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第一部 悪役令嬢未満、お兄様と結婚します!
王都の義賊 4
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「お嬢様もなかなかの悪女っぷりですね。この短い間に、二人の男性を手玉に取るなんて」
「人聞きの悪いことを言わないで‼」
ヴィルマに白い目を向けられながら、わたしは髪を結ってもらっていた。
もちろん、「ヴォルケヘア」なんかではありませんよ。普通の、清楚なお嬢様っぽいハーフアップです。
……それにしても、お兄様とアレクサンダー様と三人でオペラなんて、わたし、そのうち女の子たちから刺されるんじゃなかろうか。
もちろん、お兄様の言い分も一理あった。
というか、気づかなかったわたしもどうかしていたのだ。
世間一般的に、わたしとお兄様は婚約者と言うことになる。結婚が決まっているからだ。
その、婚約者持ちのわたしが、違う男性と二人っきりでオペラ鑑賞なんて、妙な噂が立ってもおかしくない状況である。だから、アレクサンダー様と二人っきりになるのはまずかったのだ。
……だからといって、お兄様参戦で三人はないでしょうよ。せめてヴィルマがよかったわ。
とは思うものの、貴族の常識として、同行する使用人は数にカウントされない。
のちのち変な噂が立った時に「いやいや侍女が一緒でしたけど!」というのは、言い訳にはならないのだ。
……やっぱり、女友達が必要だわ。こういう時に一緒に行ってくれる、優しくて可愛い女友達が!
リッチーはお友達だけど、あれは女友達とは違う。言動は怪しいが一応男性だし。
「お嬢様、できましたよ。……本当に、これでいいんですか? せっかく両手に花状態なんですから、もっと盛ってもいいと思いますよ」
「ヴィルマ、ホルガー侍医長に笑われたこと、もう忘れたの⁉」
「大丈夫ですよ。そのうち流行しますから、そうすれば笑われません」
「あんたのその理屈で行くと、流行するまで笑われるけど些細な事って言ってるように聞こえるけど⁉」
そもそも、「ヴォルケヘア」が流行る日が来るとは思えないので、わたしは笑われ損ということだ。
「お嬢様にしてはなかなか鋭いツッコミですね。でも、些細な事じゃないですか。ヴォルケヘアが流行った暁には、お嬢様は流行を作ったとして称賛されるんですよ」
ヴィルマ、あんたそれ、どこまで本気でどこまで冗談で言ってる?
真面目くさった顔で言ってるけど、絶対に自分が遊びたいだけよね?
じーっとヴィルマを見つめると、ついっと視線をそらされたので、やっぱりヴィルマは自分が遊びたいだけなのだと悟る。
「ヴィルマ、そのヴォルケヘアは、もう一生封印よ!」
「えー」
えー、じゃない!
あんたはわたしで遊びすぎなんです‼
支度が終わると、わたしはヴィルマと共に学園の正門前へ向かう。
お兄様が一緒なのでヴィルマはついてこないが、護衛兼侍女であるヴィルマは、正門まではついて来てくれるのだ。
……う!
正門に向かったわたしは、二人に合流する前にすでにひるみそうになった。
正門の左右の門柱に、お兄様とアレクサンダー様がそれぞれ寄り掛かっていらっしゃる。
そして、その周りには、当たり前のように大勢の女子生徒の姿が……。
……ああ、またこいつか! みたいな顔をされてるぅ!
わたしが近づいていくと、女子生徒たちの視線が一斉に突き刺さる。
お出かけのたびに睨まれるのは嫌なので、今度から現地集合にしようかな……。
女の子集団のことなんて、全然気にしていなさそうなお兄様とアレクサンダー様が、ちょっと恨めしいですよ。
「人聞きの悪いことを言わないで‼」
ヴィルマに白い目を向けられながら、わたしは髪を結ってもらっていた。
もちろん、「ヴォルケヘア」なんかではありませんよ。普通の、清楚なお嬢様っぽいハーフアップです。
……それにしても、お兄様とアレクサンダー様と三人でオペラなんて、わたし、そのうち女の子たちから刺されるんじゃなかろうか。
もちろん、お兄様の言い分も一理あった。
というか、気づかなかったわたしもどうかしていたのだ。
世間一般的に、わたしとお兄様は婚約者と言うことになる。結婚が決まっているからだ。
その、婚約者持ちのわたしが、違う男性と二人っきりでオペラ鑑賞なんて、妙な噂が立ってもおかしくない状況である。だから、アレクサンダー様と二人っきりになるのはまずかったのだ。
……だからといって、お兄様参戦で三人はないでしょうよ。せめてヴィルマがよかったわ。
とは思うものの、貴族の常識として、同行する使用人は数にカウントされない。
のちのち変な噂が立った時に「いやいや侍女が一緒でしたけど!」というのは、言い訳にはならないのだ。
……やっぱり、女友達が必要だわ。こういう時に一緒に行ってくれる、優しくて可愛い女友達が!
リッチーはお友達だけど、あれは女友達とは違う。言動は怪しいが一応男性だし。
「お嬢様、できましたよ。……本当に、これでいいんですか? せっかく両手に花状態なんですから、もっと盛ってもいいと思いますよ」
「ヴィルマ、ホルガー侍医長に笑われたこと、もう忘れたの⁉」
「大丈夫ですよ。そのうち流行しますから、そうすれば笑われません」
「あんたのその理屈で行くと、流行するまで笑われるけど些細な事って言ってるように聞こえるけど⁉」
そもそも、「ヴォルケヘア」が流行る日が来るとは思えないので、わたしは笑われ損ということだ。
「お嬢様にしてはなかなか鋭いツッコミですね。でも、些細な事じゃないですか。ヴォルケヘアが流行った暁には、お嬢様は流行を作ったとして称賛されるんですよ」
ヴィルマ、あんたそれ、どこまで本気でどこまで冗談で言ってる?
真面目くさった顔で言ってるけど、絶対に自分が遊びたいだけよね?
じーっとヴィルマを見つめると、ついっと視線をそらされたので、やっぱりヴィルマは自分が遊びたいだけなのだと悟る。
「ヴィルマ、そのヴォルケヘアは、もう一生封印よ!」
「えー」
えー、じゃない!
あんたはわたしで遊びすぎなんです‼
支度が終わると、わたしはヴィルマと共に学園の正門前へ向かう。
お兄様が一緒なのでヴィルマはついてこないが、護衛兼侍女であるヴィルマは、正門まではついて来てくれるのだ。
……う!
正門に向かったわたしは、二人に合流する前にすでにひるみそうになった。
正門の左右の門柱に、お兄様とアレクサンダー様がそれぞれ寄り掛かっていらっしゃる。
そして、その周りには、当たり前のように大勢の女子生徒の姿が……。
……ああ、またこいつか! みたいな顔をされてるぅ!
わたしが近づいていくと、女子生徒たちの視線が一斉に突き刺さる。
お出かけのたびに睨まれるのは嫌なので、今度から現地集合にしようかな……。
女の子集団のことなんて、全然気にしていなさそうなお兄様とアレクサンダー様が、ちょっと恨めしいですよ。
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