に花状態なんですから、もっと盛ってもいいと思いますよ」
「ヴィルマ、ホルガー侍医長に笑われたこと、もう忘れたの⁉」
「大丈夫ですよ。そのうち流行しますから、そうすれば笑われません」
「あんたのその理屈で行くと、流行するまで笑われるけど些細な事って言ってるように聞こえるけど⁉」

 そもそも、「ヴォルケヘア」が流行る日が来るとは思えないので、わたしは笑われ損ということだ。

「お嬢様にしてはなかなか鋭いツッコミですね。でも、些細な事じゃないですか。ヴォルケヘアが流行った暁には、お嬢様は流行を作ったとして称賛されるんですよ」

 ヴィルマ、あんたそれ、どこまで本気でどこまで冗談で言ってる?
 真面目くさった顔で言ってるけど、絶対に自分が遊びたいだけよね?

 じーっとヴィルマを見つめると、ついっと視線をそらされたので、やっぱりヴィルマは自分が遊びたいだけなのだと悟る。

「ヴィルマ、そのヴォルケヘアは、もう一生封印よ!」
「えー」

 えー、じゃない!
 あんたはわたしで遊びすぎなんです‼

 支度が終わると、わたしはヴィルマと共に学園の正門前へ向かう。
 お兄様が一緒なのでヴィルマはついてこないが、護衛兼侍女であるヴィルマは、正門まではついて来てくれるのだ。

 ……う!

 正門に向かったわたしは、二人に合流する前にすでにひるみそうになった。
 正門の左右の門柱に、お兄様とアレクサンダー様がそれぞれ寄り掛かっていらっしゃる。
 そして、その周りには、当たり前のように大勢の女子生徒の姿が……。

 ……ああ、またこいつか! みたいな顔をされてるぅ!

 わたしが近づいていくと、女子生徒たちの視線が一斉に突き刺さる。
 お出かけのたびに睨まれるのは嫌なので、今度から現地集合にしようかな……。

 女の子集団のことなんて、全然気にしていなさそうなお兄様とアレクサンダー様が、ちょっと恨めしいですよ。


しおりを挟む
感想 37

あなたにおすすめの小説

「君を愛するつもりはない」と言ったら、泣いて喜ばれた

菱田もな
恋愛
完璧令嬢と名高い公爵家の一人娘シャーロットとの婚約が決まった第二皇子オズワルド。しかし、これは政略結婚で、婚約にもシャーロット自身にも全く興味がない。初めての顔合わせの場で「悪いが、君を愛するつもりはない」とはっきり告げたオズワルドに、シャーロットはなぜか歓喜の涙を浮かべて…? ※他サイトでも掲載中しております。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

【完結】悪役令嬢は3歳?〜断罪されていたのは、幼女でした〜

白崎りか
恋愛
魔法学園の卒業式に招かれた保護者達は、突然、王太子の始めた蛮行に驚愕した。 舞台上で、大柄な男子生徒が幼い子供を押さえつけているのだ。 王太子は、それを見下ろし、子供に向って婚約破棄を告げた。 「ヒナコのノートを汚したな!」 「ちがうもん。ミア、お絵かきしてただけだもん!」 小説家になろう様でも投稿しています。

契約結婚のすゝめ

ざっく
恋愛
今代限りで爵位がなくなる予定の貧乏男爵家に侯爵家からの婚約の申し込みが来た。これは金の気配がすると、リリアンはお見合いに臨むことにした。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

【完結】お花畑ヒロインの義母でした〜連座はご勘弁!可愛い息子を連れて逃亡します〜+おまけSS

himahima
恋愛
夫が少女を連れ帰ってきた日、ここは前世で読んだweb小説の世界で、私はざまぁされるお花畑ヒロインの義母に転生したと気付く。 えっ?!遅くない!!せめてくそ旦那と結婚する10年前に思い出したかった…。 ざまぁされて取り潰される男爵家の泥舟に一緒に乗る気はありませんわ! アルファポリス恋愛ランキング入りしました! 読んでくれた皆様ありがとうございます。 連載希望のコメントをいただきましたので、 連載に向け準備中です。 *他サイトでも公開中 なろう日間総合ランキング2位に入りました!

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

気だるげの公爵令息が変わった理由。

三月べに
恋愛
 乙女ゲーの悪役令嬢に転生したリーンティア。王子の婚約者にはまだなっていない。避けたいけれど、貴族の義務だから縁談は避けきれないと、一応見合いのお茶会に参加し続けた。乙女ゲーのシナリオでは、その見合いお茶会の中で、王子に恋をしたから父に強くお願いして、王家も承諾して成立した婚約だったはず。  王子以外に婚約者を選ぶかどうかはさておき、他の見合い相手を見極めておこう。相性次第でしょ。  そう思っていた私の本日の見合い相手は、気だるげの公爵令息。面倒くさがり屋の無気力なキャラクターは、子どもの頃からもう気だるげだったのか。 「生きる楽しみを教えてくれ」  ドンと言い放つ少年に、何があったかと尋ねたくなった。別に暗い過去なかったよね、このキャラ。 「あなたのことは知らないので、私が楽しいと思った日々のことを挙げてみますね」  つらつらと楽しみを挙げたら、ぐったりした様子の公爵令息は、目を輝かせた。  そんな彼と、婚約が確定。彼も、変わった。私の隣に立てば、生き生きした笑みを浮かべる。  学園に入って、乙女ゲーのヒロインが立ちはだかった。 「アンタも転生者でしょ! ゲームシナリオを崩壊させてサイテー!! アンタが王子の婚約者じゃないから、フラグも立たないじゃない!!」  知っちゃこっちゃない。スルーしたが、腕を掴まれた。 「無視してんじゃないわよ!」 「頭をおかしくしたように喚く知らない人を見て見ぬふりしたいのは当然では」 「なんですって!? 推しだか何だか知らないけど! なんで無気力公爵令息があんなに変わっちゃったのよ!! どうでもいいから婚約破棄して、王子の婚約者になりなさい!! 軌道修正して!!」  そんなことで今更軌道修正するわけがなかろう……頭おかしい人だな、怖い。 「婚約破棄? ふざけるな。王子の婚約者になれって言うのも不敬罪だ」  ふわっと抱き上げてくれたのは、婚約者の公爵令息イサークだった。 (なろうにも、掲載)

処理中です...