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嫉妬という感情 3

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 ――なあ、オーレリア、俺が他の女と結婚すると思って、嫌な気持ちになったんだろ?

 ラルフにそう言われたとき、オーレリアの中に、何かがすとんと落ちてきた。

 確かに嫌だった。ラルフがコリーンと結婚するのを見たくないと思った。

 帰ってきたラルフの顔を見たら、その嫌な未来を想像したら、どうしようもなく泣きたくなって、一人になった瞬間に涙があふれてきたのだ。

 泣きながら、どうして自分が泣いているのか、よくわからなかった。

 ラルフはオーレリアを裏切らない。コリーンと結婚なんてしない。そんなこと、オーレリアが一番よくわかっている。

 それなのにどうして泣いているのだろうかと、オーレリアは自分の感情を持て余した。

 そんな時ラルフが部屋に訪ねてきて、急いで涙を拭ったけれど気づかれて、よくわからないけど抱きしめられて、そしてそんなことを言われた瞬間、ああそうだったのかと、馬鹿馬鹿しいほどあっさり、オーレリアの中に答えが降って来たのだ。

 相手がコリーンだから嫌なのじゃない。

 ラルフを誰にもとられたくないのだ。

 取られないとわかっていても、そんな未来を示唆されることすら嫌で。

 ラルフは大切な家族で兄のような存在だと、よく言ったものだと思った。

 違うのだ。オーレリアは、ラルフをほかの女性に取られたくない。ずっとそばにいてほしい。この感情は、兄に対するものとは明らかに違う。

 もともとギルバートに求婚するつもりだった。だったら彼から求婚された時にこれ幸いと受ければよかったのに、それができなかったのはラルフが求婚してきたから。

 その瞬間に、たぶん、オーレリアは自分が知らないところで、心の底に眠っていたラルフへの気持ちに気が付いたのだと思う。

 それなのにいつまでもラルフは家族だ、兄だと自分に言い聞かせていた。ほかの女性に取られたくなんてないくせに、そんなことにも気づかずに。

(ラルフがいい)

 この先ずっと一緒に生きていく人は、ラルフがいい。隣にいる人は、彼以外想像できないから。

 一日待ってほしい、とラルフに頼んだ。

 答えは出ていたけれど、その前にギルバートに話をしなくては。

 たぶん、ギルバートはオーレリアの気持ちに気づいていたのだと思う。彼が本気でオーレリアに求婚するならば、父であるサンプソン公爵に通してしまえばそれで終わっただけの話なのだ。領主命令なら、オーレリアに拒否権はないから。

 オーレリアの心を最大限に尊重してくれたギルバートには誠実に向き合わなくては。

 ラルフに答えを返す前に、彼にきちんと自分の気持ちを伝えなくてはならない。

 しばらくの間オーレリアを抱きしめたままだったラルフが部屋から去ると、オーレリアは隣の寝室へ向かった。

 ぽすりとベッドに横になると、大きなウサギのぬいぐるみが隣にいる。

 俺だと思ってほしいと言ってラルフから贈られたウサギのぬいぐるみ。

 オーレリアはぬいぐるみをぎゅっと抱きしめて、目を閉じた。
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