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王都へゴー 1
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国王陛下から「来い」と言われたら行かねばならない。
王様はわたしに会いたいそうなので、わたしが行くことも決定事項だ。
リヒャルト様とわたしは、慌ただしく旅支度を整えると、三日後、王都へ向けて出発した。
王都までは街道が整備されているので馬車の揺れも少なく快適ではあるけれど、北に向けてしばらく進んだところにある高い山の近くは雪崩が起きることがあるため大きく迂回して通ることになる。
冬もだんだん終わりに差し掛かって来て、少しずつ気温が上昇しているため、雪崩が起きやすくなる時期らしい。
二週間ほどかけて王都に到着すると、馬車はリヒャルト様のタウンハウスへ向かった。
お城の近くに、大きなタウンハウスがあるそうだ。ベティーナさんが教えてくれた。さすが公爵様。
王都に来たのがはじめてのわたしは、馬車の窓に張り付いて外を眺めている。
……人が多い! そして、道が広いしなんか綺麗!
馬車は大きな道を進んでいるのだが、道の両脇には大勢の人が歩いていた。みんなおしゃれな格好をしている。
王都には貴族以外に平民ももちろん住んでいるけど、土地が高いから、平民の中でも富豪が多いって聞いたことがあるけど、本当だったんだ!
王都には国中からたくさんのものが集まっていて、人の行き来も盛んだ。
王都に住んでいる人以外にも、買い付けに来たり、逆に卸に来ている人もいるのだろう。
……美味しいもの、あるかなあ?
南門の近くには市があるのだとリヒャルト様が教えてくれた。
市というのは、たくさんのお店が並ぶところらしい。
固定のお店を構えるのではなく、地代を払って、その場にテントを張ってお店を並べているところだそうで、商人以外でも店を持つことも可能だそうだ。
例えば農家さんが野菜を売っていたり、使わなくなった不用品を売っていたりする店もあるらしい。
ただ、治安がいいとは言えないから、わたしは行ったらだめだそうだ。残念。
王都は扇状の形をしていて、王都の外にはぐるっと濠があって、水が流れている。近くの川から引き入れて、また川に流れていくそうだ。その水は王都の中にも引き入れてあって、生活用水として利用されているという。
建物はレンガ造りのものが多い。
馬車が北へ進むにつれて、人通りもまばらになって来た。
このあたりは貴族街のため、道を歩く人は、南の当たりと比べると極端に少なくなるという。
ただ、馬車移動が多いから、道はとても広く作られているんだって。
ほかにも「一方通行」とか「馬車進入禁止」とか、規制されている道もあるのだとか。面白いね。
「あ! あれがお城ですか?」
馬車が進んでいくと、建物と建物の間に、とっても大きなお城が見えた。
どの建物よりも高いため、先端は空に突き出している。
「ああ。私の邸は城より東のあたりにある。もうすぐ着くぞ」
リヒャルト様がそう言って数分後に、馬車が大きな門の前で停車した。
門番が門を開くと、馬車はそのまま敷地の中へ入っていく。
……ほわあああ! 広い!
領地のお邸ほどではないが、ここのお庭もとっても広かった。
ただ、領地と違って木や花はほとんど植えられていなくて、冬枯れの芝生が広がっている。
芝生と芝生の間の石畳の道を、馬車がかっぽかっぽと進んでいくと、馬車の窓からレンガの赤茶色ではなく白い壁のお邸が見えた。
お邸の玄関の前で馬車が止まると、中から六十をいくらかすぎたくらいの姿勢のいい男性と、複数人のメイドさんが出てくる。
男性は王都のお邸を管理を任せている家令のゲルルフさんだそうだ。
「お帰りなさいませ、リヒャルト様。それからようこそおいでくださいました、スカーレット様」
事前に連絡を入れていたため、ゲルルフさんはわたしの名前も知っているようだ。
リヒャルト様に手を貸してもらって馬車から降りたわたしを、ゲルルフさんはにこりと微笑んで歓迎してくれる。
「リヒャルト様がお戻りだと聞いて、先日からパーティーの招待状が届きはじめておりますが、いかがされますか?」
玄関をくぐりながらゲルルフさんが言う。
リヒャルト様は嫌そうな顔をして「全部断ってくれ」と即答した。
ゲルルフさんはリヒャルト様がそう言うのがわかっていたようだ。笑顔のまま「かしこまりました」と頷く。
「城へは三日後に行くが、急いでスカーレットのドレスを整えたい。仕立て屋を呼んでおいてくれ」
「三日しかありませんので、既製品を手直しする形になると思われますが、そのように連絡しておいて大丈夫ですか?」
「ああ。今年の流行を取り入れつつ、あまりコルセットで締め付けなくていいものを選んでくれと伝えてくれ。それからスカーレット。すまないが、城にはいつもの普段着は着ていかれない。我慢してくれ」
つまり、コルセットで締めるドレスを着なくちゃいけないんですね。
憂鬱だけど仕方ない。
……まあ、お城にはご飯を食べに行くんじゃないもんね。ちょっと我慢していたらすぐ終わるよね?
リヒャルト様はわたしの燃費の悪さを熟知しているので、お腹がすいて倒れる前に対処してくれると思う。だから大丈夫だ。
「わかりました」
「すまないな。荷物を置いたらお茶にしよう。ゲルルフ、事前に連絡を入れていた通り、スカーレットはよく食べる。たくさんお菓子を用意してやってくれ」
「すでに準備はできておりますよ」
さすがリヒャルト様のおうちの家令! アルムさんもそうだけど、ゲルルフさんもできる大人の匂いがする!
お菓子がもらえると聞いて上機嫌になったわたしは、ベティーナさんと共に、ここで使うお部屋へ向かった。
……お部屋は、ここでもリヒャルト様のお部屋のお隣だそうですよ!
