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目に見えない愛

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 アスヴィルが「愛している」と遠くから叫びはじめて、半年がすぎた。

 ミリアムはこの半年、アスヴィルの声を無視し続けていた。

 聞こえていても聞こえていないふりをして、アスヴィルの姿は極力見ずに、ただ静かに毎日をすごすことに努めた。

 アスヴィルから贈られるお菓子にも手をつけなかった。

 とにかく、アスヴィルという存在を自分の中から追い出そうとしたのだ。

「ミリアム様、元気がございませんね」

 クッションを抱きしめてソファに腰を下ろし、ぼーっとしていると、メイドのリザが心配そうに声をかけてきた。

「気のせいよ」

「そうですか? ……今日はジャスミンティーを煎れてみたんですよ」

 リザが務めて明るい声でそう言うと、ミリアムはうっすらと微笑んでティーカップを受け取った。

「ありがと」

「新しい恋愛小説も買ってきたんです」

「うん……」

 ミリアムはリザから本を受け取ったが、開くことなくテーブルの上においた。

 大好きな恋愛小説が、どうしてだか、最近は読むことができなくなったのだ。

 妙なことに、恋愛小説を開くと、ものの数ページで目が潤んできて、先を読むことができないのである。

 ミリアムはジャスミンティーに口をつけながら、ちらりと部屋の隅に視線をやった。そこにはつい先日まで箱が山積みになっていた。

 アスヴィルからの手紙が入っていた箱だ。

 ミリアムはその箱が目に入らないよう、クローゼットの中に押し込んだのだ。

 以前と変わらず届けられる手紙はもう、読んでいない。

 アスヴィルの愛なんて、必要ない――
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