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猫王妃と離婚危機
問題勃発! 1
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「にゃ~」
(ヴェリア、魔法で水を氷にして~! 暑いよ~)
獣医の部屋に向かうと、ヴェリアがあきれ顔をした。
「あんた、猫のくせに氷とか食べたらお腹ピーになるんじゃないかい?」
「に~」
(え~)
それはそれで嫌だ。
「ほら、冷たい水で我慢しておきな」
ヴェリアが飲み皿に水を入れて、ローテーブルの上に置いた。
ぴょんとテーブルの上に飛び乗って、水をちびちび飲んでいると、ヴェリアがソファに腰を下ろす。
「それはそうと、あんた、まだ人間に戻らないんだね」
「にゃあっ」
(戻れるなら戻ってるわよ! 戻れないんだもんっ)
「そりゃあんたの心の問題だからあたしに言われても知らないよ」
確かにそのとおりである。
猫になりたいと願ったのはフィリエルで、そして戻れないのもフィリエルの問題だ。
「ま、王様とはうまくやってるみたいだから、焦らなくてもいいんじゃないかい?」
(ペットとして愛でられている感がかなりするけどね)
まあ、使用人たちにも受け入れられているし、焦って戻る必要もない気がする。
騎士団長の口から、フィリエルが身を挺してリオンを守ろうとした話が使用人たちの間に広まってしまって、今では「勇敢な猫王妃」なんて陰で言われている。「お飾り王妃」よりはましだが、「猫王妃」が定着しそうで怖いが、人間だったころより使用人たちと打ち解けられたような気がするのも事実だ。
(みんな、お菓子くれるし)
デブ猫にはなりたくないので食べすぎには注意をして、適度に運動(主に廊下を走り回る)している。
王妃が廊下を走れば普通は驚愕されるものだが、姿が猫なので誰も咎めない。むしろ「お散歩ですか」と言われるくらいだし、見張りの兵士が暇を持て余してボールを投げてくれたりもする。
でも、このまま猫生活を満喫していたら、それこそ本当に一生元に戻れないかもしれないという危機感も覚えるわけだ。
(だって、猫って思ってた以上に快適なんだもん……)
二週間に一度訪れるお風呂以外に、特に不満はない。
リオンも可愛がってくれるし、もういっそ猫でいいじゃない? と思うときが……たまにある。というか結構ある。三日に一度くらい思っている。
(ないとは思わないけどさ、人に戻った瞬間に距離を取られたりしたら、ショックで立ち直れなくなりそうだし)
姿は猫だが、リオンはきちんと「フィリエル」として扱ってくれているし(たぶん)、猫だからかたくさん抱っこしてくれるし、むしろぺったりくっついていられて幸せだ。猫万歳。
「あんた、あんまり猫生活に満足していると、本当に戻れなくなるかもね」
「にゃあ‼」
心を読んだのか、ヴェリアが半眼で脅してきた。
ショックを受けて固まったフィリエルに、クツクツと喉を鳴らして笑って、「それはそうと」とふと真顔になる。
「そういえばあんた、前々から実家に子供はまだかーってせっつかれてなかったっけ? 頻繁に連絡が来てつらいって聞いたことがあるけど、もう半年以上猫の姿だけど、大丈夫なんだろうね。手紙とか……」
「みゃあああああああああッ‼」
フィリエルは目を剥いて絶叫した。
(すっかり忘れてたああああ‼)
両前足で、どうしようどうしようとテーブルを叩くフィリエルに、ヴェリアが額を押さえる。
「さすがに実家には……猫になったなんて言えないよねえ」
まったくその通りである。
(ヴェリア、魔法で水を氷にして~! 暑いよ~)
獣医の部屋に向かうと、ヴェリアがあきれ顔をした。
「あんた、猫のくせに氷とか食べたらお腹ピーになるんじゃないかい?」
「に~」
(え~)
それはそれで嫌だ。
「ほら、冷たい水で我慢しておきな」
ヴェリアが飲み皿に水を入れて、ローテーブルの上に置いた。
ぴょんとテーブルの上に飛び乗って、水をちびちび飲んでいると、ヴェリアがソファに腰を下ろす。
「それはそうと、あんた、まだ人間に戻らないんだね」
「にゃあっ」
(戻れるなら戻ってるわよ! 戻れないんだもんっ)
「そりゃあんたの心の問題だからあたしに言われても知らないよ」
確かにそのとおりである。
猫になりたいと願ったのはフィリエルで、そして戻れないのもフィリエルの問題だ。
「ま、王様とはうまくやってるみたいだから、焦らなくてもいいんじゃないかい?」
(ペットとして愛でられている感がかなりするけどね)
まあ、使用人たちにも受け入れられているし、焦って戻る必要もない気がする。
騎士団長の口から、フィリエルが身を挺してリオンを守ろうとした話が使用人たちの間に広まってしまって、今では「勇敢な猫王妃」なんて陰で言われている。「お飾り王妃」よりはましだが、「猫王妃」が定着しそうで怖いが、人間だったころより使用人たちと打ち解けられたような気がするのも事実だ。
(みんな、お菓子くれるし)
デブ猫にはなりたくないので食べすぎには注意をして、適度に運動(主に廊下を走り回る)している。
王妃が廊下を走れば普通は驚愕されるものだが、姿が猫なので誰も咎めない。むしろ「お散歩ですか」と言われるくらいだし、見張りの兵士が暇を持て余してボールを投げてくれたりもする。
でも、このまま猫生活を満喫していたら、それこそ本当に一生元に戻れないかもしれないという危機感も覚えるわけだ。
(だって、猫って思ってた以上に快適なんだもん……)
二週間に一度訪れるお風呂以外に、特に不満はない。
リオンも可愛がってくれるし、もういっそ猫でいいじゃない? と思うときが……たまにある。というか結構ある。三日に一度くらい思っている。
(ないとは思わないけどさ、人に戻った瞬間に距離を取られたりしたら、ショックで立ち直れなくなりそうだし)
姿は猫だが、リオンはきちんと「フィリエル」として扱ってくれているし(たぶん)、猫だからかたくさん抱っこしてくれるし、むしろぺったりくっついていられて幸せだ。猫万歳。
「あんた、あんまり猫生活に満足していると、本当に戻れなくなるかもね」
「にゃあ‼」
心を読んだのか、ヴェリアが半眼で脅してきた。
ショックを受けて固まったフィリエルに、クツクツと喉を鳴らして笑って、「それはそうと」とふと真顔になる。
「そういえばあんた、前々から実家に子供はまだかーってせっつかれてなかったっけ? 頻繁に連絡が来てつらいって聞いたことがあるけど、もう半年以上猫の姿だけど、大丈夫なんだろうね。手紙とか……」
「みゃあああああああああッ‼」
フィリエルは目を剥いて絶叫した。
(すっかり忘れてたああああ‼)
両前足で、どうしようどうしようとテーブルを叩くフィリエルに、ヴェリアが額を押さえる。
「さすがに実家には……猫になったなんて言えないよねえ」
まったくその通りである。
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