王様はわたしに会いたいそうなので、わたしが行くことも決定事項だ。
リヒャルト様とわたしは、慌ただしく旅支度を整えると、三日後、王都へ向けて出発した。
王都までは街道が整備されているので馬車の揺れも少なく快適ではあるけれど、北に向けてしばらく進んだところにある高い山の近くは雪崩が起きることがあるため大きく迂回して通ることになる。
冬もだんだん終わりに差し掛かって来て、少しずつ気温が上昇しているため、雪崩が起きやすくなる時期らしい。
二週間ほどかけて王都に到着すると、馬車はリヒャルト様のタウンハウスへ向かった。
お城の近くに、大きなタウンハウスがあるそうだ。ベティーナさんが教えてくれた。さすが公爵様。
王都に来たのがはじめてのわたしは、馬車の窓に張り付いて外を眺めている。
……人が多い! そして、道が広いしなんか綺麗!
馬車は大きな道を進んでいるのだが、道の両脇には大勢の人が歩いていた。みんなおしゃれな格好をしている。
王都には貴族以外に平民ももちろん住んでいるけど、土地が高いから、平民の中でも富豪が多いって聞いたことがあるけど、本当だったんだ!
王都には国中からたくさんのものが集まっていて、人の行き来も盛んだ。
王都に住んでいる人以外にも、買い付けに来たり、逆に卸に来ている人もいるのだろう。
……美味しいもの、あるかなあ?
南門の近くには市があるのだとリヒャルト様が教えてくれた。
市というのは、たくさんのお店が並ぶところらしい。
固定のお店を構えるのではなく、地代を払って、その場にテントを張ってお店を並べているところだそうで、商人以外でも店を持つことも可能だそうだ。
例えば農家さんが野菜を売っていたり、使わなくなった不用品を売っていたりする店もあるらしい。
ただ、治安がいいとは言えないから、わたしは行ったらだめだそうだ。残念。
王都は扇状の形をしていて、王都の外にはぐるっと濠があって、水が流れている。近くの川から引き入れて、また川に流れていくそうだ。その水は王都の中にも引き入れてあって、生活用水として利用されているという。
建物はレンガ造りのものが多い。
馬車が北へ進むにつれて、人通りもまばらになって来た。
このあたりは貴族街のため、道を歩く人は、南の当たりと比べると極端に少なくなるという。
ただ、馬車移動が多いから、道はとても広く作られているんだって。
ほかにも「一方通行」とか「馬車進入禁止」とか、規制されている道もあるのだとか。面白いね。
「あ! あれがお城ですか?」
馬車が進んでいくと、建物と建物の間に、とっても大きなお城が見えた。
どの建物よりも高いため、先端は空に突き出している。
「ああ。私の邸は城より東のあたりにある。もうすぐ着くぞ」
リヒャルト様がそう言って数分後に、馬車が大きな門の前で停車した。
門番が門を開くと、馬車はそのまま敷地の中へ入っていく。
……ほわあああ! 広い!
領地のお邸ほどではないが、ここのお庭もとっても広かった。
ただ、領地と違って木や花はほとんど植えられていなくて、冬枯れの芝生が広がっている。
芝生と芝生の間の石畳の道を、馬車がかっぽかっぽと進んでいくと、馬車の窓からレンガの赤茶色ではなく白い壁のお邸が見えた。
お邸の玄関の前で馬車が止まると、中から六十をいくらかすぎたくらいの姿勢のいい男性と、複数人のメイドさんが出てくる。
男性は王都のお邸を管理を任せている家令のゲルルフさんだそうだ。
「お帰りなさいませ、リヒャルト様。それからようこそおいでくださいました、スカーレット様」
事前に連絡を入れていたため、ゲルルフさんはわたしの名前も知っているようだ。
リヒャルト様に手を貸してもらって馬車から降りたわたしを、ゲルルフさんはにこりと微笑んで歓迎してくれる。
「リヒャルト様がお戻りだと聞いて、先日からパーティーの招待状が届きはじめておりますが、いかがされますか?」
玄関をくぐりながらゲルルフさんが言う。
リヒャルト様は嫌そうな顔をして「全部断ってくれ」と即答した。
ゲルルフさんはリヒャルト様がそう言うのがわかっていたようだ。笑顔のまま「かしこまりました」と頷く。
「城へは三日後に行くが、急いでスカーレットのドレスを整えたい。仕立て屋を呼んでおいてくれ」
「三日しかありませんので、既製品を手直しする形になると思われますが、そのように連絡しておいて大丈夫ですか?」
「ああ。今年の流行を取り入れつつ、あまりコルセットで締め付けなくていいものを選んでくれと伝えてくれ。それからスカーレット。すまないが、城にはいつもの普段着は着ていかれない。我慢してくれ」
つまり、コルセットで締めるドレスを着なくちゃいけないんですね。
憂鬱だけど仕方ない。
……まあ、お城にはご飯を食べに行くんじゃないもんね。ちょっと我慢していたらすぐ終わるよね?
リヒャルト様はわたしの燃費の悪さを熟知しているので、お腹がすいて倒れる前に対処してくれると思う。だから大丈夫だ。
「わかりました」
「すまないな。荷物を置いたらお茶にしよう。ゲルルフ、事前に連絡を入れていた通り、スカーレットはよく食べる。たくさんお菓子を用意してやってくれ」
「すでに準備はできておりますよ」
さすがリヒャルト様のおうちの家令! アルムさんもそうだけど、ゲルルフさんもできる大人の匂いがする!
お菓子がもらえると聞いて上機嫌になったわたしは、ベティーナさんと共に、ここで使うお部屋へ向かった。
……お部屋は、ここでもリヒャルト様のお部屋のお隣だそうですよ!
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